【外為法事前届出】対内直接投資・株式取得の禁止期間
2025年08月28日
コンプライアンス会社設立、投資許認可
【外為法事前届出】対内直接投資・株式取得の禁止期間

内容
外国の投資家が日本の企業の株式を取得する場合など、「対内直接投資」に該当する取引を行う際には、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、原則として事前に財務大臣および事業所管大臣への届出が必要です。
この届出を行った後、実際に投資(株式取得など)を実行できるようになるまでには、法律で定められた「禁止期間」が存在します。この期間を正しく理解していないと、M&Aや資金調達のスケジュールに大きな影響を及ぼす可能性があります。
本ページでは、外為法の事前届出における禁止期間について、法律の原則と実務上のリアルな期間を分かりやすく解説します。
原則は「30日」の禁止期間だが、取り下げ指導でのやり直しも
外為法では、事前届出が受理された日から起算して30日間は、届出にかかる投資を行ってはならないと定められています(外為法第27条の3第2項)。
外為法 第27条の3 2 対内直接投資等について前項の規定による届出をした外国投資家は、財務大臣及び事業所管大臣が当該届出を受理した日から起算して三十日を経過する日までは、当該届出に係る対内直接投資等を行つてはならない。ただし、財務大臣及び事業所管大臣は、その期間の満了前に当該届出に係る対内直接投資等がその事業目的その他からみて次項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当しないと認めるときは、当該期間を短縮することができる。 |
条文だけを見ると「1か月待てばよい」と解釈しがちですが、実務上、30日で手続きが完了しないことも多分に留意すべきであり、行政書士も専門家であれば、依頼者に条文のまま伝えてはいいけません。
なぜ審査期間は長引くのか? 各省庁への実務上の注意点
では、なぜ30日以上かかることが多いのでしょうか。その理由は、届出前の「準備」と、届出後の「審査」の両方にあります。
準備・調査に約1か月
まず、届出書を提出する前の準備段階で相応の時間を要します。投資スキームの検討、必要書類の収集、当局への事前相談など、入念な準備と調査、関係者との打ち合わせを急いで行ったとしても、30日程度、あるいはそれ以上はかかると考えておくべきです。
しかも、打ち合わせすべき行政庁等は、窓口である日本銀行のほか、財務省、経済産業省が代表例であり、その他各省庁とのすべての事前確認をするかどうかの判断も重要です。
審査が30日で終わらないケース
無事に届出が受理されても、審査の過程で次のような状況が発生し、期間が延長されることが少なくありません。
- 当局からの質問が多い: 提出内容について省庁から多くの質問があり、その回答や追加資料の準備に時間がかかる。
- 事案が複雑: M&Aのスキームが複雑であったり、関係者が多かったりして、審査に慎重な検討を要する。
- 追加の審査資料が多い: 当局が審査すべき資料の量が多い。
このような場合、当局は30日という期間内で審査を完了することが困難になります。
「取下げ・再提出」という実務運用
審査が30日で終わらないと見込まれる場合、当局から「一度届出を取り下げ、準備が整い次第、再度提出してほしい」という指導が入ることが実務上よくあります。
これは、法律で定められた30日の審査期間を形式上遵守しつつ、実質的な審査時間を確保するための運用です。投資家側としては、この「取下げ・再提出」に応じることで、結果的に当初の想定よりも手続き全体の期間が長くなってしまうのです。
法律で認められた期間の延長(最大4か月)
さらに、国の安全等を損なう恐れがある対内直接投資等に該当しないかどうかを慎重に審査する必要があると判断された場合、行政の裁量によって禁止期間が延長されることがあります。
法律では、この勧告準備期間として、届出を受理した日から最大4か月まで禁止期間を延長できると定められています。
外為法 第27条の3 3 財務大臣及び事業所管大臣は、第一項の規定による届出があつた場合において、当該届出に係る対内直接投資等が次に掲げるいずれかの対内直接投資等(以下「国の安全等に係る対内直接投資等」という。)に該当しないかどうかを審査する必要があると認めるときは、当該届出に係る対内直接投資等を行つてはならない期間を、当該届出を受理した日から起算して四月間に限り、延長することができる。 |
結論:スケジュールは「2か月から4か月」で考えるのが安全
以上の点を踏まえると、外為法の事前届出が必要な対内直接投資を計画する場合、
- 届出前の準備期間:約1か月
- 届出後の審査期間(禁止期間):30日×2~3回
となり、全体としては「2か月から4か月」程度の期間を見込んでおくのが安全です。
「法律上は30日」という原則だけを頼りにタイトなスケジュールを組んでしまうと、M&Aのクロージング日に間に合わないといった事態になりかねません。
外為法の対内直接投資に関する手続きは、専門的な知識と実務経験が不可欠です。スムーズな手続きと確実なスケジュール管理のために、ぜひお早めに当法人までご相談ください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
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・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
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