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【外為法の無届リスク解説】直接投資の違反調査、罰則や株式持分措置命令、事案調査票フォームまで

2025年08月28日

コンプライアンス会社設立、投資許認可

【外為法の無届リスク解説】直接投資の違反調査、罰則や株式持分措置命令、事案調査票フォームまで

内容

財務省による外為法のモニタリングとは?

外為法違反が判明した場合の措置

外為法違反には厳しい罰則も

参考:事案調査表の提出フォーム

まとめ:外為法に関するお悩みは、専門家にご相談ください



海外からの投資・M&Aを受ける際や、外国企業との取引を行う上で遵守が必須となる「外国為替及び外国貿易法(外為法)」。しかし、その手続きの複雑さから、意図せず違反してしまうケースも少なくありません。

外為法に違反した場合、企業の信頼失墜に繋がるだけでなく、厳しい罰則を科されるリスクも伴います。

本記事では、財務省による外為法のモニタリング体制や、違反が判明した場合の具体的な措置、そしてその罰則について、専門家の視点から分かりやすく解説します。

財務省による外為法のモニタリングとは?

「うちの会社は大丈夫だろうか?」と思われている方もいるかもしれませんが、財務省は常に外為法の遵守状況を監視(モニタリング)しています。

財務省は、外国投資家による対内直接投資などが、外為法に定められたルール通りに行われているかを確認しています。これには、事前の届出義務がきちんと果たされているか、また、事前届出が免除される基準を満たしているかといった点が重点的にチェックされます。

モニタリングは、発行会社や一般からの情報提供なども基に行われます。そして、違反の疑いがある場合には、財務大臣及び事業所管大臣が報告徴収命令などの権限を行使することもあります。

つまり、「バレなければ大丈夫」ということは決してなく、常に当局の監視下にあるという意識を持つことが重要です。

外為法違反が判明した場合の措置

もし、事前届出を行わずに海外からの投資を受け入れるなど、外為法違反が判明した場合はどうなるのでしょうか。

財務省への報告

違反が判明した場合、まずは速やかに財務省へ連絡し、指定された「事案調査票」を作成・提出する必要があります。

措置の決定

報告後、財務省および事業所管省庁は、違反の内容や態様を精査し、外為法に基づく措置を講じるかどうかを決定します。その場合、行政処分である「措置命令」もあります。株式の売却命令などが挙げられます(外為法第29条)。

その際、以下のような点が総合的に考慮されます。

  • 違反の意図: 意図的か、過失によるものか
  • 発覚の経緯: 自主的な申告か、外部からの指摘か
  • 申告の迅速さ: 違反を認識してから速やかに報告したか
  • 隠蔽行為の有無: 違反の事実を隠そうとした形跡はないか
  • 違反の反復性: 過去にも同様の違反がなかったか

特に、意図的な違反や隠蔽行為など、悪質と判断された場合には、中止・変更命令といった厳しい措置が講じられる可能性が高まります。

根拠となる行政文書

提出いただいた事案調査票に関する事項について、財務省又は事業所管省庁より、提出者又は調査票記載の代理人に連絡させていただく場合があります。また、財務省及び事業所管省庁は、違反行為の内容や態様に応じて、外為法第29条第1項に基づく措置その他の必要な措置を講ずる場合があります。財務省及び事業所管省庁による必要な措置の決定にあたっては、違反行為が意図的に行われたものかどうか、違反が発覚した経緯(自主的な申告か、当局による指摘か)、違反行為を認識した後当局に直ちに申告したか、違反行為の隠蔽行為がなかったか、反復・継続して違反行為が行われたかなどの違反行為の情状も考慮することとし、悪質と認める場合は厳しい措置を講ずることとしています。

財務省、https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/monitoring_2.html

根拠法令

外為法(抄)   (措置命令) 第二十九条 財務大臣及び事業所管大臣は、次に掲げる場合において、対内直接投資等又は特定取得が国の安全等に係る対内直接投資等又は国の安全に係る特定取得に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家に対し、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得により取得した株式又は持分の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。 一 第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をしなければならない外国投資家が、当該届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行つた場合 二 第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をした外国投資家が、禁止期間の満了前に、当該届出に係る対内直接投資等又は特定取得を行つた場合 2 財務大臣及び事業所管大臣は、第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をした外国投資家が、当該届出に関し虚偽の届出をした場合において、当該届出に係る対内直接投資等又は特定取得が国の安全等に係る対内直接投資等又は国の安全に係る特定取得に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家に対し、政令で定めるところにより、必要な措置を命ずることができる。 3 財務大臣及び事業所管大臣は、第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をした外国投資家が、第二十七条第七項(第二十八条第七項において準用する場合を含む。)の規定により応諾する旨の通知をした対内直接投資等若しくは特定取得に係る内容の変更の勧告に従わず、又は第二十七条第十項(第二十八条第七項において準用する場合を含む。)の規定による対内直接投資等若しくは特定取得に係る内容の変更の命令に違反した場合には、当該対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家に対し、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得により取得した株式又は持分(第二十七条第五項若しくは第二十八条第五項の規定により当該対内直接投資等若しくは特定取得に係る株式の数若しくは金額若しくは持分の口数若しくは金額の変更を勧告した場合における当該変更に係る部分又は第二十七条第十項(第二十八条第七項において準用する場合を含む。)の規定により当該対内直接投資等若しくは特定取得に係る株式の数若しくは金額若しくは持分の口数若しくは金額の変更を命じた場合における当該変更に係る部分に限る。)の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。 4 財務大臣及び事業所管大臣は、第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をした外国投資家が、第二十七条第七項(第二十八条第七項において準用する場合を含む。)の規定により応諾する旨の通知をした対内直接投資等若しくは特定取得の中止の勧告に従わず、又は第二十七条第十項(第二十八条第七項において準用する場合を含む。)の規定による対内直接投資等若しくは特定取得の中止の命令に違反した場合には、当該対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家に対し、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得により取得した株式又は持分の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。 5 財務大臣及び事業所管大臣は、第二十七条の二第一項又は前条第一項の規定により第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行つた第二十七条の二第一項又は前条第一項に規定する外国投資家が、第二十七条の二第四項又は前条第四項の規定による命令に違反した場合であつて、当該対内直接投資等又は特定取得が国の安全等に係る対内直接投資等又は国の安全に係る特定取得に該当すると認めるときは、関税・外国為替等審議会の意見を聴いて、当該対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家に対し、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得により取得した株式又は持分の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができる。 6 第一項第二号の「禁止期間」とは、第二十七条第二項本文に規定する期間(同条第三項若しくは第六項の規定により延長され、又は同条第二項ただし書若しくは第四項の規定により短縮された場合には、当該延長され、又は短縮された期間)又は第二十八条第二項本文に規定する期間(同条第三項若しくは第六項の規定により延長され、又は同条第二項ただし書若しくは第四項の規定により短縮された場合には、当該延長され、又は短縮された期間)をいう。 (技術導入契約の締結等の届出及び変更勧告等) 以下略

