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2024年11月06日 成功事例
【2回目】オーバーステイの前歴がある中国人の「経営ビザ」:在留資格認定証明書交付申請
本事例は、中国人経営者A氏が過去のオーバーステイ経験その他の問題があるため、「経営ビザ」の申請を二回行ったケースです。今回、二度目の申請となった再申請事例を解説します。
第1. 「経営・管理」ビザが一度不許可になったが次の申請で許可を得るための再申請方法の事例
今回ご紹介するのは、中国人申請者が、かつてのオーバーステイの過去を経て、「経営・管理」ビザの再申請に成功した事例です。本事例は、初回の申請が不許可となった後、過去のオーバーステイやその他の申請における経歴不一致などの問題を払拭し、最終的にビザを取得するに至ったケースです。
1. 申請の背景
申請者は過去に日本での留学経験がありましたが、更新不許可後にオーバーステイとなり、自発的に出頭して退去強制措置を受けた経験があります。その後、短期滞在で日本に再入国し、「退去歴」などに関して誤った記載をしたことが問題となり、初回の「経営・管理」ビザ申請は不許可となりました。
不許可の理由は以下の通りです。
A.申請者の経歴に疑義があること
1.留学時の学歴未申告
2.退去強制歴の申告漏れ
3.短期滞在時にEDカードへの「退去歴等」の誤った記載
B.事業所の独立性に関する証明が不十分であること
所属機関の事業所の使用権原や独立性に関する証拠が不足していた
これらの理由に基づき、初回申請は不許可となりましたが、我々は一丸となり、再申請に向けて徹底的に不許可理由を払拭するための準備を行いました。
2. 再申請に向けた対策
再申請の際には、以下のポイントに重点を置いて資料を整えました。
申請者の経歴に関する疑義の払拭
申請者は、過去のオーバーステイやEDカードへの誤記載について、真摯に反省する旨の反省文を提出しました。また、履歴書の訂正を行い、正確な職歴を申告しました。この過程では、自らの過去を正直に開示し、今後は適切な行動をとる旨の誓約を行ったことが評価されました。
事業所の独立性と使用権原の証明
所属機関の事業所に関する証拠が不足しているとの指摘を受け、新たに以下の証拠を提出しました。
建物賃貸借契約書の写し
事業所の独立性を示す10階部分の見取り図
事務所の外観、内部、建物の案内板表示の写真
貸主が所有する建物と土地に関する登記事項証明書
これらの資料により、事業所が独立した空間であることや、正当な使用権原に基づいて利用していることが明確になりました。
経営活動の「安定性・継続性」の証明
申請者は、所属機関との継続的な取引を証明するため、取引先との取引データや、営業証の写し、AIRインボイスなどを提出しました。また、所属機関の代表取締役である菅國典氏が高齢であり、経営の世代交代が急務であることを強調し、申請者が経営を引き継ぐ最適任者であることを立証しました。
3. 事業計画書の提出
再申請の際には、前回の申請書類を転用しつつ、新たに2022年7月から2023年6月までの損益計算を含む事業計画書を提出しました。今回の計画書では、申請者が所属機関の中国との貿易をさらに拡大し、安定的な事業発展に寄与することが具体的に示しました。
4. 人道的理由の補足
加えて、申請者の親がある難病を抱えており、日本で治療を受けていることも考慮されるよう、母親の介助者として申請者が日本に滞在する必要があることも、再申請の際の人道的な理由として強調しました。
5. 結果
以上の対策により、申請者は再申請に成功し、「経営・管理」ビザを取得しました。本事例は、初回申請が不許可となった場合でも、適切な対策を講じ、必要な資料を整えることで再申請が成功することを示しています。
結果と考察
今回の事例では、過去のオーバーステイや申請時の誤りを払拭し、さらに有利になる事実を説明し、それらの適切な証拠を可能な限り提出したことで、再申請に成功しました。
なお、就労ビザや経営ビザでは本来、人道的理由を強く立証することは求められません。しかし、オーバーステイがあった場合、有利な事実を地道に数多く立証する姿勢が求められます。
このように、ビザ申請においては過去の経歴や不許可理由に対する誠実な対応が重要です。専門家の助言を受けながら、確実な準備を行うことが、申請成功の鍵となります。
第2. 本件再申請における貿易事業の「経営ビザ」立証資料と趣旨
立証資料の解説と立証趣旨
今回の「経営・管理」ビザ再申請において、申請者が提出した立証資料は、不許可理由を払拭し、申請者の適格性や事業の安定性を立証するために非常に重要な役割を果たしました。以下に、各資料の詳細と、それがどのように再申請の成功に寄与したかについて説明します。
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1. 申請書およびその他前回から転用ができないものや変更すべき基本資料
最新の状況や、公文書などは前回の申請資料を転用できないことが在留審査要領で規定されております。そのため、改めて提出が必要です。
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2. 申請者の活動内容を明らかにする資料
(1) 臨時株主総会議事録の写し:取締役選任決議
(2) 臨時株主総会議事録の写し:役員報酬決議
(3) 取締役決定書の写し:代表取締役
(4) 就任承諾書の写し:取締役
(5) 就任承諾書の写し:代表取締役
立証趣旨: これらの書類は、申請者が所属機関(日本の法人)の取締役、そして代表取締役に正式に選任されたことを証明します。
