経営・管理ビザの「日本語能力者」要件を行政書士が解説(2025年改正基準)
2025年10月14日
経営・管理ビザ
経営・管理ビザの「日本語能力者」要件を行政書士が解説(2025年改正基準)

本ページは、2025年10月10日官報掲載の入管法施行規則及び上陸基準省令改正(「経営・管理」)に関する改正ポイントの実務解説です。
内容
①「申請に係る事業の経営を行い、又は当該事業に従事する者」(非常勤の者を除く). 2
②「…のうちいずれかの者が、日本語を高度に自立して理解・使用できる水準以上」… 2
経営・管理の改正のポイント
- 「経営・管理」の申請にあたり、申請人本人または常勤で事業に従事する者(非常勤を除く)のいずれかに、高度に自立して日本語を理解・使用できる水準以上の日本語能力が新たに求められます。
- これは、資本金3,000万円・常勤1名以上・経験/学歴・専門家確認済み事業計画などの厳格化と並列する追加要件です。
- 実務では、どの人物で立証するか(申請人か、常勤役員/従業員か)と、何で立証するか(試験合格証・学歴・職務での日本語使用実績等)を早期に設計することが重要です。
改正「日本語能力者」ポイント解説
①「申請に係る事業の経営を行い、又は当該事業に従事する者」(非常勤の者を除く)
- 対象人物は2類型:
- 経営を行う者(例:代表取締役・業務執行社員 等)
- 事業に従事する者(例:常勤の役員・従業員 等)
- 非常勤は除外です。パート・アルバイト・業務委託のみでは要件を満たせません。
②「…のうちいずれかの者が、日本語を高度に自立して理解・使用できる水準以上」
- 日本語能力を満たす人物は1名で可です(申請人本人でも、常勤の役員・従業員でも構いません)。
- 文言上のキーワードは「高度」「自立」「理解・使用」。単なる日常会話ではなく、ビジネスの現場で自力で読み・書き・話し・聞ける実力が想定されます。
- 目安として、CEFR B2(JLPT N2相当)程度とされます。
③「申請人が…本邦に居住することとしている」
- 居住の主体は申請人本人です。審査時点で、申請人が日本に居住して当該事業の経営・管理に従事する前提であることが必要です(遠隔の名ばかり経営は不可)。
- 日本語能力を満たすのが常勤職員の場合でも、申請人本人の居住要件は別個に課されています。
入管法上陸基準省令
経営・管理の項 三 申請に係る事業の経営を行い、又は当該事業に従事する者 (非常勤の者を除く) のうちいずれかの者が、高度に自立して日本語を理解し、使用することができる水準以上の能力を有している者であって、かつ、申請人が当該事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する時において、本邦に居住することとしているものであること。 |
経営・管理ビザ実務での影響と対応パターン
A. 申請人本人が日本語要件を満たす場合
- 最もシンプル。本人の試験合格証(例:JLPT N2等)や日本での学歴(日本の大学・大学院卒)、長期の日本語での業務実績で立証を設計。
- メリット:継続性・代替性のリスクが小さい。
- 留意点:条文上、非常勤(委託)は除外されると解釈できます。常勤性・日本居住の実体が裏付けられる必要があります。
B. 常勤役員・従業員が要件を満たす場合
- 採用・配置で対応する構成も考えられます。雇用契約(常勤)や社会保険加入など、常勤性と体制の実体を示す整備が基本と解釈できます。
- メリット:申請人が非日本語母語でも、社内に日本語中核人材を置く設計が可能。
- 留意点:「非常勤は不可」「外部委託は不可」。常勤性・日本居住が実態として裏付けられる必要があります。
C. 共同代表や複数経営陣での分担
- 経営メンバーの誰か一人が日本語要件を満たす形で分担する構成も考えられます。定款・株主間契約・取締役会規程で実効的な経営関与を示す構成も考えられます(説得的と解釈できます)。
立証資料の考え方(施行規則との関係)
- 入管法施行規則において、「日本語能力を証する資料」が位置づけられたと解釈できます。具体的にどの資料をもって充足と扱うかは、今後の運用通知・審査実務で明確化される見込みです。
