コラム
2025年01月29日 特定活動技術・人文知識・国際業務
特定活動46号ビザの条件・職種について「技術・人文知識・国際業務」との違いを解説
「特定活動46号」ビザは幅広い就労が可能で、とても便利な在留資格とされております。活動面では、「日本語を用いた円滑な意思疎通」つまりコミュニケーションを要する業務に従事する外国人が取得できる在留資格です。
ただし、就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」ビザと異なる点も多く、メリット・デメリットがあるため、二つの併用が必要です。以下解説していきます。
この解説でわかること/目次
1. 特定活動46号ビザと技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
就労範囲における特定活動46号と技術・人文知識・国際業務ビザとの違い:就労面と要件面
要件における、特定活動46号と技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
2. 特定活動46号で禁止される就労:技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
3. 独占業務や風俗営業が比較的ゆるやかな技術・人文知識・国際業務ビザ
5. 一部の出向、副業就労が禁止な点は技術・人文知識・国際業務ビザの方が緩やか
1. 特定活動46号ビザと技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
就労範囲における特定活動46号と技術・人文知識・国際業務ビザとの違い:就労面と要件面
それぞれ就労範囲と要件が大きな違いであり、それらを分かりやすくするなら、メリット・デメリットからアプローチすることが可能です。この解説では法令根拠を用いて、わかりやすく解説していきますが、まず、単純比較した場合のメリット・デメリットの表を作成しました。以下の通りです。
特定活動46号のメリット・デメリットの「技人国」簡易比較表
項目 | 特定活動46号ビザ | 技術・人文知識・国際業務ビザ |
メリット |
・現場業務と管理業務の両方が可能 ・ビザ目的の入社後の転職による乱用を防ぎやすい |
・学術的な専門性を活かした職種に適用可能 ・転職の自由度が高い(届出のみ) |
デメリット |
・転職の際、在留資格変更許可申請が必要 ・職種転換の柔軟性が低い |
・副業・出向に制限あり ・現場業務(販売、接客、介護など)が認められない |
就労可能な業界分野の事例
技術・人文知識・国際業務ビザにおける国際業務のように、列挙された法令はありません。日本語を用いるといっても、「通訳」である必要もなく、現場業務も可能です。
すなわち、「翻訳・通訳」を例にすると、技術・人文知識・国際業務ビザにないメリットもあります。この例では、「翻訳・通訳」が主たる活動でなくても、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事することが含まれていれば認められる点です。以下の事例があります。
① 店舗での販売
② タクシードライバー
③ 製造工場の通訳など日本語対応
業界・産業 | 特定活動46号ビザ(就労可能) | 技術・人文知識・国際業務ビザ(就労可能) |
外食・飲食業 | 店舗での販売(通訳を伴う接客含む) | 飲食店の経営管理、メニュー開発、マーケティング |
旅客運送業(タクシードライバー) | 日本語を活用した通訳付きタクシードライバー | 観光業のプランナー、交通インフラ管理 |
製造業(工場) | 製造ラインの指導、通訳業務を伴う現場管理 | 工業製品の設計、品質管理、技術開発 |
観光業・ホテル業 | 日本語を活用した接客・案内、通訳業務 | 外国人向けマーケティング、ホテルマネジメント |
小売業 | 商品販売、企画、通訳を兼ねた接客 | 商品企画、マーケティング、海外取引管理 |
介護業 | 外国人技能実習生やスタッフの指導、現場対応 | 介護管理、制度企画、研修プログラム開発 |
法令根拠
「特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号))」https://www.moj.go.jp/isa/content/001360125.pdf
第46号
別表十一に掲げる要件のいずれにも該当する者が、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み、風俗営業活動及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く。)
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この点、技術・人文知識・国際業務ビザでは、必ずしも日本語であることと、双方向のコミュニケーションは要件とされておりません(特定活動告示から解釈)。
したがって、技術・人文知識・国際業務ビザでは国際業務分野で、外国語でのみ業務を行うことも可能です。また、黙々と業務を行うITエンジニアも就労可能です。
