コラム
2025年01月29日 行政法実務在留資格一般
在留資格の取消しは、虚偽申請がなくても、活動や地位が変われば処分される類型に注意
この解説でわかること/目次
在留資格取消しがされる3つの活動系類型と、取消しが多いケース
在留資格許可申請(変更や更新)直前まで対策していなかった場合
「偽りその他不正の手段」で在留資格の取消しを受けるイメージがあると思いますが、適法な申請をしていた外国人であっても、法令根拠としては、以下のように、活動をしていない期間があれば取消しを受けることになります。
(在留資格の取消し) |
在留資格取消しがされる3つの活動系類型と、取消しが多いケース
上記の法令をもとに、虚偽申請などではなく、活動や地位によって在留資格が取消される可能性がある主なケースを整理すると、以下のとおりです。
1. 在留資格に応じた活動を全く行っていない場合(法第22条の4第5号)
この類型は「専従資格外活動」と呼ばれます。
〇たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の資格を取得して日本に滞在しているにもかかわらず、実際にはその職務活動をしていない状態で、他の活動(アルバイトや別の資格外活動など)を中心に滞在している場合が該当します。正当な理由がなければ取消しとなる可能性があります。
〇その他、「留学」の在留資格でも、学校に行かず、アルバイトである資格外活動ばかり行っている場合は、在留資格の取消し対象となることに気を付ける必要があります。
〇これらの場合、専ら資格外活動のみをしている場合、それが資格外活動許可を得た活動であっても、専従資格外活動違反罪の成立にも気を付けることになります。
2. 在留資格に応じた活動を一定期間継続して行っていない場合(法第22条の4第6号)
〇在留資格に応じた活動を連続して3か月以上(高度専門職2号は6か月)行わずに滞在していると、これも取消しの対象となります。5号との違いは、資格外活動(資格外活動許可があっても同じ定義)の有無です。
3. 配偶者ビザにおける夫婦関係の実態がなく、長期にわたり同居も生活実態もない場合(法第22条の4第7号)
〇日本人や永住者の配偶者等の在留資格で滞在している場合、6か月以上夫婦としての実態のない状態が続けば、資格取消しの対象となることがあります。
たとえば、別居や事実上の離婚状態などです。ただし、DV被害などのやむを得ない理由がある場合は、その点を正当な理由として主張することも可能です。
取消し対象となっても、「正当な理由」を書面で立証する重要性
在留資格に基づく活動を行わない期間がある場合でも、「正当な理由」があると認められれば、取り消しがなされないことになります。
その正当な理由は書面で準備することが重要です。特に在留申請時においては、証拠の書面提出をしないで口頭で説明をしても行政には通用しません。
「正当な理由」として在留資格取消しを避ける事情の例
その例は以下の通りです。
• 長期入院や療養
• 産休・育休
• 災害や事故による一時的な就労不能
• 正当な事情を伴う休職期間 など
上記のように、正当な理由(解雇、病気療養など)があれば考慮されることもありますが、単なる就労意欲の低下などでは厳しく判断されます。
これらの「正当な理由」があるかどうかは個別に審査されるため、自己判断で大丈夫と考えずに、行政書士に相談しておくことをおすすめします。
在留資格の取消しに気づきにくいケースと、対策するタイミング
1.専従資格外活動の取消しケース
まず、当初の在留資格の活動をやめて、資格外活動のみをしてきた「専従資格外活動」の場合は、在留申請の場面で、取消し対象であったことに気づく外国人も多いです。
これは就労ビザの場合、例えば、企業が就労可能な範囲を誤って命令し、そのまま資格外活動になっていることもあるからです。
特定技能では、建設業の建築区分で許可を得たにも関わらず、土木区分や設備区分のみの活動をしていた場合や、工業製品製造業では、工場の清掃のみをしているケースが該当しえます。
2.在留資格の活動を3か月以上していなかったケース
