【その1】高度専門職1号の転職や会社設立のための問題と、永住その他の在留資格変更による解決の模索
2025年05月31日
永住高度専門職ビザ会社設立、投資
【その1】高度専門職1号の転職や会社設立のための問題と、永住その他の在留資格変更による解決の模索

ご質問いただいた各事項について、3つに分けて以下の通り説明していきます。今後のご判断の参考になりましたら幸いです。
【Q1】仮に私が3か月の試用期間後会社を辞めた場合、入管に申告しなくてはなりませんか? 高度専門職の在留資格はどうなりますか? どれくらい日本に滞在できますか?
【Q2】、一方で私が辞めた場合、入管に関し会社は何らかの影響を受けますか?
【Q1】仮に私が3か月の試用期間後会社を辞めた場合、入管に申告しなくてはなりませんか?
高度専門職の在留資格はどうなりますか?
どれくらい日本に滞在できますか?
回答:
a.会社を退職された場合、出入国在留管理庁(以下「入管」といいます)への届出義務があります。
b.高度専門職の転職は、在留資格変更許可申請の必要が生じます。
c.滞在期間は、在留資格取消し処分との関係で解説します。
入管への申告(届出)義務について
- 退職した場合、所属機関(勤務先)との関係がなくなった日から14日以内に入管へ届け出る必要があります。これは、中長期在留者としての義務です。
- 根拠法令: 出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます)第19条の16第1号
(活動に関する届出等) 第十九条の十六 中長期在留者(第十九条の三各号に掲げる者を除く。)は、次に掲げる事由が生じたときは、それぞれ当該事由が生じた日から十四日以内に、出入国在留管理庁長官に対し、法務省令で定める手続により、その旨(第一号に掲げる事由にあつては、当該中長期在留者の氏名及び性別並びに当該事由の内容を含む。)を届け出なければならない。 一 所属機関の名称若しくは所在地が変更したとき又は当該所属機関が消滅したとき。 |
高度専門職からの在留資格変更許可申請の要否
在留資格「高度専門職1号ロ」は、特定の高度な専門的・技術的能力を持つ方が、日本の公私の機関との契約に基づいて行う業務に従事する場合に認められるものです。会社を退職されると、この「公私の機関との契約に基づいて行う業務に従事する」という活動が終了するため、在留資格変更許可申請が必要になります。
これは事前の手続であるため、先に転職を実行すると「資格外活動違反罪」及び資格外活動違反による退去強制などの行政処分を受ける可能性があります。
日本に滞在できる期間、在留資格取消し処分との関係
在留カードには5年という在留期間が記載されていますが、これはあくまで「最長」滞在できる意味で許可された期間です。退職後、正当な理由なく3ヶ月以上、現在お持ちの「高度専門職1号ロ」の在留資格に係る活動(日本の公私の機関との契約に基づく業務)を行わないでいると、入管は在留資格を取り消しの対象とすることができます。
- この「正当な理由」には、次の就職先を探している期間などが含まれると考えられますが、明確な期間の定めはありません。
- 3ヶ月を超えても活動を行わない場合は、入管から活動状況等に関する説明を求められたり、在留資格取消しの処分手続が進められたりするリスクがあります。
したがって、退職後も日本に滞在を続けるためには、原則として3ヶ月以内に次の勤務先を見つけ、入管に届け出るか、または別の適切な在留資格への変更許可を受ける必要があります。
それができない場合は、今後不許可処分のリスクがあるため、正当な事由を立証することになります。
- 根拠法令: 入管法第22条の4第1項第6号
(在留資格の取消し) 第二十二条の四 出入国在留管理庁長官は、次に掲げる場合には、中長期在留者(在留期間が三月以下の者及び第十九条の三各号に掲げる者を除く。)が有する在留資格を取り消すことができる。 略六 当該中長期在留者(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等又は定住者の在留資格をもつて在留する者を除く。)が、正当な理由がある場合を除き、本邦に継続して三月以上在留する者にあつては在留資格に応じた活動を、本邦に継続して三月以上在留しない者にあつては上陸許可、在留資格の変更許可又は在留期間の更新許可を受ける際に申し出た活動を行つていない場合 |
2、一方で私が辞めた場合、入管に関し会社は何らかの影響を受けますか?
回答:勤務していた会社も入管への届出義務があります。
会社(所属機関)の届出義務について
会社は、雇用していた外国人従業員(中長期在留者)が退職・解雇などにより、所属機関でなくなった場合、その事実があった日から14日以内に入管に届け出る義務があります。
- この届出は、外国人雇用状況届出をしている場合、不要となります。
- 根拠法令: 入管法第19条の7第1項
(所属機関による届出) 第十九条の七 本邦の公私の機関の事業所の職員は、当該機関との契約に基づき当該事業所において活動を行つている中長期在留者が当該機関から離れたとき(当該中長期在留者との契約が終了した場合を含む。)は、その者が当該機関から離れた日から十四日以内に、出入国在留管理庁長官に対し、法務省令で定める手続により、その旨を届け出なければならない。 |
会社への影響について
単に従業員が退職したという事実自体が、会社の入管に関する手続きや信用に直ちに大きな悪影響を与えることは通常ありません。多くの会社で従業員の入れ替わりは自然に発生するためです。
- しかし、本件の申請人が会社と通謀し、すぐ辞めることを約束して、いわばビザのための雇用契約を交わした場合、刑罰と行政処分を受ける可能性があります。刑罰としては、在留資格不正取得罪などのおそれがあります。
- 上記の不正な在留資格取得で無かった場合、つまり後発的で共謀もない場合などで、会社が上記の届出義務を怠った場合や、過去に雇用した外国人について問題が繰り返し発生しているような場合は、今後の外国人雇用に関する手続き(在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新申請など)において、審査がより慎重になったり、企業の信頼性が問われたりする可能性は否定できません。
- 御社の場合は、適切に届出を行えば、今回の件が将来の入管手続きに不利に働く可能性は低いと考えられます。
▶その2(新しい就職先が見つかり内定後、変更手続きをして在留資格を取得する以外に日本に滞在する方法はない?など) へ続きます。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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