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外国法人による日本(法人)への投資で、外為法手続無しで設立した場合の違反

2025年03月05日

会社設立、投資

外国法人による日本(法人)への投資で、外為法手続無しで設立した場合の違反

内容

外国法人による日本(法人)への投資と外為法手続の重要性

1. 対内直接投資の届出違反が問題となるケースとは?

2. 違反があった場合の刑罰面の対象者

3. 事前届出と事後報告の違反範囲が拡大され、知らぬ間に刑事処分や行政処分対象に

4. 外為法違反を防ぐために必要なこと

5. 外為法・対内直接投資違反の罰則のまとめ

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外国法人による日本(法人)への投資と外為法手続の重要性

外国法人や外国人個人(以下、総称して「外国投資家」といいます。)が日本や日本法人に投資を行う場合、一定の要件を満たすと「対内直接投資」として、外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づく手続が必要となります。具体的には、事前届出や事後報告が義務づけられるケースがあります。

しかしながら、これらの手続きを怠ったり、誤った手続きを行ったまま会社を設立したりすると、外為法の違反となり、刑事罰などの制裁が科される可能性があります。本コラムでは、「誰がどのような形で処罰の対象となり得るのか」を中心に解説いたします。


1. 対内直接投資の届出違反が問題となるケースとは?

対内直接投資手続の概要

  • 外国投資家が日本企業への出資、あるいは日本で新たに法人を設立する場合などは、外為法上の「対内直接投資」に該当する可能性があります。
  • 政府の安全保障上の観点、産業保護などの観点から、特定の業種・事業形態に該当する場合は事前届出が必要となり、そうでない場合でも事後報告が求められることがあります。

違反となる行為

  • 事前届出義務のある投資を事前届出せずに実行
  • 事後報告義務を怠ったまま設立や出資を完了させる
  • 提出が必要な書類に虚偽の記載をする
  • 届出や報告期限の大幅な遅延 等

業種判断と届出制度概要の図表

ダイアグラム が含まれている画像

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

出典:経済産業省、https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushikanri1.pdf

  • 2. 違反があった場合の刑罰面の対象者

外為法違反が認定される場合、処罰対象となるのは大きく以下の3つに区分できます。

1) 外国投資家本人

  • 外国法人または外国人個人(日本国内に居住する、しないを問わず)
  • 投資主体である「外国投資家」自身が、外為法上の手続きを行わずに投資を行った場合、当然ながら処罰対象になります。
  • 「日本で会社を設立する」場合は、設立に際して必要となる手続を法定の手順で行わない限り、設立後に問題が発覚すると刑事罰や行政処分を受けるリスクがあります。

2) 外国投資家の代理人

  • 対内直接投資の手続を代理する者が対象となる場合
  • ここでいう代理人は、民法上の代理人(たとえば設立手続に関わる司法書士など)とは必ずしも同一ではない点に注意が必要です。
  • あくまで外為法に基づく対内直接投資の届出・報告の代理権限を有する者が、手続きを怠った場合、罰則適用の可能性が生じます。
  • ただし、代理人が「そもそも外為法の存在を知らなかった」「外国投資家と適切な連絡を取っていたが投資家が協力しなかった」など、事案によって責任の範囲は異なります。詳細な責任分担はケースバイケースで判断されますので、注意が必要です。

3) 共犯等(共同正犯・教唆犯・ほう助犯)

実際の刑事責任においては、単独犯だけでなく、他の関係者が「共犯」として処罰対象となる可能性もあります。刑法の一般原則が適用されるため、次のようなかたちで処罰されることがあります。

  1. 共同正犯(きょうどうせいはん)
    • 正犯(主体的に外為法違反行為を行う者)と共謀のうえ実行した者がこれに該当します。
  2. 教唆犯(きょうさはん)
    • 違反行為(例:事前届出の未履行)をそそのかし、実行を決意させた者が該当します。
    • 外為法における不作為犯という観点で適用されるかどうかは専門家に確認が必要です。
  3. ほう助犯(従犯)
    • 外為法違反の実行を容易にした場合に該当します。
    • 例としては、外国投資家が違法な手続きを行うと知りながら資金移動を手助けしたり、虚偽の届出書類を作成する際に積極的に手伝ったりする行為などが考えられます。