要件における、特定活動46号と技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
特定活動46号は、学歴要件として、日本の大学、大学院及び短大卒業が必須です。
そのような学位の他に、最近はキャリア形成プログラム認定学科がある専門学校における高度専門士の学位でも、それらを証明することで許可される告示という法令改正がされました。
この点、技術・人文知識・国際業務ビザと類似と思われますが、技術・人文知識・国際業務ビザでは、外国の大学等も含まれます。したがって、外国の大学卒業者はこの特定活動46号は不許可になることに注意が必要です。
さらに、日本語を理解することができる能力の証明が必要です。これは「試験」でいうと、N1レベルです。
それ以外に外国の大学で日本語学科を卒業していることが要件の例とされております。ただし、日本の大学などを卒業する要件に変わりがありません。したがって、N1を持っていないと、学士を二つ以上とっている又はとる見込みの外国人が特定活動46号の要件を満たすことになります。
関連性の要件もあります。申請人である外国人が専攻した学科や課程で修得した学修の素養を活用する業務である必要があります。
ただし、これは技術・人文知識・国際業務ビザの程度より低いです。特に、技術・人文知識・国際業務ビザの専門学校の場合と比べて立証する程度や量が少なくても足ります(特定活動告示から解釈)。
法令根拠
「特定活動告示(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号))」https://www.moj.go.jp/isa/content/001360125.pdf
別表第十一
一 次のいずれかに該当していること。
イ 本邦の大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業して学位を授与されたこと。ロ 本邦の大学院の課程を修了して学位を授与されたこと。
ハ 本邦の短期大学(専門職大学の前期課程を含む。)又は高等専門学校を卒業した者(専門職大学の前期課程にあっては、修了した者)で、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)第三十一条第一項の規定による単位等大学における一定の単位の修得又は短期大学若しくは高等専門学校に置かれる専攻科のうち独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が定める要件を満たすものにおける一定の学修その他学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)第六条第一項に規定する文部科学大臣の定める学修を行い、かつ、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して、学士の学位を授与されたこと。
ニ 本邦の専修学校の専門課程の学科(専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和五年文部科学省告示第五十三号)第二条第一項の規定により文部科学大臣の認定を受けたものに限る。)を修了し、専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専門士の称号の付与に関する規程(平成六年文部省告示第八十四号)第三条の規定により、高度専門士と称することができること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
三 日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること。
四 本邦の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、第一号ハに規定する短期大学等の専攻科又は同号ニに規定する専修学校の専門課程の学科において修得した学修の成果等を活用するものと認められること。
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2. 特定活動46号で禁止される就労:技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
以下の業務は特定活動46号では認められません。
1.風俗関係業務(キャバクラ、性風俗店など)
2.独占業務(行政書士、看護師など法律上資格が必要な業務)
3. 独占業務や風俗営業が比較的ゆるやかな技術・人文知識・国際業務ビザ
この点、技術・人文知識・国際業務ビザでは、明確に禁止されている規定はありません。ただし、技術・人文知識・国際業務ビザでは、「適正性」という要件があります。
したがって、独占業務違反や許認可が必要にもかかわらず、企業がその許認可をもっていない場合も不許可となります。
ただし、風俗営業であっても、許容される余地があります。例えば、パチンコ店やガールズバーの管理者の申請で、要件を満たせば許可される可能性が十分あります。
4. 特定活動46号ビザの条件とは?