外為法違反には厳しい罰則も

外為法に違反した場合、措置命令だけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。

個人の場合は「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」、法人の場合は行為者を罰するほか「1億円以下の罰金」が科されるなど、非常に厳しい罰則が定められています。

これらの罰則は、企業の経済的な損失はもちろん、社会的な信用を大きく損なうことにも繋がりかねません。

参考:事案調査表の提出フォーム

事案を財務大臣及び事業所管大臣宛に提出します。この時提出する書面は「事案調査票」と呼ばれ、そのフォームは以下の通りです(2025年8月20日時点)。 https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/monitoring_2.html

事案調査表

違反者(外国投資家)の概要
氏名又は名称 
代表者の氏名 
国籍又は設立国 
職業又は営んで いる事業の内容 
ウェブページのURL 
代理人の氏名又は名称 
代理人の住所又は 主たる事務所の所在地 
代理人の連絡先 
2.違反行為の概要
(1)違反対象行為の概要
※違反があった事項(無届、免除事後報告の未提出、免除事後報告以外の事後報告書の未提出、届出を行った投資家による禁止期間満了前の実行等)について記載し、当該違反対象行為について具体的に記載すること。例えば、株式の取得であれば、当該取得の相手方、取得の方法、取得した時期及び数量、取得目的について特定して記載すること。違反行為が複数ある場合は、各違反行為ごとに時系列で記載すること。      
(2)違反行為が発覚した経緯
※発覚した経緯(弁護士の指摘、当局からの指摘)について、日時を特定したうえで具体的に記載すること。違反行為が複数ある場合は、各違反行為毎に時系列で記載すること。      
(3)社内の管理体制及び違反理由
違反対象行為の実施にあたって行われた社内の法務・コンプライアンス確認手続※違反行為が複数ある場合は、各違反行為毎に時系列で記載すること。
違反対象行為に関する社内管理体制がある場合はその内容 
違反の原因 
(4)同一の発行会社への対内直接投資等・特定取得等について過去に事前届出及び事後報告書を提出している場合は、届出書及び報告書の提出状況
※事前届出及び事後報告書の対象となる取引の概要、提出した届出及び事後報告書の種類、提出日(受理日)を時系列に従って記載すること。      
(5)過去5年間の対内直接投資等・特定取得等に係る違反案件の調査
※本調査票作成日の過去5年間の違反案件の調査を行った場合はその結果を記述すること。      
(6)過去5年間に違反行為があったことを理由として、財務省又は事業所管省庁に対して報告を行っている場合は、当該事案の概要及び当局に対して提出した再発防止策の概要
※財務省又は事業所管省庁に本調査票や事情説明書等を提出している場合は、当該書面をあわせて提出すること。            
3.違反行為の対象会社の概要   ※株式取得に係る違反行為であれば、株式の発行会社。金銭の貸付に係る違反行為であれば、貸付先の会社。
名称 
本店の所在地 
資本金額 
指定業種を営んでいる場合は、当該業務の内容 
4.再発防止策
       
【備考】
※その他記載すべき事項があれば記載。    

まとめ:外為法に関するお悩みは、専門家にご相談ください

ここまで見てきたように、外為法違反のリスクは決して軽視できるものではありません。財務省によるモニタリングは常時行われており、ひとたび違反が発覚すれば、事業の継続に大きな影響を及ぼす可能性もあります。

「この投資は届出が必要だろうか?」「手続きの進め方が分からない」など、少しでも不安に感じることがあれば、自己判断で進めてしまう前に、ぜひ一度、外為法務の専門家である谷島行政書士法人グループにご相談ください。

私たちが、貴社のビジネスを法務面から力強くサポートいたします。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


- 講師実績
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- 資格等

特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他


- 略歴等

・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


- 取引先、業務対応実績一部

・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他

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