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コラム

2024年12月04日 コラム

「技術・人文知識・国際業務」の業務と学歴等の要件チェック方法と事例を徹底解説

Q. 「技術・人文知識・国際業務」で多くの要件があるので、採用できるかどうかわかりにくいです。要件ごとに、どの順番で、どのようなポイントでチェックすればよいでしょうか。

 

A. 技術・人文知識・国際業務」の許可要件は、大きく二つを検討します。
1. 業務内容(在留資格ごとの活動の該当性)
2. 学歴と実務経験(基準適合性)

 

上記の他の要件もありますが、これらが基本要素です。この2点にフォーカスすることで難解事案に対応しやすくなります。谷島行政書士グループは、そのような企業法務部・人事、あるいは同業の行政書士から多く相談を受けるため、以下の通り詳しく解説してまいります。

 

 

「技術・人文知識・国際業務」の業務要件チェックの順位

一番わかりやすい検討事項の優先順位としては、以下の通りです。
1. 専門性があるかどうか
2. 1の専門的業務に十分な業務量があるかどうか
3. 1の専門的業務に関連する専攻科目を多く履修しているか

 

「技術・人文知識・国際業務」の要件ごとのチェック順序

その順番としては、学歴等より先に業務内容の検討が必要です。なぜなら「技術・人文知識・国際業務」で許可される業務内容かどうかの検討ができていないと、学歴等の要件チェックの前提が変わること(どのような専攻科目や経験が必要か)、又はそもそも活動が不可能なことがあるからです(雇用した場合、不法就労になる確率のリスク回避判断)。

 

1. 専門性について(「技術・人文知識・国際業務」在留資格該当性①)

専門性は主に学術的素養が必要な業務です。経営学や、心理学、建築学などの大学や専門学校で修得する学問的な体系的知識を要する業務である必要があります。したがって、いくら難しい業務であっても反復継続的に修練で可能となる業務は通常「技術・人文知識・国際業務」に該当しません。その場合、他の在留資格では「技能」が使われることがあります。

また専門性がある業務を入社当初に用意できない企業も日本では多くあります。この場合、例外的に、ゆくゆく専門性を有する学術的素養を要する業務が予定されるキャリアのポジションであれば、当初は専門性などの該当性がなくても可能性があります。

さらに必要なのは、在留期間の大半を占めるポジションとして「技術・人文知識・国際業務」の業務が見込まれるキャリアプランを作成し、日本人を含めた実務研修を行う仕組みがある企業の場合です。その他、複数の要件や注意すべきポイントはありますが、このような実務研修型の技術・人文知識・国際業務の場合、メンバーシップ型や総合職として現場なども可能な類型に該当する可能性があります。そうなれば、当初専門性を有する業務であることが必ずしも要求されません。

ただし、在留期間は通常1年許可とされる運用であり、翌年までに進捗を確認する必要があります。

 

「実務研修型」の不許可事例

「実務研修型」の「技術・人文知識・国際業務」で、入管公表事例からの考察

実務研修型「技術・人文知識・国際業務」で重要な事例を紹介し、解説します。

(5)経営学部を卒業した者から飲食チェーンを経営する企業の本社において管理 者候補として採用されたとして申請があったが、あらかじめ「技術・人文知識 ・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく、 数年間に及び期間未確定の飲食店店舗における接客や調理等の実務経験を経て、 選抜された者のみが最終的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事することとなるようなキャリアステッププランであったことから、「技術・ 人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとして採用された者に一 律に課される実務研修とは認められず、不許可となったもの。

 

つまり、全員が対象であるキャリアプランである必要があります。さらに期間未確定とすることは許容されません。技術・人文知識・国際業務の業務に就ける蓋然性がないからです。ただし、企業ごとの事情があります。たとえば要件を満たせなかった労働者は日本人であればそのまま現場で働くことになりますが、外国人はその企業でそのまま雇用継続できないことになるので、その結果離職する可能性があることになります。そのため、最初から実務研修型で雇用できないかどうかは明らかではありません。一定程度許容される案件もあります。いずれにしても個別の案件ごとに適法にキャリアプランを精査する必要があります。

