インターンシップビザ(特定活動9号)の書類と要件ガイドライン徹底解説

2025年02月10日 特定活動
インターンシップビザ(特定活動9号)の書類と要件ガイドライン徹底解説
この解説でわかること/目次
(3)まとめ表:インターンシップビザ(特定活動告示9号)の書類と要件
(1) インターンシップ責任者、インターンシップ指導者の要件
1. インターンシップビザ(告示9号)とは?
インターンシップビザ(告示9号)は、外国の大学に在籍する学生が、日本の企業や団体で一定期間の実務研修を行うための特定活動ビザです。労働ではなく、大学の教育課程の一環として実施されるインターンシップに適用されます。
本ガイドラインは、適正なインターンシップの実施を促進し、企業が不適切にインターンシップ生を労働力として扱うことを防ぐために策定されました。
2. インターンシップの基本的な考え方
インターンシップは、学生が専攻分野と関連する業務を経験し、キャリア形成の一環として行われます。そのため、受入れ機関は教育目的を重視し、大学との連携を図りながら適正な研修体制を整備する必要があります。
3. インターンシップビザ(告示9号)の要件
(1) 申請者(インターンシップ生)の要件
• 外国の大学に在籍していること(学位の授与される教育課程に限る)
• 本邦入国時に18歳以上であること
• インターンシップが大学の教育課程の一部であること(専攻と関連がある)
(2) 受入れ機関(企業)の要件
• 大学と受入れ機関がインターンシップ契約を締結していること
• インターンシップ責任者を選任してインターンシップを統括管理させること
• 適切な指導体制を整えていること(指導員の配置など)
• 単なる労働ではなく、教育的目的があること
• 報酬の支払いその他条件、生活費負担等を明確に定めていること
(3) インターンシップの条件
• 期間は1年を超えないこと
• 通算して大学の修業年限の1/2を超えないこと
• 専攻と関連する業務であること(単純労働は不可)
• 報酬の支払いは可能だが、適正な金額であること
• 生活費の負担について明確化すること
4. 申請に必要な書類
(1) 在留資格認定証明書交付申請の共通書類
在留資格認定証明書交付申請書
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申請人の在学証明書
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写真(指定規格)
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返信用封筒
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(2) インターンシップ特定活動9号ビザ特有の書類
申請人の在学証明書
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大学と受入れ機関のインターンシップ契約書の写し
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大学の承認書・推薦状
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単位取得を証明する資料(インターンシップ実施計画):
上記(大学と本邦の公私の機関との間の契約)に併せて記載も可能
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活動内容・期間・報酬等の記載資料
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過去の在留歴を示す資料:
過去にインターンシップで日本に在留したことがない場合も含め、説明文書を提出
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修業年限を証明する資料
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(3)まとめ表:インターンシップビザ(特定活動告示9号)の書類と要件
提出書類 | 関係する要件など(ガイドライン) | 立証趣旨(証明する要件事実) |
外国の大学と日本の受入れ機関との間で交わしたインターンシップ契約書の写し |
□ 大学が正式に承認したインターンであること □ 企業が適切な研修計画を用意し、労働ではないこと |
□ 受入れ機関が適正な研修を提供し、申請人が単なる労働者ではないこと |
大学からのインターンシップ承認書・推薦状 |
□ 大学がインターンシップの意義を認めていること □ 教育課程の一部として実施されること |
□ インターンが学業の延長であり、大学の公式プログラムであること |
単位取得等の教育課程の一部として実施されることを証明する資料(インターンシップ実施計画) |
□ 学業の一環であることが明確であること □ 単位認定の有無が明記されていること |
□ インターンが大学のカリキュラムに組み込まれていることを証明 |
申請人の日本での活動内容・期間・報酬等の待遇を記載した資料 |
□ 適切な研修計画があること □ 報酬が単なる労働の対価ではないこと |
□ 1年以内 □ 通算して当該大学の修業年限の二分の一以内 |
申請人のインターンシップでの過去の在留歴を明らかにする資料 | □ 過去の在留歴が適正であること | □ 申請者が過去にインターンで日本に滞在したことがあるかどうかを確認し、適正な滞在であったかを立証 |
申請人の在籍する大学の修業年限を明らかにする資料 | □ 申請者が正規の学生であること | □ 通算して当該大学の修業年限の二分の一以内 |
その他ガイドラインに規定する項目に係る説明書(別添2参考様式) | □ インターンシップの適正性を詳細に説明 |
