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コラム

2024年02月06日 コラム

不法滞在状態でも適法就労ができる?改正入管法の新たな監理措置、在留特別許可、難民・避難民の退去強制、収容と仮放免

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外国人雇用企業全般:人事担当、経営者その他 外国人を雇用する前と、その後

適法な就労活動かの線引きがわからない。

難民と不法滞在者の線引きがわからない。
適法な就労許可でも違法になる線引きはどこなのか?

コンプライアンス対応
特に雇用・就労が可能かどうかのところから知って、安心したい

 

Q. 不法滞在で働くことは今まで不法就労となっていたが、今後はオーバーステイや難民・避難民も報酬活動許可があれば就労可能なのか?

 

回答

原則、「報酬を受ける活動の許可(以下、「報酬活動許可」とします。)」によって可能となります。例外は退去強制令書が出されている状態の監理措置を受けている外国人などです。
今までの合法・違法と論じられる線引きが大きく変わる改正が2023年から2024年6月施行の改正入管法によって実現しました。しかし複雑であり、労働法令だけでなく入管法での前提知識が必要な制度です。

したがって、私も簡潔な言葉で可能な限り文字量をおさえ、誤解を恐れずにシンプルに記載し、必要な箇所を簡潔に説明します。

 

不法滞在とは?

一口に不法滞在といっても、多様を極めます。いくつか類型があります。主に次の通りです。

1. 不法残留者(オーバーステイ)などの在留期限が経過した者

2. 不法上陸者:パスポート偽造などでそのまま不法滞在

3. 難民であり、在留資格を有しない者

4. 補完的保護対象者であり、在留資格を有しない者

5. 在留資格を有しないで、不法に日本に滞在する者その他

 

基本的に在留資格を有しない滞在者等が不法とされ、その理由が正当であってもそうでなくても、一律に不法滞在者となります。

 

不法滞在者はいつ送還されてしまう?

不法滞在者であっても、すぐに違反を確定されるわけでなく、審査されるまでは処分されません。つまり、退去強制令書は出ません。三段階と呼ばれる違反審査、口頭審理、法務大臣の裁決を経ていく審査があります。

それまで仮放免が主な選択肢として、収容を解かれていました。しかし健康上の問題を生じたり、事件も多かったのです。

それが、今後は監理人による監理措置を決定されれば、日常生活もできて、報酬許可を得て就労も可能となるのです。

 

 

 

不法残留と難民、避難民に対する大幅な2024年改正入管法とは

この改正は、大きく報じられておりませんが、大幅な緩和であり、多数の新たな制度ができたことによって、不法残留者として、それ以外に罪がない収容者や仮放免を受けている難民認定申請者なども多くが恩恵を受けることになります。難民認定申請者やその二世らは、「特定活動」等の在留資格がなければ不法残留者等となる法制度だからです。なお、何度も同じ申請をする難民認定申請者などは一定範囲で送還できるような新たな整備もされました。その他の制度も以下の通り創設され、大幅に変わりました。

まず、監理措置などによって収容や仮放免がされずに生活できることが実現し、収容が大幅に減ることが見込まれます。

次に、在留特別許可の法務大臣による付与について、申請の権利が保障される「在留特別許可申請」になったことも大きいです。在留特別許可は、難民認定がされなくても不法残留者等が日本に居続ける許可を特別に得られる制度です。

三番目に、上陸拒否期間1年への短縮許可申請も大幅な改正です。退去強制令書を受けても、ここで日本に来れる可能性が短期になりえるからです。

四番目に、ウクライナ避難民やミャンマー避難民、その他シリアやガザなどを含めた避難民の制度ができ、難民認定申請に準じて「補完的保護対象者認定申請」が創設されました。つまり、戦争難民を受け入れる制度は補完的保護対象者認定として可能となり、難民に近い基準で認定されます。つまり在留資格「定住者」を得ることで中長期在留や永住も可能となります。https://www.moj.go.jp/isa/refugee/procedures/07_00037.html

