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コラム

2024年08月22日 コラム

「権利能力」観点の行政書士実務: 法人、事業所、支店、営業所などの定義ならびに設立及び許認可の手続を徹底解説

行政書士実務ロールプレイング
許認可や入管などの行政手続の通則

 

Q. 法人、事業所、支店、営業所などの違いがわからず、外国人雇用や、建設業などの許認可申請において申請や相談で混同してしまう。定義から実務に必要な最低限の知識を教えてほしい。

 

A. 各法律や行政規則等における定義を用いて、正確な体系的理解をすることで、誤った申請をなくすことができます。さらに、実体と手続の規定によりうっかり却下や虚偽申請を防ぐことも可能です。

それらを把握しないと管轄の誤りや申請不受理による期限経過や申請者らの損失など、時に重大なミスを招きます。そのため、本質的な箇所を以下の通り説明します。

 

 

Q. そもそも法人とは何か?

 

A. 法人をつくり営業すると、自然人つまりオーナー個人と法的に分離されます。

法人格を得ると、責任が分離され、会社の借り入れは会社の責任であって、倒産しても個人が破産することは別の話です。

つまり法人とは、法人格が与えられることで、法的に権利義務を有することができる、つまり権利能力をもつことができます。

したがって、法人で行う取引は、個人と分離されます。

 

Q. 法人格と法人の特徴とはなにか?

 

次に法人格について説明します。これは自然人でなくても権利能力を有することができる、「法」で認められた特別な「人」です。そのため、言葉として「法人」ととらえてよいです。では何がベネフィットなのでしょうか。

例えば、株式会社などは有限責任です。そのため、個人まで債務不履行や不法行為の責任がおよびません。

この点、持分会社としては無限責任の類型もありますが、合同会社は有限責任であるため、権利能力について、相当程度個人と分離されます。なお、持分会社の通則は、取締役等役員とオーナーが分離されないことがあげられます。株式会社は役員とオーナーつまり株主は別でもよいからです。

 

 上記は原則ですが、会社の法人格が別であることで権利濫用をすると、それはその行為者である個人に責任追及することができる判例があります。「法人格否認の法理」と呼ばれます。

 

 

Q. 法人と事業者や営業所などの違いはなにか?

 

法人、事業所、支店、営業所などの定義

法律事務では、あらゆる場面で、まず根拠法令における定義規定を把握します。

1.民法(一般法で法人の定義)

 法人

 

2.会社法

 株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、外国会社

 

3.一般法人法・公益認定法

 一般社団法人、一般財団法人

 公益社団法人、公益財団法人

 

4.個別法/業法

 建設業法、その他無数

 

 

Q. 法令ごとの定義の確認方法はどうすればよいですか?

 

A. 法令ごとに確認する。ただしその法令の最初に概ね集合している。

第一条はほぼ法律の目的であり、それが範囲を表すことが多い。例えば、会社法の場合は実体法であることと、第二条で定義規定の箇所を一部抜粋する。

 

 

会社法

第一章 通則

(趣旨)

第一条 会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。

二 外国会社 外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう。

三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

三の二 子会社等 次のいずれかに該当する者をいう。

イ 子会社

ロ 会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの

四 親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

四の二 親会社等 次のいずれかに該当する者をいう。

イ 親会社

ロ 株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として法務省令で定めるもの

五 公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。

六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。

イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。

ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。

七 取締役会設置会社 取締役会を置く株式会社又はこの法律の規定により取締役会を置かなければならない株式会社をいう。

八 会計参与設置会社 会計参与を置く株式会社をいう。

九 監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。

 

法律の定義は、「みなしているもの」であり、一般の国語の意味と異なる。

例:

1.  「監査役設置会社」や「大会社」の定義は、会社法上において、一般の意味より狭いと考えることができる。

2. 「企業内転勤」の在留資格の申請場面:

親会社や子会社の定義は、財務省令によるので、上記の会社法の法務省令ではない。

 

 

Q.  法人やその変更について、成立など実体の原因と、設立や変更の手続の違いについて教えてもらえますか?

 

A. 会社設立は準則主義のため、登記で効力発生、つまり成立する(vs 認可主義)。

なお、商業登記をさだめる商業登記法は手続法であるため、変更実体があったあとの対抗要件や義務などを定める(原則、公信力はない)。したがって、14日以内等に登記は義務である。

実体の日付が重要なのは、効力発生が生じる日であるからである。さらにその手順は、会社法などで定める手順を踏んでいないとならないためである。

 例: 定款作成日以降でないと資本金の払い込み(口座への入金)は効力を生じないため、日付を間違えていると訂正が必要となる。そうでないと実体法の不適合から、登記申請でも却下事由になる。