5. 受入れ企業の義務と指導体制
(1) インターンシップ責任者、インターンシップ指導者の要件
• 労働力確保の手段としてではなく、教育目的で受け入れること
• インターンシップ責任者の選任
インターンシップ責任者の要件は以下の通りです。
□ 5年以内の出入国法令又は労働法令の違反がないこと
□ インターンシップ責任者は以下の業務を統括管理すること
1. インターンシップ契約
2. 実施計画
3. 受け入れ準備
4. 生活支援
5. 労働条件・安全・衛生
6. 入管への連絡など
• インターンシップ指導員の配置
インターンシップ指導員の要件は以下の通りです。
□ 1年以上の業務経験が指導員となること
□ 介護のインターンシップ特有:1名以上の介護福祉士資格者が指導員となること
□ 実施の指導の他、実施計画の評価等をすること
□ インターンシップ責任者との兼任可能
□ 5年以内の出入国法令又は労働法令の違反がないこと
(2) 受入れ可能な人数
企業の規模に応じたインターンシップ生の受け入れ基準が設けられています。
• 常勤職員301人以上:常勤職員数×1/20
• 常勤職員201~300人:最大15人
• 常勤職員101~200人:最大10人
• 常勤職員100人以下:最大5人
6. 仲介事業者が不適切な場合のインターンシップビザの不交付
インターンシップビザは仲介事業者が支援や調整を行うことが可能です。この点、技能実習は監理団体のみが可能で、育成就労では監理支援機関のみが可能とされていることと大きな違いがあります。しかし、不適切である場合は受け入れ機関つまり企業も、不許可となり不利益を被ります。
例えば、下記(4)の契約とは、インターンシップ契約を指します。契約書にない制約をかけてインターンシップ生から搾取することなどが許されないことになります。例えば、“仲介事業者に支払った費用の全部又は一部がインターンシップ生に転嫁されるなど”といった、インターンシップ生にとって不利な扱いはすべて不適切な利用につながります。
インターンシップ特定活動9号ガイドライン:https://www.moj.go.jp/isa/content/930005575.pdf
受入れ機関において,インターンシップ生の受入れに関する大学との調整,出入国手続に際しての支援,入国後の生活支援等に関し仲介事業者を利用する場合には,以下の事項に留意してください。 なお,仲介事業者の不適切な利用が認められた場合,当該仲介事業者を利用して行うインターンシップに係る在留資格認定証明書交付申請等については,許可されないことがあります。
略
(1)仲介事業者において,支援業務等を適切に行う能力・体制が十分に確保され ていること。
(2)仲介事業者が,仲介に係る外国人の人権を著しく侵害する行為を行っていな いこと。
(3)仲介事業者又はその役員若しくはその職員が,過去5年以内に出入国又は労 働に関する法令の規定に違反していないこと。
(4)仲介事業者が,上記1(2)ウの契約に反する取決めをしていないこと。
(5)仲介事業者に支払った費用の全部又は一部がインターンシップ生に転嫁されるなど,インターンシップ生にとって不利益な取扱いが行われていないこと。
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7. 労働関係法令との関係
実態判断となりますが、インターンシップ生が受入れ機関の業務に従事し、指揮命令を受ける場合、「使用従属関係」がある場合は、労働基準法上の労働者に該当します。この場合、最低賃金法や労働条件の遵守が求められます。
すなわち、労働者性が認められるインターンシップとしての特定活動告示9号ビザを有する外国人及び使用者には、労働法令の適用があります。さらに外国人特有の状況を踏まえ、雇用契約の締結や外国人雇用状況の届出義務が発生するため、企業は十分な注意が必要です。
一方で、通常の労働者と異なるビザ特有の規制があります。例えば、夜勤やシフト制も可能ですが、例外的です。必要性がないと認められないこと、さらに指導体制も明確に立証が必要です。
8. 夜勤・シフト制の特有の立証資料
以下の内容を資料で明確化して立証することとなります。
(1)夜勤・シフトそのものの必要性
(2)指導体制
9. 技能実習1号がいる企業特有の立証資料
インターンシップ生と技能実習1号の合計が技能実習1号の受入人数枠を超える場合は、「技能実習制度の適切な実施を阻害しないこと」の立証が必要です。最低限、以下の資料を提出することとなります。
(1)インターンシップ生の指導体制
(2)カリキュラム
10. 介護インターンシップ特有の要件と立証資料
(1)実際にインターンシップを行う事業所ごとに,1名以上の介護福祉士の資格を有する指導員を配置していること。
(2)インターンシップ生5名あたり1名の指導員(介護福祉士の資格を有していない方を含む。)を配置していること。
(3)インターンシップ生を単独で介護業務に従事させないこと。
(4)インターンシップ生がN4相当程度の日本語能力を有していること。
上記立証資料として、試験による証明や日本語学習時間についての説明文書が必要です。
11.まとめ
インターンシップビザ(告示9号)は、外国の大学生が日本で実務経験を積むための重要な制度ですが、不適切な運用を防ぐため、厳格な要件が定められています。
□ まず、大学と企業の適切な契約が必須
□ 専攻と関連する業務に従事すること
□ 教育目的が明確であること
□ 報酬の支払いや労働条件と、生活費負担の適正化
インターンシップビザの取得をお考えの方は、谷島行政書士法人グループにご相談ください。適切な書類作成・申請サポートを提供いたします。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他