最後に、従来の難民認定申請においても、基準が改定され、公開されるに至りました。この基準は補完的保護者と多く共通するものとなっております。

 

不法滞在者に関する令和5年度入管法改正による基本的考え

次の三つを基本として改正されました。

1. 保護すべき者を確実に保護する。

2. その上で、在留が認められない外国人は、速やかに退去させる。

3. 退去までの間も、不必要な収容はせず、収容する場合には適正な処遇を実施する。

 

上記から、難民申請中や監理措置を受けた不法滞在者について、生活費のための就労が一定範囲で許可される制度ができました。

 

収容についての発展知識

特に、次の文言等によって「全件収容主義」が変わる点が注目されていました。

  •  「原則収容」である現行入管法の規定を改め、個別事案ごとに、逃亡等のおそれの程度に加え、本人が受ける不利益の程度も考慮した上で、収容の要否を見極めて収容か監理措置かを判断することとします。

引用元:出入国在留管理庁、https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/05_00007.html

 

 

報酬活動許可とは?

2024年6月施行法で可能となった新たな許可制度が「報酬活動許可」です。すなわち、不法滞在をしていても、適法に申請や職権でこの許可を得れば、就労活動が可能となります。

従来は、不法滞在者であれば就労などができませんでした。しかし、この申請を行い、または職権により、報酬を行う活動の許可がされれば、その条件範囲内で就労・雇用が可能となりました。

なお、条件とは、就労できる所属機関つまり企業が指定されることの他、時間の制限などが想定されております。

 

退去強制とは?

退去強制は、一定の入管法違反などにより行われる行政処分の一つです。次の三段階で進み、強制退去されるまで審査がいくつかあります。

 

1. 違反調査

2. 違反審査

3. 口頭審理

 

退去強制に対する不服申し立て

3の口頭審理で退去強制処分が相当とされたあとに、異議の申出が可能です。

3日以内に行う必要があります。

 

前提として、不法滞在者は退去強制を受けることになります。その場合、いままでは「全件収容主義」と言われ、一部の在宅による違反調査などを可能とする入管の判断がなければ、基本的に収容されます。その収容を解く例外が仮放免です。

 

仮放免とは?

しかし、一定の制約のもと、仮放免許可を受ければ、収容が解かれます。

ただし、この仮放免は限定的でした。

仮放免が得られずに、収容中、医療を受けられずに死亡する事件など問題が多くありました。

したがって、仮放免に改正がされました。それにより、健康上の理由などによる限定列挙事由に該当すれば、今後、仮放免が得られる基準の明確化がされました。

 

なお、日本で生まれ育ったロヒンギャの2世なども仮放免によって不法滞在者であるものの多くが日常生活を送っています。しかし、他の都道府県への移動の制限や、就労の禁止により、罪のない子供たちが教育を受けられず、幸福追求をできない問題が生じております。

 

監理措置とは?

監理措置を決定されれば、仮放免の事由に該当せずとも、収容されずにすむようになります。また前述のように就労ができる報酬活動許可の前提となります。ただし、報酬活動許可の申請は、退去強制令書発布前に限られます。

したがって、早い段階にできることが数多くあり、令書発布をされないための対応が必須です。

 

いままでは、在留特別許可を得ることで、適法在留に転換され、就労もできるようになるという方法に限らず、長期の収容や、不法滞在者の生活や自由のための措置として、問題解決になると期待されます。

 

監理人とは?

監理措置のために、監理人が必須の要件となります。その職務として具体的には、被監理者への指導や把握、入管への報告などがあります。

つまり、監理人は、入管に対する一定の義務を負うことになります。

 

監理人の要件とは?

