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コラム

2024年12月12日 企業内転勤

企業内転勤2号vs企業内転勤1号:要件、申請書類や疑問を徹底解説

「企業内転勤ビザ(在留資格「企業内転勤」)」は、日本にある親会社・子会社・グループ会社、または一定の取引関係を持つ企業の間で働く外国籍の方が、日本で勤務を行う際に必要なビザです。本記事では、企業内転勤の要件や必要書類について詳しく解説します。また、特定のケース(親子会社、取引先、グループ会社資本の関係など)にも触れ、申請手続きに役立つ情報をお届けします。
 
なお、企業内転勤2号は2027年またはそれ以前に施行されることが決まっております。これは技能実習1号職種(技能実習2号移行職種以外の職種)なら広く可能であったところ、それが育成就労法改正で廃止されるため、今後もできるようにカバーする目的があるからです(有識者会議の発言から谷島行政書士グループが引用し解釈)。

 

内容

企業内転勤2号の業務:企業内転勤1号との比較

 1. 企業内転勤1号の業務

 2. 企業内転勤2号の業務

企業内転勤2号の要件:企業内転勤1号との比較

 1. 転勤法人間の資本など関係性

 2. 転勤者の職務の要件

 3. 在留・就労期間の上限

 4. 外国の転勤元法人での経験

 5. 給与・報酬が日本人と同等以上であること

 6. 研修を受けること(企業内転勤2号ビザの場合)

企業内転勤2号特有の企業要件

「企業内転勤2号」の必要資料:「企業内転勤1号」との比較ポイント

 ①転勤者である外国人の資料

 ②企業内転勤1号ビザでは、専門業務でないと認められない点に注意

 ③資本関係がない難解事案でも許可率を上げる方法

「企業内転勤ビザ1号2号」申請の流れ

企業内転勤1号・2号でよくある質問

企業内転勤ビザまとめ

 

企業内転勤2号の業務:企業内転勤1号との比較

 

1. 企業内転勤1号の業務

 
「企業内転勤1号ビザ」とは、海外にある本店や支店などから日本国内の関連企業へ「期間を定めて」転勤し、業務に従事するためのビザです。このビザでは、通常「単純就労」は認められず、専門的または技術的な業務に従事する必要があります。主に以下のような専門的業務が対象となります:
 
 エンジニア
 マーケティング担当
 オペレーション担当
 法務、財務、会計
 
 ただし、行政書士等の8士業の独占業務の場合、必然的にそれらの業務は在留資格「法律・会計」となり「企業内転勤ビザ」ではありません。
 外国の弁護士・公認会計士も「法律・会計」です。
 

2. 企業内転勤2号の業務

 
「企業内転勤2号ビザ」とは、海外にある本店や支店などから日本国内の関連企業へ「期間を定めて」転勤し、講習を受けて業務に従事するためのビザです。このビザでは、「現場就労」も可能なものとして、以下の作業が想定されております。
 
 

企業内転勤2号の要件:企業内転勤1号との比較

 
「企業内転勤」のビザを取得するには、以下の要件を満たす必要があります。
 

1. 転勤法人間の資本など関係性

 
転勤元と転勤先が親子会社関係、グループ会社資本関係、または一定範囲の取引関係を有していること。
 
具体例:
 親会社から子会社への転勤
 グループ内の関連会社への移動
 企業支配が可能な取引を行う取引先企業間での出向・派遣
 

2. 転勤者の職務の要件

 
a. 企業内転勤1号ビザの職務
 
単純作業は認められません。転勤先での職務が専門性の高い業務であることが必要です。
なぜなら「技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動」と入管法で規定されているからです。
 
 
b. 企業内転勤2号ビザの職務の要件
 
現場系作業(例:工場でのライン作業など)が認められます。
その他、専門性が不要な幅広い業種が可能となることが想定されています。例えば、外食など特定技能で従事可能であるが、今後育成就労で認められない分野も含めて広く可能と考えられます。
 
なぜなら、法令上「講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動(前号に掲げる活動及びこの表の育成就労の項の下欄に掲げる活動を除く。)」とされています。つまり、「技術・人文知識・国際業務ビザ」及び「育成就労」該当の活動以外と規定されているからです(このように列挙されたもののみを除外する方法は、行政不服審査法の制定方法で「一般概括主義」と呼ばれ、除外以外はすべて適用できるような非常に広い一般法となります。
 
