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永住権取得の徹底解説シリーズその4(令和6年改正入管法対応)

2025年05月19日

永住

永住権取得の徹底解説シリーズその4(令和6年改正入管法対応)

永住申請 (Step 4):素行善良要件と、それを兼ねる国益要件の詳細

Step 1でふれた素行善良要件とそれに関する国益適合要件について、外国人従業員や企業ご担当者様が特に留意すべき点を掘り下げて解説します。

内容

素行善良要件に関する全体像

交通違反・罰金刑等処分歴の前科前歴

素行善良と国益適合を兼ねる要件詳細(在留期間と公的義務の履行等)

必要な在留年数

最長の在留期間

近隣との問題・感染症などの公衆衛生

公的義務の履行

 

素行善良要件に関する全体像

法令遵守は、日本で生活する上で外国人・日本人に関わらず当然の義務ですが、永住申請においては過去の行動が厳しくチェックされます。

  • 日本の法令遵守: 軽微な交通違反(駐車禁止など)が数回程度であれば直ちに不許可となる可能性は低いですが、飲酒運転や無免許運転などの重大な交通違反、あるいは刑事罰を伴う犯罪歴がある場合は、許可を得ることは極めて困難になります。過去に罰金刑や懲役刑を受けたことがある場合は、刑期満了から一定期間が経過していることや、その後の改善状況などが考慮されますが、慎重な判断が必要です。
  • 入管法上の義務履行: 在留カードの不携帯、住所変更の届出遅延、資格外活動許可の違反などは、入管法上の義務違反となります。軽微な違反であっても繰り返している場合や、悪質な違反と判断される場合は、永住申請に影響します。
  • 過去の在留状況: 過去に不法残留や強制退去歴がある場合、原則として永住許可は得られません。ただし、過去に在留特別許可を得たことがある場合など、個別の事情によっては許可される可能性も十分あります。実際、谷島行政書士法人グループでは、いくつか許可実績もあります。
  • 前科等により上陸拒否となった後に特例で許可された外国人:過去に犯罪歴があり、上陸拒否特例でまた日本に戻ってきた方でもあきらめないでください。これも谷島行政書士法人グループでは許可実績があります。

企業としての留意点: 企業は、外国人従業員に対し、日本の法令や社会のルールを遵守することの重要性を日頃から指導・啓発することが望ましいでしょう。特に、業務範囲の資格外活動、交通違反や入管法上の義務(住所変更手続きなど)については、具体的な情報提供や注意喚起を行うことが、従業員の永住申請におけるリスク軽減に繋がります。

 

交通違反・罰金刑等処分歴の前科前歴

罰金刑や懲役刑などを受けていないことは、そもそもの対象範囲の理解が重要であり、以下の通りさらに解説します。

まず、刑法改正で懲役刑は拘禁刑という名称に変わりましたが、執行猶予でもそれを満了し遡って消滅するまでは不許可になり得るため、注意が必要です。

次に、罰金刑は、交通違反でもそれがスピード違反等の一定のものが致命的となるため、ご注意ください。なお、罪の消滅には既定の年数があります。

 

素行善良と国益適合を兼ねる要件詳細(在留期間と公的義務の履行等)

国益適合要件は多岐にわたりますが、特に企業ご担当者様が確認すべき点として、「必要な在留期間を満たしているか」と「公的義務を適切に履行しているか」があります。

 

必要な在留年数

Step 2で解説した通り、永住申請には原則として10年以上の在留期間が必要ですが、身分系の在留資格や高度人材の特例など、例外的に短い期間で申請可能なケースがあります。従業員の方がどのケースに該当し、必要な在留期間を満たしているかを確認することが第一歩です。また、「引き続き」という点が重要であり、長期の海外滞在期間がある場合は、その期間が継続在留期間に算入されるか否かを確認する必要があります。

    最長の在留期間

    現に有する在留資格について、最長の在留期間(3年又は5年)を付与されていることが必須です。

      近隣との問題・感染症などの公衆衛生

      近隣との問題を抱えている方や、感染症への罹患など公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないことなどについても考慮されます。

       

      公的義務の履行 

      • 納税: 所得税、住民税だけでなく、個人事業主の場合は消費税や個人事業税なども対象となります。会社経営者の場合は、会社の法人税なども考慮されることがあります。
      • 社会保険: 公的年金(厚生年金、国民年金)と公的医療保険(健康保険、国民健康保険)の保険料納付状況が確認されます。従業員が企業に雇用されている場合は、厚生年金と健康保険に加入していることが一般的ですが、国民年金や国民健康保険に加入していた期間がある場合は、その期間の納付状況も確認が必要です。
      • 国民年金と国民健康保険の注意点: 企業にお勤めの場合、これらの保険料は給与天引きされるため、原則として未納の心配はありません。しかし、転職期間中や、雇用形態によっては国民年金・国民健康保険に自身で加入・納付する必要がある場合があります。これらの期間に納付漏れがないか、本人が気づいていないケースもあるため、丁寧に確認する必要があります。特に、2019年の永住ガイドライン変更以降、社会保険料の未納・滞納に対する審査は非常に厳格化されています。たとえ数ヶ月の未納であっても、不許可になる可能性が高いため、過去の納付記録を必ず確認する必要があります。

      公的義務不履行への対処:過去に公的義務の不履行があった場合でも、その事実を隠さずに申請し、なぜ不履行に至ったのか、現在はどのように改善したのかを正直に説明することが重要です。例えば、納税や社会保険料の未納があった場合、全額を速やかに納付した上で、納付が遅れた理由(病気、会社の倒産などやむを得ない事情)や、今後は適切に履行することを誓約する旨を記載した理由書を提出するなど、真摯な対応が求められます。ただし、正当な理由がない単なる懈怠(けたい:なまけて義務を怠ること)と判断される場合は、許可を得ることは難しいでしょう。

      企業ご担当者様へのアドバイス: 企業として、外国人従業員の皆様がこれらの公的義務を適切に履行できるよう、必要な情報の提供や手続きに関するサポートを行うことが望ましいです。例えば、年末調整や確定申告、社会保険に関する手続きについて、社内で情報共有の機会を設けたり、必要に応じて専門家(税理士や社会保険労務士)への相談を促したりすることが考えられます。

      この記事の監修者

      谷島亮士
      谷島亮士
      谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
      ・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
      - 講師実績
      行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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       - 資格等
      特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

      - 略歴等
      ・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
      ・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
      ・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
      ・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

      - 取引先、業務対応実績一部
      ・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
      ・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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