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コラム

2025年01月30日 特定活動

特定活動46号(本邦大学等卒業者)徹底解説&専門学校や「留学」以外への拡大(令和6年改正)

 

 

1. 特定活動46号とは

「特定活動46号」は「技術・人文知識・国際業務」等の就労ビザの中で幅広く就労できる特徴があり、近年ニーズが高まっております。以下、詳細を説明してまいります。

 

2.特定活動46号の要件や対象拡大の改正

特定活動の「46号」というのは特定活動という在留資格がそれぞれ異なるため、100種類以上の類型が存在します。そのうち、特定活動の活動と要件を定める告示である「特定活動告示」(行政書士や入管職員から呼ばれる法令略称)で46番目の条項だからです。なお告示にない「告示外特定活動」も多く存在します。

さらに、令和6年2月の「特定活動告示」改正により、「特定活動46号」の対象範囲が拡大され、本邦大学等卒業者として大学・大学院、短期大学の他、専門学校卒業者までが「特定活動46号」の学歴要件として認められました。これで留学生又は元留学生であった外国人は「技術・人文知識・国際業務」等の他、就労ビザの選択肢をより増やしやすくなりました。本制度は、高い日本語能力を有する留学生の就職を支援するもので、以下の点が特徴的です。

さらに、「留学」から在留資格変更許可申請をする場合に限らず、卒業後帰国した元留学生や他の就労資格保持者も対象となっております。この場合、在留資格認定証明書交付申請が必要です。

専門学校については、すべてではなく外国人留学生キャリア形成促進プログラムにおけるキャリア形成プログラム認定の専門学校で、高度専門士を有する外国人も場合も対象となりました。

「特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号))」https://www.moj.go.jp/isa/content/001360125.pdf

第46号
別表十一に掲げる要件のいずれにも該当する者が、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み、風俗営業活動及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く。)

 

3. 特定活動46号で就労できる活動、禁止される就労

就労範囲として、特定活動46号では、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」とされています。

これは「いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務」である点が特徴的な活動範囲です。

「要素」となっているため、非常に広範な業務従事が可能です。

上記の例でいうと「翻訳・通訳」が「主たる活動」でなくても、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事」が含まれていれば可能という点が特徴です。

ただし、外国人ごとに個別に判断すべきは、「専攻学科や専門学校の課程で修得した学修の成果等を活用する」ものであり、「学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれている」業務であると認められる必要があります。

関連性と専門性については、特定活動46号ではいずれも不要と思われていることがありますが、そうではありません。“「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養が必要な一定水準以上の業務”という面で必要ということになります。

また、関連性については、大学卒業の方が、「技術・人文知識・国際業務」の申請をする場合と大きく異なる基準となります。つまり「技術・人文知識・国際業務」では「技術」や「人文知識」の基準で申請する場合、「専攻との関連性緩和」を受けられることと異なるので、注意が必要です。

その他、以下も認められません。
a. 風俗関係業務
b. 独占業務(行政書士や看護師など、法律上、資格が必要な業務)

参照:入管庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学等卒業者)についてのガイドライン」

従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること又は今後当該業務に従事することが見込まれることを意味します。

※ 「学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務」とは、一般的に、本邦の大学等において修得する知識が必要となるような業務(商品企画、技術開発、営業、管理業務、企画業務(広報)、教育等)を意味します。

 

4. 業界・産業別の特定活動46号の事例

上記の範囲内であれば、店舗での販売などの「一般的なサービス業務」や「製造業務等」が主たる活動として認められます。
例えば、以下の業務が就労可能です。

外食・飲食業:
 可能:店舗管理業務、通訳を兼ねた接客。
 不能:皿洗いのみ

工場など製造業:
 可能:商品開発業務や製造ラインの指導を兼ねたライン作業
 不能:指示を受けたライン作業のみ

旅客運送、観光業:
 可能:通訳を含む観光案内を兼ねたタクシードライバー。
 不能:車両整備や清掃のみ

小売業:
 可能:商品企画・販売、通訳を兼ねた接客現場業務
 不能:陳列や清掃のみ

介護業:
 可能:外国人スタッフ・技能実習生への指導を含む介護の現場業務
 不能:清掃や衣服の選択のみ

飲食料品製造業:
 可能:他の従業員とのコミュニケーションが必要な商品企画と共に行う、商品製造ラインでの作業
 不能:もっぱら商品製造ラインで指示を受けて行うもの

