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育成就労法:技能実習改正法の総まとめ表 

2025年05月02日

育成就労技能実習

育成就労法:技能実習改正法の総まとめ表 

2025年4月28日にパブリックコメントが公開された育成就労法(技能実習法改正法)及びその法務省令案を徹底解説します。

特に人数枠の新計算式や産業分野区分、技能実習制度との違いをまとめ表でわかりやすく紹介。受入企業・監理支援機関が押さえるべき実務対応も解説します。

 

なお、企業単独型の技能実習で可能だった実務経験無しも、今後は1年以上在籍要件となる重要論点等も、別の記事で最新情報が決まり次第解説していきます。

 

目次

  1. 改正の背景とスケジュール… 1
  2. 用語とスキームの全体像… 2
  3. 改正ポイント早見表(抜粋)… 2
  4. 産業分野と人数枠の詳細… 4

   4-1 産業分野の考え方… 4

   4-2 人数枠(キーワード対策)… 4

  1. 技能評価試験・育成就労計画の新要件… 5
  2. 技能実習制度との新旧対照表(PDF ダウンロード用フォーマット例)… 5
  3. 企業が今すぐ準備すべき 5つのアクション… 5
  4. よくある質問… 6

まとめ… 6

 


  1. 改正の背景とスケジュール

  • 背景:技能実習制度で指摘されてきた「人権・転籍制限・賃金格差」問題への対応として、政府は 外国人材の育成と定着 を目的に育成就労法(改正法)を制定しました。

  1. 用語と育成就労制度の全体像

用語 意味 位置付け
単独型育成就労 海外子会社等からの出向型。企業単独で育成・管理 技能実習の企業単独型がベース
監理型育成就労 監理支援機関が複数の受入企業を監査・指導し、外国人育成を支援 技能実習の団体監理型がベース
労働者派遣等監理型 派遣形態を認める分野等あり 新設
育成就労評価試験 産業分野ごとに設定。1年以内に基礎級、修了時に3級相当合格が目標 改正前の技能実習評価試験や現行の技能検定
  1. 改正ポイント早見表(抜粋)
主な論点 改正前:技能実習 改正後:育成就労
制度目的 国際貢献・技能移転 人材育成+円滑な労働移動
産業分野 91職種168作業:一つ一つ特定されたもの 特定技能分野をベースに「育成就労産業分野」を範囲とする包括的な(広い)分野。順次拡大される。

 

特定技能産業分野

(1)介護業

(2)ビルクリーニング

(3)工業製品製造業(旧素形材産業・産業機械製造業・電気・電子情報関連産業に各製造業追加):縫製、工業包装他追加済

(4)建設業

(5)造船・舶用工業

(6)自動車整備

(7)航空

(8)宿泊

(9)自動車運送業

(10)鉄道

(11)農業

(12)漁業

(13)飲食料品製造業

(14)外食業

(15)林業

(16)木材産業

業務 職種・作業

必須業務50%以上

業務区分によって、例えば「建築」区分の「電気工事」等、技能実習では存在しなかった職種が可能になる。

必須業務34%以上でよい。

安全衛生10%以上。

関連・周辺業務も可能。

企業要件 分野告示が建設、介護等限られた分野で要件有 共通規制:特定技能に近い省令要件(日本人を含む同一職種の離職、債務超過、一時帰国制度など)が多数新設され不認定対象
監理要件 監理対象の共通規制無し 監理支援対象の企業と外国人の枠を新設
監理型の育成就労人数枠 段階式上限(例:従業員 101から200 人=10 名) 派遣型も含め、段階式上限(例:従業員 101から200 人=30 名)

(優良基準適合企業は6人以上から2倍)

単独型の育成就労人数枠 1号は常勤職員数×5% 上限(優良基準適合は2倍) 常勤職員数×約15%上限(優良基準適合企業は6人以上から2倍)
転籍

(転職)

原則不可/ハラスメント等の制限付き 育成就労外国人からも、1 年以上経過後など一定要件下で転籍申出により転職可能(やむを得ない事由規定)
技能試験 技能検定等(2年目以降) 入国後 1 年以内に基礎級

