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コラム
2024年12月12日 人材育成
行政手続法と行政不服審査法の入管法適用範囲:法務部や弁護士向け
Q. 入管法では、行政を統制する法律や、不許可や処分の間違いを正す法律はないのでしょうか?
A. 行政にも誤りがあるため、行政手続法と行政不服審査法が通常の行政法を規制することで、行政の不当な執行を統制し修正します。
さらに、入管法や関連法令の中にも いくつか「不服申立て」である「異議の申出」や「審査請求」が可能とされており、さらに不服審査法が適用されるものもあります。そのように、それらを活用できる場合は、外国人や国民は救済される方法となります。
ただし、適用除外範囲と、その異なる期間や制度に対応することは、入管専門行政書士が企業や外国人を守る際の必要な知識です。
行政手続法と行政不服審査法の適用除外
行政手続法および行政不服審査法の適用除外規定は「外国人の出入国」等を規定しているため、以下の処分が適用除外になります。
行政手続法の「申請に対する処分」が除外される手続の例
・在留資格変更許可申請などの在留諸申請の不許可処分 ・再入国許可の不許可処分 ・退去強制令書発布処分 |
行政手続法及び審査請求が除外される不利益処分の例
・在留資格の取消し処分 ・退去強制令書発布処分 |
このように、入管法は国籍法における帰化申請・処分と並び、行政手続法や行政不服審査法が適用除外とされる手続が多いため、まったく活用できないと考えられる方もいらっしゃいます。
しかし、それらの手続または準ずる手続が全くできないかと思うとそうではありません。手続毎に「異議の申出」の制度があるものや、意見陳述が用意されているのです。
行政手続法・行政不服審査法又はその準ずる制度が使える手続と不利益処分
行政手続法・行政不服審査法又はその準ずる制度が使える出入国在留管理局による処分
一方で除外されない手続と不利益処分は以下のものがあります。
除外されない手続の例
・難民認定申請又は補完的保護対象者認定申請に対する不認定処分 ・難民認定申請又は補完的保護対象者認定申請に対する不作為 ・登録支援機関の登録申請に対する不許可(不登録)処分 |
これらは行政手続法と行政不服審査法が適用されます。
ただし、難民認定申請の期間などは一部適用であるため、入管法が特別法としての規定があります。例えば、不服申し立て期間が非常に短いため注意が必要です。ウクライナその他の補完的保護対象者についても同様で、処分通知から7日以内となっております。
除外されない不利益処分の例
・登録支援機関の登録取消し処分 ・特定技能所属機関に対する受入停止、改善命令の処分 |
これらは行政不服審査法が適用されます。
除外されない又は準ずる意見陳述の例
・在留資格の取消し処分前 ・退去強制令書発布前の口頭審理 |
除外されない又は準ずる不服申し立ての例
・在留資格の取消し処分前 ・退去強制令書発布前の口頭審理 |
参照法令
行政手続法 (定義) 第二条この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 法令 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。以下「規則」という。)をいう。 二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。 三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
(適用除外) 第三条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。 略 十 外国人の出入国、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第六十一条の二第一項に規定する難民の認定、同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定又は帰化に関する処分及び行政指導 十五 審査請求、再調査の請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分 十六 前号に規定する処分の手続又は第三章に規定する聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導 |
行政不服審査法の活用と除外
さらに、不許可や、特定技能協議会の会員権の取消し処分を受けても行政不服審査法により救済がされる可能性があります。処分が違法又は不当であると裁決されれば、処分が取り消し又は変更される実益があります。
この点、以下の適用除外に気を付けることになります。
行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)
(適用除外) 第七条 次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。 略 十 外国人の出入国又は帰化に関する処分 |
登録支援機関の申請に対する不許可・不利益処分
登録支援機関の登録は、特定技能外国人の生活支援のための許認可です。この根拠は入管法および入管法施行規則であるため、法令に基づき申請することになります。
登録支援機関は、特定技能外国人に関する許認可であってもその出入国に直接の処分ではないため、適用されると広く考えられております。
国土交通大臣に対する建設特定技能受入計画認定申請
これは法務省令つまり法令である「特定技能基準省令」から告示へ委任がされた規定が主な根拠となっておりますが、所属機関に対する規制であることから適用除外がなく、また法令に基づく告示による許認可であるため、法令に準じて適用されると考えられます。行政手続法第二条柱書第一号に、(告示を含む)ものが法令となっているからです。
したがって、あまりに認定が遅い場合は不作為又は時の裁量違反が疑われるとき、行政手続法および行政不服審査法活用ができる実益があります。
特定技能の経済産業省受入協議会の「工業製品製造業」審査における加入の届出
これも告示が主な根拠となっておりますが、国土交通省の特定技能受入の認定と同じロジックで許認可とされると考えることができます。経済産業省の告示の要件は、法令上は間接的な根拠となっておりますがそのように考えることができれば、その実益として、難解事由がある場合の方針や処理に違いが生じます。
例えば、行政指導に対する対応が変わりうること、羈束行為である場合に許可率を左右する(効果裁量はもちろん)行政裁量を否定することができます。
なお、経産省協議会への届出は、届出といっても到達と共に義務履行となるようなことがありません。入管申請の前提要件の意味での効力発生がないこと、また審査がされるため、実質申請です。
入管法上の届出
行政手続法でも、申請や不利益処分と異なり、総則と、届出、意見公募手続等や補則の章は適用されます。
したがって、所属機関に関する届出や、特定技能外国人に関する定期届や随時届出については、入管から「受理しない」と言われても義務履行があったかなかったかについて争うことはできないこととなります。但し、形式上要件適合が必須です。
特定技能外国人と登録支援機関による特定行政書士の活用
入管関連法では、以上の通り、行政手続法、行政不服審査法又は入管法もしくは技能実習法の規定により、申請に対する処分や不利益処分でも意見陳述でも適用できる場面が多くあります。
また届出でも然り、総則と、届出、意見公募手続等や補則の章は適用されます。
さらに行政法総則が適用されることで、行政平等原則や羈束行為など行政を縛る規定も多くあります。
この点、特定行政書士は、一定範囲の意見陳述、審査請求や入管法上の異議の申出など不服申し立ての代理が可能であるため、ぜひご活用ください。
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この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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