特定活動46号ビザを取得するための3つの主要条件は以下の通りです。
① 日本語を用いた円滑なコミュニケーションが必要な業務であること
「技術・人文知識・国際業務」と異なり、翻訳・通訳業務が「主たる業務」でなくてもよい
日本語を活用する業務が含まれていることが必須
② 学歴・専門性が一定基準を満たしていること
a. 日本の大学や一部の専門学校を卒業
b. N1相当の日本語能力、または日本語専攻
③ 専攻した学術的素養つまり学修成果を活かせる業務であること
学術上の素養が必要な一定水準以上の業務が含まれること
5. 一部の出向、副業就労が禁止な点は技術・人文知識・国際業務ビザの方が緩やか
特定活動46号の場合は、「常勤の職員」である要件があります。したがって、委託などは資格外活動違反となります。
さらに、アルバイト・パートもできません。
この点、技術・人文知識・国際業務ビザの場合は、副業が個人事業等の場合は資格外活動許可が必要ですが、許可事例はあります。
さらに、アルバイト・パートも、雇用であり、技術・人文知識・国際業務ビザの該当性など要件を満たしていれば資格外活動許可がなくても可能な場合があります。
出向も技術・人文知識・国際業務ビザの場合は届出で出来ますが、特定活動46号の場合は在留資格変更許可が必要です。
6. 特定活動46号ビザのメリット・デメリット
特定活動46号のメリット・デメリットの双方になる転職制限
「特定活動46号」ビザは、日本語を用いた円滑なコミュニケーションを要する業務に従事する外国人材を受け入れるための在留資格です。技術・人文知識・国際業務ビザとの違いで、メリットもある一方、デメリットもあります。
特定活動46号は、技術・人文知識・国際業務ビザと異なり、指定書がパスポートに添付されており、所属機関(企業)ごとに許可を受けることになります。
業務の範囲も指定されており、転職時には在留資格変更許可申請が必要です。これは、企業にとってメリットになり、就労外国人にとってはデメリットともいえます。
それらも含め、以下、メリットデメリットを総合的に説明していきます。
特定活動46号が優れているメリット
①現場業務と管理業務の両方が可能
制限の中で幅広い就労が可能
②学歴要件が「技術・人文知識・国際業務」と異なる。
日本の大学などの学歴要件はあるが、専門性と関連性が低くても可能
③ 店舗・製造・販売など現場を含めた幅広い業務での採用が可能
例:翻訳・通訳が主たる業務でなくても、含まれていれば可能
④ 企業の立場からすると、ビザ目的の外国人が許可後すぐに転職される悪質なケースを防ぎやすい(転職に、在留資格変更の事前許可申請が必要)
特定活動46号がデメリットとなること
① 企業変更ごとにビザの変更(在留資格変更許可)申請が必要
企業を変える場合、事前に在留資格変更許可申請が必要となるため、安易に転職できない。
② 業務内容の制限があるため、自由なポジション変更による人事異動や、職種転換に注意が必要
日本語を用いた意思疎通という要素を含めるという点で、制限があります。
この点、技術・人文知識・国際業務ビザでも専門性の範囲がありますが、技術・人文知識・国際業務ビザは前述の通り、「コミュニケーション」や「意思疎通」の要件は活動面において不要です。
③ 風俗営業の禁止、アルバイト・パートが不可能
技術・人文知識・国際業務ビザの場合、禁止される活動は許可条件についてきません。アルバイトやパートも資格外活動の範囲で可能な職務内容や雇用形態があります。
7. 技術・人文知識・国際業務ビザとの活動および要件、メリット・デメリットの比較まとめ表
項目 | 特定活動46号ビザ | 技術・人文知識・国際業務ビザ |
主たる活動要件 | 日本語を用いた円滑なコミュニケーションを要する業務 | 学術的な素養が必要な業務(必ずしも日本語は不要) |
学歴要件 | 日本の大学・大学院・短大・高度専門士を持つ専門学校卒 | 日本または海外の大学・専門学校卒 |
日本語要件 | N1相当の日本語能力、または日本語専攻 | 不要(職種による) |
関連性要件 | 学修成果を活用する業務であること(比較的緩やか) | 専門性の証明が厳格に求められる |
禁止される業務 | 風俗営業、法律上の独占業務(行政書士・看護師等) | 明確な規定なし(ただし適正性要件あり) |
転職、転籍出向 | 変更許可申請必須 | 届出で可能 |
副業、アルバイト・パートの可否 | 不可(常勤の職員であることが要件) | 資格外活動許可又は許可なしで一部可能 |
転職制限 | 転職には在留資格変更許可が必要 | 届出のみで転職可能 |
就労活動・業務の柔軟性 | 現場業務と管理業務ともに原則許容 | 現場業務は原則不可:専門性のある業務が必須 |
8.特定活動46号のリスク解決策は技術・人文知識・国際業務ビザとの併用
外国人採用を検討している企業様は、「技術・人文知識・国際業務」ビザとの違いを踏まえ、在留資格を横断的に、かつ職種ごとに柔軟に使い分けることが不法就労となるリスクを防ぐことができます。
特に重大なのは、資格外活動違反の共犯や、不法就労助長罪および更新不許可のリスクです。
谷島行政書士法人グループの特徴は多様なビザを横断的に提案し、企業や外国人のリスクを減らすことに重きを置いている点です。
外国人雇用・ビザでお困りの方は、ぜひ、ご相談ください。
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この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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