3. 事前届出と事後報告の違反範囲が拡大され、知らぬ間に刑事処分や行政処分対象に

近年、届出対象業種が軍事転用に直接関わらない範囲にも広がっています。サプライチェーンやサイバーセキュリティ政策での事前届出対象業種の範囲が広くなり、無届に該当することが多くなりました。その場合、以下の罰則があります。

a.事前届出違反:3年以下の懲役若しくは100万円から投資額の3倍以下の罰金又はその併科

b. 事後報告違反:1年以下の懲役若しくは50万円から投資額の3倍以下の罰金又はその併科

 

仮に虚偽の内容を届出した場合、代理人も含め、外為法違反に対する刑罰は「1億円の罰金」等にのぼってしまう罰金の計算が規定されています。

さらに、刑事罰とは別に、行政処分や日本国内での事業活動における信用失墜リスクも生じるため、企業経営のみならず、個人の社会的信用にも大きな影響を与えるおそれがあります。


4. 外為法違反を防ぐために必要なこと

  1. 投資計画の早期段階での確認
    • 「投資する日本企業の業種は外為法における規制対象か?」「事前届出が必要な事業分野ではないか?」といった点を、早期に専門家へ相談し、正確に把握することが重要です。
  2. 適切なスケジュール管理
    • 「届出から実際の投資実行(資本金払込や登記申請など)」までの日程を逆算し、必要な期間を確保してください。
    • 事前届出が必要なケースでは、所定の審査期間(原則30日程度/延長もあり、二回目の届出等では短縮される場合もあり)を考慮する必要があります。
  3. 信頼できる専門家への依頼
    • 外為法手続きを理解している行政書士等に相談し、必要書類の作成から審査機関とのやりとりまでを適切に行うことが肝要です。
    • 特に外国投資家にとって日本の法令は複雑に感じられる場合が多いため、日頃からサポート体制を整えておくと安心です。
  4. 社内コンプライアンス体制の確立
    • 国際取引や外国資本が絡む事案においては、社内で外為法を含む各種規制の遵守を管理・監督する体制があるかどうか確認することも大切です。

5. 外為法・対内直接投資違反の罰則のまとめ

外国法人や外国人個人が日本に新たな法人を設立したり、日本法人に出資したりする際、外為法上の「対内直接投資」に該当する場合は適切な事前届出事後報告が求められます。これらを怠った場合、外国投資家本人はもちろん、代理人や手続に深く関与した関係者が共同正犯・教唆犯・ほう助犯などとして刑事罰の対象になり得る点に十分な注意が必要です。

違反が発覚すると、企業イメージの失墜のみならず、刑事罰や業務上の重大な支障が生じる恐れがあります。特に日本企業を傘下に収めるケースでは、日本国内の事業展開にとって大きなリスクとなるでしょう。

行政書士法人としても、これら手続に関する事前の法的チェックや必要書類の作成・届出代行など、トータルサポートを提供しています。投資計画の初期段階から、ぜひ専門家の力を活用いただき、適正な手続を踏むことで安心して日本でのビジネス活動をスタートしていただければと思います。


谷島行政書士法人のサービス

以下の対応が必要でしたらお声がけください。

  • 外国為替及び外国貿易法における対内直接投資の手続き
  • 事前届出・事後報告に関するサポート
  • コンプライアンス体制の構築支援 等

詳しくは谷島行政書士法人までお気軽にご相談ください。専門のチームがスムーズな投資実現をご支援いたします。

(本記事の記載内容は執筆時点の一般的な情報をもとにしています。最新の法令改正・運用状況などにより要件が変更されることがあるため、実際の投資・手続については必ず弊社や関係機関にご確認ください。)

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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