士業などが中心と考えられ、監理について、報酬を得ても可能とされました。そのため、民間の企業が報酬を得て、これを行うことも考えられます。ビジネスとなれば、営利を求めた支配関係が生じるなどの問題が内在します。

 

退去強制令書発布

上記の在留特別許可申請も不許可となれば、退去強制令書発布がされます。また3日以内に申請をしない場合や、口頭審理で退去強制を認定されるなどの結果に服するなどの終局的な場合は、退去強制令書が発布されることになります。

 

そうなると、今度は、監理措置でも報酬活動許可申請ができなくなるなど、様々な局面が変わります。

端的に言うと、退去強制令書発布がされる前であれば、在留特別許可等のためにできることはたくさんあります。

しかし、令書発布後はできることが途端に制限されます。

また、ここで逃亡のおそれがあると認められる場合は監理措置を受けることができなくなり、収容されることも想定されます。

 

退去命令の創設

退去強制令書発布後に、退去をしない場合は、この命令に違反した場合に刑罰が用意されることになりました。退去しない場合に、違反が増えることで、不利益が大きくなり、間接的に退去を促されることになります。

 

難民・避難民等の改正

難民認定申請や、ウクライナ避難民その他の戦争避難民について「補完的保護対象者」とする改正がされました。

これによって、暫定措置であった、ミャンマー避難民やウクライナ避難民などの「特定活動」がなくなっても、定住者を目指すことや、申請中に本邦に在留できる制度が明確化されました。

また、シリアやガザ避難民などあらゆる場面で適用できるでしょう。

補完的保護対象者と難民はほとんど類似の法令適用がされます。しかし、大きな違いは、「難民該当性判断の手引」における5つの要件のうち、1が該当しない場合でも成立することとされます。

 

退去強制の送還停止効がなくなる改正

不法滞在者のうち、オーバーステイや難民なども退去強制令書発布をされれば退去強制が原則です。この点、従来は、難民認定申請をしていれば、送還効が停止されるとされていました。

しかし、改正により3回目以降の申請であれば、送還が停止されないことになりました。例外は、「相当の理由」がある資料の提出があった場合です。この点、認定に有利となる程度の証拠を提出していた場合などが該当すると考えられます。また合理的な理由があって、提出できなかった場合も該当しうると国会で答弁があったとされます。

 

そうなると、次は、退去強制後の再度の上陸のために、尽力することになります。

 

上陸拒否期間1年への短縮の決定

退去強制令書発布がされても自発的に出国させるために、その申請によって上陸拒否期間を一年とすることができる申請制度が創設されました。

例えば、オーバーステイの場合は5年の上陸拒否期間が従来の原則であることに変わりありませんが、今後は変更されることになります。

 

企業の課題:難民その他不法滞在者の就労が可能なのかわかりにくいこと

これから監理措置や報酬活動許可が増えるにつれて、在留資格を有しない難民や補完的保護対象者などの避難民が適法に許可を有していても、企業には、在留カードがない場合にどのような判断ができるのでしょうか。

また、条件が付されるため、それがどこまで適法かわかりにくいはずです。

さらに監理措置は、就労当初だけでなく、例えば、三カ月ごとなど定期的に、報酬活動許可や監理措置が適法か確認が必要です。

 

その他、今の入管の就労制度は複雑です。例えば、特定技能でも受入機関が産業分類に該当していないと資格外活動違反になるなど、制度が年々複雑となっております。一方で、違法については入管も逮捕し、刑事裁判として立件されるケースも増えてきております。

 

この点は、致命的なダメージを企業に与えるため、行政書士への相談が重要となります。採用前後はもちろん、定期的に許可その他の状況変化を確認し相談することが不可欠となります。

一方で、これらの大幅な改正による就労可能な改正は、特に人手不足企業や、地方の企業に大きなメリットもあるでしょう。

 

結論

適法な外国人雇用を増やすために、この制度は大きなインパクトがあり、メリットがあります。一方で、複雑な制度を使いこなすために、ぜひ専門の行政書士に依頼し相談してください。

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザ専門。手続代理及びコンプライアンス顧問として、登録支援機関のほか弁護士等の専門家向け顧問の実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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