5. 特定活動46号の許可要件

以下の条件を満たす必要があります。

学歴:
以下のいずれかの修了が必要です。

1.本邦(日本)の大学
2.本邦(日本)の短期大学
3.本邦(日本)の高等専門学校
4.本邦(日本)の専門学校のうち、外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定専修学校専門課程(高度専門士取得ができるもの)

 

日本語能力:
1.日本語能力試験N1、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上の成績。
2.外国の大学・大学院で日本語専攻の修了及び学士・修士の取得

 

雇用契約:
常勤職員つまりフルタイムとしての雇用契約が必要(派遣・アルバイトは対象外)。

 

給与:
同種の業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を受けること。

 

業務の要件:
以下の3要素が含まれていないと不許可又は長期審査のリスクがあります。

1. 日本語意思疎通業務:「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務」
2. 関連性:専攻学科や専門学校の課程で修得した、つまり「学修の成果等を活用する」業務であると認められること
3. 専門性:「学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれている」業務又は今後の従事が見込まれると認められること。

つまり、特定活動46号で店舗販売業務につくことは可能ですが、それだけでは「学術上の素養等」が足りません。例えば、小売店での販売業務の場合、マーケティングなどの要素があることを説明することが必要です。

「特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号))」https://www.moj.go.jp/isa/content/001360125.pdf

別表第十一
一 次のいずれかに該当していること。
イ 本邦の大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業して学位を授与されたこと。ロ 本邦の大学院の課程を修了して学位を授与されたこと。
ハ 本邦の短期大学(専門職大学の前期課程を含む。)又は高等専門学校を卒業した者(専門職大学の前期課程にあっては、修了した者)で、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)第三十一条第一項の規定による単位等大学における一定の単位の修得又は短期大学若しくは高等専門学校に置かれる専攻科のうち独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が定める要件を満たすものにおける一定の学修その他学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)第六条第一項に規定する文部科学大臣の定める学修を行い、かつ、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して、学士の学位を授与されたこと。
ニ 本邦の専修学校の専門課程の学科(専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和五年文部科学省告示第五十三号)第二条第一項の規定により文部科学大臣の認定を受けたものに限る。)を修了し、専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規程(平成六年文部省告示第八十四号)第三条の規定により、高度専門士と称することができること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
三 日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること。
四 本邦の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、第一号ハに規定する短期大学等の専攻科又は同号ニに規定する専修学校の専門課程の学科において修得した学修の成果等を活用するものと認められること。

 

6. 特定活動46号の在留申請書類

申請類型ごとに2つに分かれ、以下の通りの資料が必要です。

a. 在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請の提出資料

 