 

実務研修型の問題と注意点

実務研修型で雇用できる価値は高いのですが、ずっと現場で働かせるためにこれを虚偽申請に用いるなどは許されません。

刑罰として、外国人は資格外活動違反罪となり、悪用する企業は不法就労助長罪となる危険性があります。

行政処分としては、特定技能や技能実習の受入停止処分や、その後の申請が不許可になるリスクを抱えます。行政処分には時効がないため、一生恐怖を抱えるストレスに向き合うことになります。その顛末まで考えると、悪用することに価値はありません。

 

2. 業務量について(「技術・人文知識・国際業務」在留資格該当性②)

次に、専門性がある業務の量が十分かどうかを検討します。最低でも8割以上を確保したいところです。これは最初の申請の提出時点で立証資料が不十分な場合、入管から業務スケジュールの提出をするよう通知されることがあります。しかも、1週間と1日単位で分けたもので、それを10日以内に提出するようにとされることがあります。こうなってしまうと大変であるため、最初から十分に立証資料提出が重要です。

 

3. 関連性について(「技術・人文知識・国際業務」基準適合性:学歴・経験)

関連性は、簡単に言うと勉強した科目が業務内容に多く関連しているかどうかです。この例外として、大学や一部の専門学校の卒業であれば緩和される運用の「関連性緩和」があります。ただし、専門性が必要なことは変わらず、その専門性を発揮する仕事をするにはやはり学術的な素養が必要であることが通常であることに注意が必要です。

例えば、建設企業で採用する場合、設計ソフトであるCAD設計を履修していない「文学部」の外国人がCADを使った設計業務で採用されることは、関連性緩和と言っても入管は疑問を持ち慎重審査にすることになります。それで「安定性・継続性」が認められないとされる可能性があります。そうすると不許可になります。

したがって、関連性が緩和されても、専門性の観点で学術的・体系的な業務である以上、それを全く有しない外国人がそのまま安定的に稼働できるとは考えません。業務によって、結局、関連性が一定程度必要であることが重要です。

 

大学・専門学校卒業でない場合の、関連性の実務経験立証について

大学卒業や専門学校卒業である必要は必ずしもありません。実務経験でも可能です。その場合、3年又は10年以上の関連する経験を立証することになります。

 

大学の3年課程や短期大学の場合

短期大学の場合も適合可能です。ただし、外国では多様な教育類型がある国もあります。例えば、中国では大学のような形態でも、職業訓練校であることもあります。
さらに、フランスでは、バカロレア取得の後に進学したかどうか等の前提知識が必要となります。
また、インドネシアでは短期大学かそうでないかわかりにくい書類の記載もあります。
日本の大学と異なり、3年の大学もあります。それが大学扱いになるか、全く学位がないかということを個別に判断することになります。申請を進めた結果、入管から不許可通知を受けるまで、そもそも不可能だったことに気づかず、6カ月経過してしまった事例もあります。そうならないように、まずはご相談ください。

 

関連性の許可事例

入管が公表している事例の一部を紹介します。

〇 許可事例
(1)工学部を卒業した者が、電機製品の製造を業務内容とする企業との契約に基 づき、技術開発業務に従事するもの。
(2)経営学部を卒業した者が、コンピューター関連サービスを業務内容とする企 業との契約に基づき、翻訳・通訳に関する業務に従事するもの。
(3)法学部を卒業した者が、法律事務所との契約に基づき、弁護士補助業務に従 事するもの。
(4)教育学部を卒業した者が、語学指導を業務内容とする企業との契約に基づき、 英会話講師業務に従事するもの。
(5)工学部を卒業した者が、食品会社との雇用契約に基づき、コンサルティング 業務に従事するもの。
(6)経済学部を卒業した者が、ソフトフェア開発会社との契約に基づき、システ ムエンジニアとして稼働するもの。

 

参考条文:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成二年法務省令第十六号)

法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動

 

申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第九十八条に規定する国際仲裁事件の手続等及び国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。

 

~国際業務は省略

 

 

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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