3年間修了までに 技能検定3級又は育成就労評価試験合格が目標

日本語能力 入国時:共通要件無し

修了時:共通要件無し

入国時:原則、N5又はA1相当が要件

修了時:原則、N4又はA2相当が要件

日本語教育要件 日本語に限らず、入国後講習で320h以上の課程を履修(入国前講習を算入することで160時間等で足りる) 入国後講習 320h+就労中 100h 以上の日本語認定教育機関等の課程を履修(入国前講習を算入することで160時間等で足りる)
労働者派遣 禁止(国家戦略特区等で対応) 農業や漁業等の分野で、労働者派遣等監理型を新設(厳格な個別人数枠と派遣元要件)

農業の場合、国家戦略特区の機関の要件等が必要

監理機関の許認可 監理団体 監理支援機関へ改正、全社許可取り直し。

追加要件その他義務増加

外部監査人 資格不要 行政書士法人、弁護士法人、社会保険労務士法人又はそれらの資格者等有識者に限定

  1. 産業分野と人数枠の詳細

4-1 産業分野の考え方

  • 省令別紙では「個別育成就労産業分野」を 特定技能16分野 を基準に整理しつつ、今後追加を想定。
  • 分野別協議会加入が義務(代替措置あり) 。
  • 産業別運用方針で 評価試験必須業務比率・安全衛生時間(10%以上)などを規定 。

4-2 人数枠(キーワード対策)

  • 単独型:常勤職員数の20分の3(優良の場合:10分の3)3名未満切り捨て
  • 監理型・派遣型:従業員規模別に 3〜45 名、301 人超は 20%(優良は 30%)上限
  • 派遣元・派遣先双方が個別人数枠を超えないことを追加規定

  1. 技能評価試験・育成就労計画の新要件

  1. 評価試験区分:分野別に官報告示—実質的に特定技能1号試験と相当
  2. 育成就労計画:記載事項に 賃金月額講習施設・指導員・生活相談員 を追加
  3. 講習時間:日本語+法的保護+生活一般=320 時間(入国前講習の一部算入可)
  1. 技能実習制度との新旧対照表

区分 技能実習 (旧) 育成就労 (新)
制度目的 技能移転であり人手不足対応は不可 人手不足対応で雇用できる人材育成
在留期間 1から5 年 3 年+延長 (条件付)
転籍可否 原則不可 1 年後、申出により可能
人数枠 3人以上で常勤従業員数による 原則、技能実習1号のおよそ3倍で優良企業の増加枠や分野毎の告示上限あり
試験 技能検定等 技能検定等+日本語試験等
派遣就労 不可 労働者派遣等監理型あり
監理機関 監理団体 監理支援機関 (外部監査義務)
行政処分・刑事罰 認定計画違反その他で認定取消処分 追加された企業要件非該当の認定申請も処分可能性有
  1. 企業が準備すべき 5つのアクション
  1. 企業要件チェック:離職状況など
  2. 分野別協議会への加入 または代替措置の確認
  3. 日本語教育体制 の構築(監理型は監理支援機関と協議)
  4. 人数枠シミュレーション:自社常勤数ベースで単独型・監理型の上限を試算
  5. 評価試験対策プログラム の社内・外部講座依頼の確認
  6. 就業規則・雇用契約書のアップデート:一時帰国旅費負担条項など

 

 

よくある質問

Q. 技能実習生は自動的に育成就労に移行できますか?

いいえ。技能実習で受け入れられた外国人は技能実習制度により運用されます。その後、特定技能への移行が通常です。

Q. 技能実習生はこれまでどおり特定技能に移行できますか?

主に、評価試験合格が不要な「技能実習2号良好修了」類型となるためには、技能実習制度廃止までに受け入れ中の技能実習が対象となります。

Q. 技能実習生はこれまでどおり技能実習3号まで就労できますか?

技能実習3号にいくためには技能実習2号を1年以上などが想定されております。

Q. 人数枠の「優良」判定基準は?

技能検定合格実績や日本語教育実績、体制、法令違反の有無等を総合評価し「高い水準」と判定された場合です 。

 

まとめ

育成就労法は 「育成+定着」 を掲げ、技能実習よりも 転籍の柔軟性・日本語教育の拡充・監理体制の強化 が図られました。産業分野ごとの評価試験と人数枠がビジネス上の鍵になるため、早期の社内体制整備が不可欠です。

専門の行政書士に確認し、最新の省令・運用方針を随時チェックし、施行前から準備を進めましょう。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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