 

「会社法務」における他士業との関係

登記・供託の書類作成・申請及び裁判所への書類作成が司法書士の独占業務であり、行政書士の独占業務は定款、発起人や社員の議事録その他「官公署に提出する書類」、「権利義務」又は「事実証明(実地調査に基づく図面類を含む。)」の書類の作成と幅広い独占業務が法定されている。

それらの「会社法務」の範囲で言うと、行政書士が作った実体や手続(定款やその認証手続き、発起人会その他)の設立書類を司法書士に渡し登記申請書等のオンライン登記申請を任せる連携をする。

 

行政書士法 抜粋

(業務)

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

 

 

効力発生(法律上の原因)と手続(行政上の義務履行)の関係

 

原則、効力発生と手続義務は別次元

 つまり、原因年月日と手続年月日は異なることも多い。

 

例外:

手続の実体完了から登記をすることは同じであるが、効力発生もしていない。

1. 設立

実体の法人ができていても、効力発生していない。

 

2. 組織再編

 合併など

 

まとめ

原則は、つまり、原因があれば実体つまり効力発生の事実があるという点に注意すること。その実態(実体)がないと虚偽申請になりかねない。

 

 例外的に設立は、会社は主に実体を発起人ら定款などで決めて、申請し、設立登記によって成立する。そのため、「申請日」をもって権利能力を有する。

 

 

Q.  法人の本店、支店、事業所、営業所などの定義による区別についてもう少し詳しくおしえてもらえますか?

 

会社、支店、事業所、営業所などの区別

本店と支店

 どちらも権利能力があるわけではない。法人に権利能力がある。

 代表取締役や支配人などは代表つまり代理人と捉える。

 

事業所

 標準産業分類の定義による。

 例: その事業所の範囲によっては、特定技能外国人を雇用できるかどうかが決まる。店舗=事業所とは限らない。

 

営業所

 個別法の定義

 例:建設業においては、契約締結、専任技術者などが必要な場所

 では、経営業務管理責任者(「常勤役員等」)は常勤である要件があるが、どこに常駐するのか?

  その妥当な解釈によって、東京都と神奈川県の運用が異なることが利用できることもある。

 

 

Q.  申請人と申請者の違いはなんですか?

 

A. 申請者というと、「者」なので、法人も含まれるものです。

例:入管法の在留申請は申請人

 

 

Q.  手続の主体となる申請者や届出者とは何か?

 

A. 行政手続においては権利能力が必要。権利能力があるから法的効果を受けることができる。この考えは、あらゆる業務で関係する。

 

例:通常は、顧客マスタやファイリングにおいて、営業所ごとにつくることはない。

 

屋号も例外ではなく、原則通り申請者は個人事業主などとなる。

 

 

Q. 管轄と権利能力の関係はどう整理できるのか?

 

 

A. 法人所在地が管轄となるとは限らないため、個別法で規定されることになります。そこで使われるのが、営業所や事業所、販売所等の定義です。簡単に言うと、以下の通りです。

 

・ 営業所単位で許可を受けることと意味が違う。

・ 通常、あらゆる許認可は、その営業所がある所在地の行政庁に申請をする。営業所がある場所はつまり管轄となり、監督官庁にもなることが多い。

 

 

 

 

Q. 各業法において、許認可を与えられる権利能力の客体は営業所単位なのか?

 

 

A. 施設系は施設や店舗ごとに許可を受けるが、許認可を受けるのは、あくまで自然人又は法人のみです。

 

 

Q. 外国法人は、どのように、契約主体や申請者となれるか?

 

 

A. 日本で外国会社自体を代表者を登記をすることで取引や申請をすることができる。

ただし、通常は外国法に基づき権利能力があるため、そのまま届出等をできる個別法もある。

例: 外為法に基づく対内直接投資の届出は、代理人を立てて可能

 

 

外国法人の権利能力

 外国法人は外国法により設立されている。そのため、許認可を受けることや契約の当事者ないし法律行為の主体や客体となることができないと考えることができる。

 

この点、外国法人は日本の営業所や日本における代表者つまり代理人を登記することができる。また、駐在所や駐在員にとどまらない場合は登記をしなければならない。

 

会社法 抜粋

第八百十八条 外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができない。

2 前項の規定に違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

 

以上から、日本における代表者の他、支店などを登記し、日本の営業所も有することができ、その義務もある。

 

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザ専門。手続代理及びコンプライアンス顧問として、登録支援機関のほか弁護士等の専門家向け顧問の実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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