(1)申請書(在留資格認定証明書交付申請書又は在留資格変更許可申請書)
申請人等作成用1及び2N
所属機関等作成用1N及び2N
(2)写真(縦4cm×横3cm)
(3)返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、必要な額の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通
(在留資格認定証明書交付申請時のみ)
(4)パスポート及び在留カード(在留資格変更許可申請時のみ)
(5)申請人の活動内容等を明らかにする資料
労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書(写し)
(6)雇用理由書
所属機関名及び代表者名の記名が必要です。
どのような業務で日本語を活用するのか、どのような業務が学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であるのかを明確にしてください。
(7)申請人の学歴等を証明する文書
ア 本邦の大学卒業者又は大学院修了者卒業(修了)証書(写し)又は卒業(修了)証明書(学位の確認が可能なものに限ります。)
イ 本邦の短期大学若しくは高等専門学校を卒業又は専門職大学の前期課程を修了し、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して、学士の学位を授与された者
(ア)本邦の短期大学又は高等専門学校卒業者については卒業証書(写し)又は卒業証明書、専門職大学前期課程修了者については修了証書(写し)又は修了証明書
(イ)独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が交付した学位記(写し)又は学位授与証明書
(ウ) (キャリア形成プログラム)認定専修学校専門課程を修了し、高度専門士の称号を付与された者
高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
(8)申請人の日本語能力を証明する文書日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上の成績証明書(写し)。なお、外国の大学において日本語を専攻した者については、当該大学の卒業証書(写し)又は卒業証明書(学部・学科、研究科等が記載されたものに限ります。)
(9)事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
ア 勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が記載された案内書
イ その他の勤務先等の作成した上記アに準ずる文書
ウ 勤務先のホームページの写し(事業概要が確認できるトップページ等のみで可)エ 登記事項証明書
(10)課税証明書及び納税証明書(証明書が取得できない期間については、源泉徴収票、当該期間の給与明細の写し又は賃金台帳の写し等)(注)他の就労資格からの在留資格変更許可申請又は、転職による在留資格変更許可申請に限ります。(注)転職による在留資格変更許可申請については、(7)及び(8)は不要です。

 

b. 在留期間更新許可申請の提出資料

(1)申請書(在留期間更新許可申請書)
申請人等作成用1及び2N
所属機関等作成用1N及び2N
(2)写真(縦4cm×横3cm)
(3)パスポート及び在留カード
さらに、場合によっては、追加資料や証拠の提出を求められる場合があります。

 

7. 家族の帯同

配偶者や子供も「特定活動」資格で日本に滞在可能です。本国から招へいすることもできます。

こちらは「特定活動47号」の申請となり、別の申請書類が必要となります。

「特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号))」https://www.moj.go.jp/isa/content/001360125.pdf

四十七
前号に掲げる活動を指定されて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動

参照:入管庁、https://www.moj.go.jp/isa/content/001413914.pdf

 

8. 転職における特定活動46号のメリット・デメリット

特定活動46号は、転職に制限があります。正確にいうと、指定書がパスポートに添付され、所属機関つまり企業ごとに許可を受けています。また、業務について条件で範囲が決まっています。

したがって、出向においても、転籍出向は資格外活動違反となります。在籍出向も注意が必要です。少なくても転籍先で3か月以上の活動をしていることが取消し事由と評価されるリスクもあります。

これは、中小企業にとっては、離職されにくい在留資格であるともいえます。メリットデメリットのどちらになるかは企業と従業員のそれぞれの立場になるでしょう。

 

9. 通算上限年数と更新

在留期間は、更新によりずっと更新でき、通算上限年数がなく在留可能です。

 

10. 永住の可否

「特定活動46号」での在留年数は、永住許可に必要な在留年数に計算するとされており、永住まで目指すことが可能です(制度開始当初は入管職員が「認められない」と言っていた時代もありましたが、今はそのような運用は聞きません)。「技術・人文知識・国際業務」からの永住許可申請と区別される制度趣旨があるとも解釈できません。

 

12. 特定活動46号の注意点とまとめ

特定活動46号は、「技術・人文知識・国際業務」等の就労ビザの中で、業種によっては現場で活用しやすいとても便利な在留資格です。
その対象拡大は、留学生の日本でのキャリア形成を支援し、日本社会において外国人の柔軟な就労を促進するものです。

一方でわかりにくい要件に不適合の疑いをもたれると、追加資料通知を受け10日ほどの期限で追加証拠や説明文書の提出が必要となります。それができない場合は不許可になります。

また、申請内容がわかりにくい場合は長期審査のリスクがあります。

確実な申請のご依頼をお考えでしたら、お気軽に当法人までご相談ください。

 

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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