在留資格の活動をしていない期間は、外国人も自覚がありますが、行政書士に在留期間更新許可申請などの手続の直前で相談されることも多いです。早めに相談していれば立証資料を証拠として準備できることもあるため、申請直前では間に合わないこともあります。
在留資格許可申請(変更や更新)直前まで対策していなかった場合
在留申請の許可要件として、「相当性」を満たすために活動をしていなかったことも「正当な理由」があったことを立証することになります。
しかし、直前では、「正当な理由」を立証する証拠収集が間に合わないことがあります。したがって、活動をしていない期間があると予測した時点で、次の立証資料を将来のために確保・保存していくことが重要です。
もちろん、これは在留申請と別の制度なので、入管が気づいた時点で、取消し処分も可能です。
在留資格の取消しへの「正当な理由」の立証方法、同時に行う在留資格毎の立証
具体的にすべきことは、その期間が短期であることやその違法が治癒されたこと、またその理由が「自己の責に帰するものではないこと」を主張するために過去の資料収集を行います。通常の在留資格の許可要件の充足と同時に証明することになります。
例えば、就労ビザの代表的な「技術・人文知識・国際業務」では、職務の専門性が分かりにくい場合、それも当然、立証が必要です。それに加えて、取消し対象であったことの正当な理由まで証明しなければならないことになります。
そのような総合的・複合的な立証は、法的な有利不利を判断し、適法に対応できる専門家の助言や代理代行が重要です。不利な事実があってもリカバリーすることができるからです。
在留資格取消しを避けるためのポイント
1. 適法な在留資格を取得する
〇自分の在留目的や活動内容に適合したビザを選択・申請することはもちろん、活動範囲や変更・更新の要件を理解しておくことが重要です。
2. 在留資格の変更・更新時の準備を怠らない
〇仕事をやめる、転職する、離婚した、など生活状況が変わった場合には、速やかに在留資格の変更や必要な届出を行うことが望ましいです。
3. 活動実態の記録・証明を用意しておく
〇業務委託契約書や労働契約書、給与明細など、自身が正しく就労している、あるいは夫婦関係を継続している証拠をきちんと保管することで、万一の時に証明がしやすくなります。
4. 困ったときは専門家へ相談
〇取り消し可能な状態に該当するか迷ったときは、行政書士等の専門家に早めに相談しましょう。正当な理由の立証や手続きの準備をサポートしてくれるため、早期の相談が問題の拡大を防ぐ鍵となります。
谷島行政書士グループのサポート体制
谷島行政書士法人では、外国人のビザ申請や在留資格の変更・更新手続きだけでなく、在留資格取消しのリスク対応についてのご相談にも対応しております。主なサポート内容は以下のとおりです。
• 在留資格取消しリスクの事前診断
〇現在の在留状況をヒアリングし、リスクの有無を診断します。
• 事前に予測した、正当な理由の立証資料作成支援
〇例えば、海外に長くいることになるなど、事前に準備提案も可能です。予定されている日本での活動がない期間等の間にどのような資料が必要か、適切な説明書類の作成をお手伝いします。
• 取消し対象が不利となる在留資格の変更・更新許可申請の代理代行
〇取消し対象となっていることが在留申請で不利にならないために、連動した配偶者ビザの更新や就労ビザの資格変更など、状況に合わせた手続きを全面サポートいたします。
活動系の在留資格取消しのまとめ
在留資格取消しの制度により、「偽りその他不正の手段」によるものだけではなく、「在留資格に応じた活動を行っていない期間」が3か月以上など一定期間続けば、適法に取得したビザでも取り消される可能性があります。特に就労ビザや配偶者ビザなどは、十分に注意して日常の活動実態を整え、問題が発生しそうな場合は早めに専門家にご相談ください。
在留資格に関するご質問や、取り消しリスクへの対応などでお困りの際は、どうぞお気軽に当法人へお問い合わせください。豊富な経験とノウハウをもとに、状況に応じた的確なサポートをさせていただきます。
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この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他