谷島行政書士法人グループ

お問い合わせ
Language

【その3】高度専門職1号の転職や会社設立のための問題と、永住その他の在留資格変更による解決の模索

2025年05月31日

永住高度専門職ビザ会社設立、投資

【その3】高度専門職1号の転職や会社設立のための問題と、永住その他の在留資格変更による解決の模索

【Q5】高度専門職の在留資格では自ら会社を設立することができると伺いました。この会社設立は一般会社の設立条件と同じ、経営管理の在留資格を取得するための会社設立に資本金等色々な条件が設けられる点とは違うと思いますが、どのような制限がありますか?

【Q6】例えば私が自らの会社を設立してその後会社を辞めた場合、或いは会社を辞めて会社を設立する場合、自らの会社を経営するためには何の在留資格を取得できますか?

【Q5】高度専門職の在留資格では自ら会社を設立することができると伺いました。この会社設立は一般会社の設立条件と同じ、経営管理の在留資格を取得するための会社設立に資本金等色々な条件が設けられる点とは違うと思いますが、どのような制限がありますか?

回答: 「高度専門職1号ロ」の在留資格で自ら会社を設立し、その経営に携わることについて、正確にはいくつかの側面があります。

  • 高度専門職の活動範囲:
    • 「高度専門職」の在留資格は、ポイント制に基づき、高度な専門的・技術的能力を持つ外国人の日本での活動を促進するためのものです。高度専門職1号ロは「日本の公私の機関との契約に基づいて行う業務に従事する活動」と定義されていますが、高度専門職は複合的な活動を行うことが認められており、その中には、関連する事業の経営を行うことも含まれると明示されています。そのように、他の在留資格で認められている活動の一部(例:経営・管理など)を、別途「資格外活動許可」を取得することなく行うことも可能です(法務大臣が指定する範囲内)。
  • 「経営・管理」との違いと制限:
    • 「経営・管理」の在留資格は、日本で事業の経営や管理を行うためのもので、その要件として、原則として事業所が確保されていること、500万円以上の資本金の投資または常勤職員2名以上の雇用などが定められています。
    • 一方、「高度専門職」の場合、自ら設立した会社で活動を行う際に、「経営・管理」のような厳格な規模要件、すなわち雇用や資本金要件が直接的にありません
    • さらに、関連する事業が高度専門職1号又は2号ロの場合は、高度な「自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務」であるか否かの是非はあります。この点、「我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの」という広く解釈できる要件があります。もし日本の学術研究に関係がないとしても、経済発展に関係ないものは資格外活動違反を構成します。
    • 最低限でも、高度専門職で自身の会社を設立する場合、その事業は以下が必要となります。
      1. イロハの各号に関する関連性(例:ロの場合、「自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務」)の関連
      2. 「我が国の経済発展」に資する事業であること

会社の事業内容と、高度専門職としての関連性が重要な判断基準となり、それが外国のみの経済発展に資するものでもあってはなりません。

  • 入管法参照法令(筆者加筆あり)
高度専門職一 高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う①次のイからハまでのいずれかに該当する活動であつて、②我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるものイ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動

【Q6】例えば私が自らの会社を設立してその後会社を辞めた場合、或いは会社を辞めて会社を設立する場合、自らの会社を経営するためには何の在留資格を取得できますか?

回答:ご自身で会社を設立し、その会社の経営を主たる活動とする場合、そのままでは資格外活動違反となります。

まず、一般的には「経営・管理」の在留資格を取得することになります。

さらに「高度専門職1号ハ」も考えられます。高度専門職1号ハの場合でも、「経営・管理」(「法律・会計」の場合不要。)に応じた規模要件、つまり資本金、さらに事業所要件などに関する提出資料も出すことになります。

本邦において行おうとする活動に応じて、入管法施行規則別表第3の「教授」から「報道」まで又は「経営・管理」から「技能」までのいずれかの在留資格の項の下欄に掲げる資料(各在留資格の案内ページから提出書類を御確認ください。)

入管庁HP、https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities02_00004.html

経営・管理事業規模を明らかにする次のいずれかの資料(1)常勤の職員が二人以上であることを明らかにする当該職員に係る賃金支払に関する文書及び住民票その他の資料(2)登記事項証明書 1通(3)その他事業の規模を明らかにする資料 1通事務所用施設の存在を明らかにする資料(1)不動産登記簿謄本 1通(2)賃貸借契約書 1通(3)その他の資料 1通

入管庁HP、https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/businessmanager.html

結局、「経営・管理」の資料をほとんど提出するので、経営・管理を最初に取得することが王道です。

  • 会社を辞めてから会社を設立する場合:
    • 現在の会社を退職された後、新たな活動としてご自身の会社設立・経営を目指す場合、日本に継続して滞在するためには、原則として現在の「高度専門職」の在留資格を維持しながら(ただし、3ヶ月経過後の取り消しリスクに注意が必要)、会社設立の準備を進め、準備が整い次第、「経営・管理」の在留資格への変更許可申請を行うという流れになります。
  • 「経営・管理」に関する会社設立の要件(資本金500万円以上、事業所の確保など)を満たしつつ、事業計画書その他資料で事業の適法性・安定性・継続性を示す資料を提出して申請することになります。
  • 自らの会社を設立してその後会社を辞める場合(並行して行う場合):
    • 上記方法では、退職後の3か月経過があり得るため、その時の「経営・管理」不許可のリスクが大きいです。

そのため、安全なやり方は高度専門職で活動しながら、設立および「経営・管理」の申請を行うことです。許可される時には勤務先を辞める計画となります。

  • 現在の会社に在籍中にご自身の会社を設立し、並行して活動を開始することは資格外活動違反となることがあります。したがって、準備行為にとどめ、可能なら「代表者」を他のパートナーなどにする必要があります。これは一時的な措置でも可能であり、「経営・管理」の時に解説します。

そのうえで、主たる活動がどちらになるか、また、設立する会社の事業及び経営活動内容が重要になります。

  • もし、設立した会社の活動が「高度専門職」としての関連活動範囲に含まれるものであれば、現在の「高度専門職」の在留資格のまま、入管に「所属機関に関する届出」(新たな所属先として自身の会社を追加する等)を行うことで対応できる可能性があります。しかし、転職すると、主たる活動である「高度専門職」の活動をやめてしまうことになり、その関連経営活動まで資格外活動違反となります。
  • 上記から、どの順番でも、やはり「経営・管理」の在留資格への変更が必要となるため、設立スケジュールが異なると考えればよいです。

結論として、ご自身で設立された会社を経営することを主たる活動とする場合は、「経営・管理」の在留資格が最も適切であり、その要件を満たす必要があります。 

設立する会社で、「高度専門職」としての高度な専門性を活かした事業を関連して行うような場合は、例外的に「高度専門職」の在留資格を維持できる可能性もゼロではありませんが、変更許可申請とその許可の前に転職する場合は資格外活動違反となります。

以上、ご質問に対する現時点での回答となります。

退職の前と後の手続き、次のご活動、永住権申請、会社設立など、いずれも今後の日本での生活に関わる重要なご判断となります。

「経営・管理」または「高度専門職1号ハ」をご検討される場合は、具体的な状況(設立予定の会社の事業内容、今後の収入見込みなど)を踏まえるヒアリングが必要です。

実際の手続きに進む場合のサポートが必要であれば、お申し付けください。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
▶ご依頼、セミナー、取材等のお問合せはこちら

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
03-5575-5583に電話をかける メールでお問い合わせ
ページトップへ