- 試験・検定:たとえば JLPT(日本語能力試験)N2 以上等の合格証は、「日本語能力を証する資料」に該当し得ると解釈できます。
- 学歴等:日本の教育機関での履修・修了等、日本語による学修実績を示す資料を補足的に用いる構成も考えられます。
- 実務での日本語使用の補足:運用が明確化されるまで断定はできませんが、事業運営における日本語の使用実態(社内外コミュニケーションの基盤等)を説明資料として準備する運用も考えられます。
- 注意:どの資料の組み合わせが十分とされるかは、個別事案・時点の運用に依存し得ます。最新の運用を確認しつつ、ケースに応じて最適化するのが安全です。
入管法施行規則
経営・管理の項 三 申請に係る事業の経営を行い、又は当該事業に従事する者の日本語能力及びその者が本邦に居住することを明らかにする資料 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 申請人本人が日本語を話せなくても申請できますか?
A. 条文は「いずれかの者」と読めるため、常勤の役員・従業員が日本語要件を満たせば構成できると解釈できます。ただし、申請人本人の本邦居住は別途求められます。
Q2. 「常勤」とはどのように理解すればよいですか?
A. 一般に、直接雇用の就労形態を指すと解釈できます。委託・非常勤は条文上の対象外と読めます。
Q3. 海外在住の顧問委託で要件を満たせますか?
A. 条文上、非常勤(委託)は除外と読めるため、満たさないと解釈できます。本邦居住の常勤が前提と理解できます。
Q4. JLPT以外の資料でも立証できますか?
A. 施行規則で「日本語能力を証する資料」の枠組みが置かれたと解釈できます。JLPT合格証は該当すると解釈できますが、他資料の扱いも含め運用通知での明確化を待って個別最適化するのが安全です。
Q5. 既存の在留(更新)に新要件はどう影響しますか?
A. 更新時点の運用に従うため、適用される可能性があると解釈できます。更新前に体制を点検するのが無難です。
Q6. どのレベルの日本語が目安ですか?
A. 速報段階では、CEFR B2(JLPT N2相当)程度を目安に設計する考え方も解釈できます。最終的には運用通知の基準に合わせて調整してください。
Q7. スタートアップの少人数体制でも構成できますか?
A. 条文上「いずれかの者」1名で足りるため、日本語中核人材1名の常勤配置で構成するアプローチも可能です。
チェックリスト(申請前)
- 申請人本人の本邦居住またはその確実性が前提となっている(居住計画・賃貸借・生活基盤)
- 日本語能力充足者(1名)を誰にするか決定(申請人 or 常勤役員/従業員)
- 常勤性の裏付け(雇用契約・社会保険・勤怠などが考えられる)
- 立証方針(試験/学歴/実務証跡)
- 事業計画・資本・人員等の他要件(併存の厳格化)も同時に満たす設計
- 日本語での社内外コミュニケーション運用(議事録・稟議・契約・営業資料)を整備
まとめ
- 新要件の趣旨は、地域・取引先との円滑なコミュニケーションを確保し、実態ある経営を担保することにあります。
- 審査では「人物の特定」「常勤・居住の実体」「日本語運用の実務証跡」が鍵になります。余裕をもって準備を進めましょう。
当法人のサポート(例)
- 要件充足性の事前診断(30分オンライン)
- 立証戦略の設計(試験/学歴/実務の最適組合せ)
- 人事書式(職務記述書・雇用契約書・日本語運用規程)
- 申請書類一式の作成・入管手続きの代理代行
法令根拠(官報)
経営・管理の上陸基準症例に係る改正条文は、以下の通りです。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
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特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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