そのうえ、特定技能のように分野に関する法務省令委任で制約するような規定が別表等の条文上に存在しないからです。
 
ただし、企業要件は、企業内転勤1号より制約されます。以下で説明いたします。
 
参照法令:入管法別表第一の二
 
企業内転勤
(企業内転勤1号)
一 本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
 
(企業内転勤2号)
二 本邦に本店、支店その他の事業所のある公私の機関(当該機関の事業の規模、本邦の事業所における受入れ体制等が技能、技術又は知識(以下この号及び四の表の研修の項の下欄において「技能等」という。)を適正に修得させることができるものとして法務省令で定める基準に適合するものに限る。)の外国にある事業所の職員が、技能等を修得するため、本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において講習を受け、及び技能等に係る業務に従事する活動(前号に掲げる活動及びこの表の育成就労の項の下欄に掲げる活動を除く。)
 
 
 
 

3. 在留・就労期間の上限

 
企業内転勤ビザの在留に通算上限年数はありません。1年,3年等が決定されることも多くありますが、5年も許可されます。
 
なお、在留期間更新許可申請を行うことで期間を延長することも可能です。
 
一方で、通算上限年数に関して、企業内転勤2号は、改正法による新たな在留資格であるため、2027年等の施行日まで確定しません。企業内転勤2号は通算1年ないし3年が上限となるとみられております。
なぜなら、このビザは「育成就労」に改正されることで廃止予定の「技能実習」が3年間できる職種、つまり技能実習2号移行職種でないものに代わり、実習要素の手続が一部緩和されるものであるからです。
 

4. 外国の転勤元法人での経験

 
転勤者が転勤元での勤務経験が少なくとも1年以上あり、現在も在籍していることが要件です。
 
企業内転勤1号の場合、在職期間中に同様の業務である必要はありませんが、技術・人文知識・国際業務ビザに属する業務経験が必要です。
 
参照法令:入管法「上陸基準省令」
企業内転勤の項の下欄に掲げる活動
(企業内転勤1号)申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で、その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、当該期間を合算した期間)が継続して一年以上あること。
~略~
 
 
 

5. 給与・報酬が日本人と同等以上であること

 
給与額が日本人と同等以上である法令基準となっております。しかし、その基準は、「技能実習」/「育成就労」や「特定技能」より少し高めです。
 
例えば、「技術・人文知識・国際業務」と同等程度と解釈してよいです。
 
参照法令:入管法「上陸基準省令」
企業内転勤の項の下欄に掲げる活動
(企業内転勤1号)申請人が次のいずれにも該当していること。
~略~
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
 
 
 
 

6. 研修を受けること(企業内転勤2号ビザの場合)

 
研修を受けることが法律上の活動に含まれております。
 
これは権利に条文上読めますが、義務でもあると考えられます。なぜなら上記の通り、技能実習2号移行職種以外の職種の場合に、可能な類型として創設された経緯があるからです。
 

企業内転勤2号特有の企業要件

 
さらに「企業要件」も「公私の機関」とされていた企業内転勤1号と異なる規定がされました。
 
すなわち、企業要件として、技能等を「適正に修得」させることができるかどうかを要件とし、その詳細は「技能実習」のような別の法令(法務省令)で許可要件を定めることができるように明示されました。
 
このような法務省令は、いわゆる「上陸基準省令」と「特定技能基準省令」の他、「分野別告示」のような下位の法令が定められることがあります。
 
「上陸基準省令」とは、各在留資格のうち、就労資格など活動系について、別表第一の一を除き、基準を定めるものです。企業内転勤2号もここに規定されることと考えられます。
 
「特定技能基準省令」とは、上陸基準省令における特定技能の基準が外国人を主として規定する一方、さらに所属機関や雇用契約、支援計画と支援実施にまで、特定技能の在留資格特有の基準を多く定めるために別途制定された基準省令です。この基準省令から、さらに告示に委任し、より細かい産業別の基準を定めています。
 
「分野別告示」とは、上記によりさらに細かく定められた分野別に上乗せする告示です。
 
建設分野でいうと、建設業許可や、建設キャリアアップシステムの要件を増やしております。それらについて、企業の許認可として、国土交通大臣に建設特定技能受入計画認定申請を行わせるというような手続を増やしております。
 
工業製品製造業でいうと、研修義務の他、企業の許認可として、標準産業分類の該当性・協議会加入手続きなどの手続を増やしております。
 
つまり上記のような定めを育成就労で上乗せする方向が考えられているため、この法令構造の類似基準を、企業内転勤2号に使われる可能性が高いです。
 
そのように法令が複雑になると行政書士などの専門家が不可欠です。
 
谷島行政書士グループでも、手続代行や相談が可能なので、お申し付けください。
 
つまり、入管法ではシンプルに規定されていますが、特定技能や技能実習(育成就労)のように、細かい要件を別法令で多く追加することができる条文になっています。
 
 