再申請においては、申請者の事業活動が「経営・管理」の在留資格に該当する活動に「安定性・継続性」があることが改めて重要であり、申請者が会社の経営を実際に行う蓋然性がここで証明されています。
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3. 事業内容を明らかにする資料
(1) 所属機関の会社概要、事業内容
(2) 製品案内等のホームページ資料
立証趣旨: 事業内容も改めてアップデートし補強しました。これらの資料により、申請者が関与する事業の実体性、安定性、継続性が立証されました。特に履歴事項全部証明書は、会社が正式に設立され、法的に登録された存在であることを証明します。また、会社概要や製品案内は、所属機関が行っている具体的な事業内容(貿易・製造・販売の製品や説明)を説明するものです。これにより、申請者の事業が「経営・管理」の在留資格に適したものとされました。
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4. 事務所用施設の存在を明らかにする資料
(1) 建物賃貸借契約書の写し
(2) 貸主の登記事項証明書(土地建物)
(3) 本社当該フロア部分見取り図
(4) 事務所の写真
立証趣旨: 事務所の独立性と使用権原を証明するための資料です。前回の申請で指摘された「事業所の独立性の証明が不十分」という問題を払拭するため、追加で物理的証拠(賃貸契約書、見取り図、写真、登記事項証明書)を提出しました。
賃貸借契約書:事務所が独立して賃貸されていることを証明。
登記事項証明書:貸主が適法な建物所有者であり、使用権原資料とともに証明。
見取り図と写真:物理的な独立性を視覚的に証明。
これにより、事業所の実態と正当性が明確に示されました。
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5. 事業計画書
損益計算書
立証趣旨: 事業計画書には、申請者が代表取締役として実行する予定の事業活動と、その見込み損益が詳細に記載されています。前回申請時には、古い事業計画を提出していたため、今回は新しい12ヶ月の損益計算書を含む計画を提出しました。この資料は、事業が安定して運営され、今後も継続的な利益が見込めることを証明する重要な立証資料です。
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6. 職員の給与に関する証明
カテゴリー3:前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(電子申告または受付印のあるもの)
立証趣旨: 法定調書合計表により、所属機関が従業員を雇用し、適切に給与を支払っていることが確認されました。これは、企業の運営が実体を持ち、経営が安定していることを示すものです。
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7. 所属機関と申請者の事業との取引に関する資料
A. 営業証の写し
B. 株式会社東京交易と「広州荔湾区凱来盛商行」との取引データ
C. AIR invoice(2021-05-29、2021-07-03)
D. 仕向送金申込書兼告知書及び仕向送金決済明細
立証趣旨: 申請者の中国における事業と、所属機関との継続的な取引関係を証明するための資料です。これらの資料は、実際にビジネス取引が行われていること、また申請者が中国から日本への重要な仕入れの役割を担っていることを示しています。この点で、申請者が日本国内の事業活動を安定して支える存在であることが立証されました。
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8. 反省文および嘆願書
(1) 反省文
(2) 嘆願書(4通)
立証趣旨: 反省文は、過去のオーバーステイやEDカードの記載ミスについて、申請者が真摯に反省し、今後は誠実に行動することを誓約したものです。また、嘆願書は、申請者のビジネスパートナーや取引先から提出されたもので、申請者の人柄や仕事に対する誠実さを証明しています。これらの書類は、過去の過ちがあっても申請者が十分に反省しており、再び同じ過ちを繰り返すことがないことを示すために重要な証拠となりました。
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9. その他の資料
(1) 申請理由書
(2) 履歴書(訂正したもの)
(3) 前回の不交付通知書の写し
立証趣旨: 前回の不交付理由を払拭するために、申請理由書と訂正した履歴書が提出されました。これにより、申請者の経歴が正確に申告され、過去の不一致や隠蔽が改善されたことが示されました。また、不交付通知書の写しを添付することで、再申請においては前回の不交付理由に対処する姿勢が強調されました。
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総括
これらの立証資料は、申請者の「経営・管理」ビザ取得に必要な要件を十分に満たし、申請者が事業を安定して運営できる適任者であることを証明しました。また、過去のオーバーステイや記載ミスといった不許可理由に真摯に対応し、誠実さと今後の適切な行動を誓約する姿勢が評価されました。
この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザ専門。手続代理及びコンプライアンス顧問として、登録支援機関のほか弁護士等の専門家向け顧問の実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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