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コラム
2024年11月25日 コラム
転職前後の「技術・人文知識・国際業務」入管手続のすべて:就労資格証明と在留申請、企業の届出等
Q. 転職をした外国人を受け入れる場合に必要な手続きは何でしょうか。外国人と企業が行うものをそれぞれ教えてください。在留資格は、いわゆる就労ビザの中で「技術・人文知識・国際業務」です。
A. 転職の前後で行う手続として、在留申請と届出があります。以下、詳しく説明します。
内容
手続がわかりにくい外国人雇用の課題とリスク
外国人雇用をしている企業にとっては、在留資格ごとに手続が異なることもあり、どの手続を行うかがわからず、義務違反が生じていることがあります。そうすると外国人も不許可になることや長い在留期間を許可されずずっと1年許可のままなど不利益が生じます。
この点、外国人が転職し受け入れる事例で、そのままの在留資格で採用を進めることができるか、または更新許可や変更許可で業務変更が必要かどうかを判断することが多いと存じます。
そのようなことを防ぐためには手続のポイントを抑え、何かあれば行政書士に相談し代行させることも一つのコンプライアンス対応です。
しかしまずは自社で行える範囲を決めたい企業のためにも、判断ポイントを以下に説明いたします。
転職による「技術・人文知識・国際業務」の手続
通常、以下の手続を選んで実行します。
1. 外国人:以下のいずれかの在留申請
就労資格証明書交付申請+在留期間更新許可申請
就労資格証明書交付申請
在留資格変更許可申請
2. 外国人:届出「所属機関に関する届出」
3. 転職元及び転職先企業:所属機関による「中長期在留者の受入れに関する届出」
就労資格証明書交付申請のメリット
外国人が、その在留資格で活動できる業務かどうかが明らかでない場合、更新許可申請まで、不法就労になる可能性があります。そうすると企業の損害も大きくなります。
それを避けるためにいわば「入管によるお墨付き」を受けるものです。したがって、特に転職の場合は有益です。
申請書の他に、「新たな勤務先や活動内容の詳細がわかる書類」が転職前後に必要となります。これは行政書士ごとに大きく成果物に差が出ます。その業務内容の範囲を適法かつ適切に説明できるかどうかで、それが不可とされるかどうかが変わるからです。わかりにくい専門性については、立証資料を十分に提出し説明を尽くすことが重要です。
転職の手続をどのタイミングで行うか
申請は、稼働する前、つまり事前です。さらに審査期間として、1,2カ月も加味します。
ただし、就労資格証明書交付申請はいつでも可能です。しかし、転職の前に提出できることが理想です。
転職に関する「所属機関に関する届出」
一方で届出は、稼働した後、つまり事後です。
外国人が行う「所属機関に関する届出」は転職後14日以内に入管に提出する必要があります。これは必須です。
なお、2024年現時点では、在留資格変更許可申請を許可された場合は届出をせずとも許容される運用がされております。
企業が行う「中長期在留者の受入れに関する届出」
所属機関による届出、つまり企業が行う「中長期在留者の受入れに関する届出」も事後であり同じです。こちらは努力義務ですが、適正な企業であるかどうかの入管からの評価に関わります。ただし除外があります。これは外国人雇用状況の届出をハローワークに出す場合や、これをしたとみなされる雇用保険の届出を行う場合は不要とされます。
なお「留学」の在留資格を受け入れている企業の場合、除外されず、必要となります。
外国人雇用状況の届出 |
所属機関による届出が、雇用保険被保険者資格取得届でみなされる場合 |
参考:厚生労働省HP、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html
転職先で行う申請の類型とそのタイミング
どの手続を行うかはケースによって異なります。主に活動内容と在留期限までの余裕期間を先に検討します。
活動内容によって、すぐに在留期間更新許可申請を行う場合
まず在留資格該当性と呼ばれる活動内容が「技術・人文知識・国際業務」の内容かどうかで判断します。これは「専門性」、「安定性・継続性」の要素で判断します。「安定性・継続性」とは主に専門性のある業務の量を指します。
結果、以下のいずれかの業務状況だったとします。
□専門性が乏しい場合
□専門性がある業務量が少ない場合
□経営・管理業務がある場合
以上の状況は難解事由となります。難解事案であれば、実態から適法にプランニングすることが必要で、併せてそれを助けるために行政書士からも業務提案が必要です。
行政書士にとって、例えば、顧問先の企業であれば業務内容を多く把握しやすいため、追加業務として専門性を増やすことや、経営・管理の業務は「経営・管理」に該当しないかどうか組織図を用いながら職務の役割分担を説明し立証します。
業務内容が「技術・人文知識・国際業務」と異なる場合、そもそも最初から在留資格変更許可申請が必要です。上記の場合、「特定活動」や「経営・管理」などを検討します。
活動内容の判断が難しい場合で在留期限まで余裕がある場合
活動内容の明確な判断もできない場合、または技術・人文知識・国際業務に該当しそうだが確信を持てない場合も、就労資格証明書交付申請を利用できます。
また、就労資格証明書交付申請は申請方法を誤れば、認められる業務が限定されますが、専門の行政書士などが事例と理論に基づき、認められる業務の見通しがついていれば非常に効果的です。入管から交付される証明書で業務内容が適切にかつ限定されにくい文言で表現され、現場の取引先にも使える対外的な公文書となります。
在留期限による手続類型の判断
次に、転職先でどの手続を行うかは「技術・人文知識・国際業務」の在留期限が近いかどうかで手続き類型を判断します。
在留期限が4か月以内に迫っている場合
在留期限が4か月より近い場合は、直接、在留期間更新許可申請を検討します。この基準は期限3か月前から更新許可申請ができることが理由であり、またそれをしないと不法残留になってしまうからです。
しかし、理想的ではありません。在留期間更新許可申請で不許可になってしまうと、就労ができなくなるからです。最悪、在留もできなくなります。
不許可時には「出国準備」のための「特定活動」に変更申出を勧められることが救いですが、それでもその間は就労できず、その後に不許可になった場合、日本にもいられなくなってしまいます。したがって、更新許可申請は在留期限の前に行う方が安全です。
転職や配置転換などの状況変化の場合、さらに安全となるのは就労資格証明書交付申請をすることです。
在留期限まで4か月を超える在留期間が残っている場合
4か月を超える在留期間があれば、就労資格証明書交付申請を検討します。これは義務ではありませんが、不法就労にならないことを入管から範囲について証明書をもらうことができるからです。
なお、その後期限3か月前になれば在留期間更新許可申請をすることで、通常簡易な手続きとなります。前回の就労資格証明書交付申請における立証資料や説明資料が使えることと、一度入管に認められた業務範囲の記録があるからです。
まとめ:「技術・人文知識・国際業務」の転職で必要な手続
以上、活動内容と期間によって、人事担当は専門的判断が必要となることがあります。この点、専門の行政書士の力を借りることで本来業務にフォーカスできるので、金額など条件があえば、依頼することで安心を買うことができると考えられます。
谷島行政書士グループは、様々な在留資格を15年以上対応してきた実績があります。
転職も多くの事例があるので、お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他