「企業内転勤2号」の必要資料:「企業内転勤1号」との比較ポイント

 
申請には多くの書類が必要ですが、ケースによって異なります。以下に一般的な必要資料を主にリストアップしました。
 

1. 転勤者である外国人の資料

申請書:申請人等作成用
返信用封筒
顔写真(縦4cm × 横3cm、背景無地)
履歴書
 

2. 転勤元・転勤先企業に関する資料

申請書:所属機関作成用
転勤元企業と転勤先企業の関係を示す資料(例:親子関係を示す登記簿謄本、資本関係の公文書、あるいは契約書など)
取引関係を証明する契約書、取引明細など
 
3. 職務と経験に関する資料
転勤者が従事する業務内容・報酬の説明資料
在職証明書(転勤元企業発行)
 
4. その他の立証資料
状況により異なります。
例:役員支配のケースでは、役員名簿や株主総会議事録などの資料が必要になる場合もあります。
 
注意点、難解事由と、その対応例(谷島行政書士グループの事例)
 

①転勤元と転勤先の関係の立証証明

 
親子会社間やグループ会社内での転勤の場合、証拠書類として資本関係を明確に示す書類が求められます。また、取引先同士での企業内転勤を申請する際は、取引関係の実績が重要な判断材料になります。
 

②企業内転勤1号ビザでは、専門業務でないと認められない点に注意

 
企業内転勤1号ビザでは「単純就労」と判断される業務では許可が下りません。そのうえ、専門性を立証できなくても、同じく許可されません。
 
業務内容を明確にし、「専門性」を立証・説明する理由書作成や証拠となる添付資料がキーとなります。
 

③資本関係がない難解事案でも許可率を上げる方法

 
親子関係がない会社その他「関連会社」に異動する場合、通常の資本関係による企業内転勤とは異なる要件で許可される可能性もあります。例えば、人事による支配類型があります。この場合、役員が2つの会社間でどのような支配権につながる役職にあるかが重要です。
 
また、個人の持ち株があれば許可率を上げることができるケースもあります。この場合、親子関係になりませんが、十分可能性があるため、その数や関係法人などを図に書き出し、複数のスキームや類似事例を検討します。
 
その他、難解事由があり類似事例が少ないときは、外為法における対内直接投資に関する投資家で該当する類型に類似かどうかも検討します。なぜなら、対内直接投資の類型では、役員選任時の支配に関する届出規制があり、又はその他の行為においてもいくつか意思決定に影響を及ぼす類型が類似のケースとして存在するからです。もちろん、1株であっても規制されるような対内直接投資と異なりますが、支配を及ぼせる類型かどうかが判断しやすいことがポイントです。
 
5. 「企業内転勤2号」特有の想定される立証資料
 
企業要件が法務省令委任と定められたため、企業が、技能等習得が可能かどうかを広く定められることが想定されます。
 
分野ごとに上乗せがある場合、建設特定技能や工業製品製造業の特定技能のように定められた資料を提出することになります。
 
そうでなくても、企業内転勤2号特有の共通要件を立証する資料を提出することは間違いないと考えられます。
 

「企業内転勤ビザ1号2号」申請の流れ

 
必要書類の収集
出入国在留管理局への申請書類提出
審査(通常1~3ヶ月程度)
在留資格認定証明書(CoE)交付(又は在留資格変更許可等)
外国在住者が大使館で査証(ビザ)発給申請
 

企業内転勤1号・2号でよくある質問

 
Q1: 親子会社間でない場合でも申請は可能ですか?
 
A1: はい、取引先同士やグループ会社間でも申請は可能です。この場合、「関連会社」で検討できるかどうかを最初に確認します。ただし、「事業の方針決定に重要な影響」を及ぼすことができうる取引(入国在留審査要領)があるかどうかをお聞きし、その実績や関係性を示す立証資料を準備します。
 
Q2: 企業内転勤ビザの更新はどうすればいいですか?
 
A2: 企業内転勤ビザの更新申請は在留期限の3ヶ月前から申請可能です。
 

企業内転勤ビザまとめ

 
企業内転勤ビザの要件や申請は、関連企業間の関係性や転勤者の職務内容を明確にすることが重要です。また、役員支配事例や取引先間での転勤といった特殊なケースでは、追加資料の準備が必要です。専門的なサポートを希望される場合は、ぜひ当法人にご相談ください。スムーズなビザ取得を全力でサポートいたします。

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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