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転籍と指定区域:地方の育成就労も「引き抜かれリスク」有(公布・確定版)

2025年10月10日

育成就労

転籍と指定区域:地方の育成就労も「引き抜かれリスク」有(公布・確定版)

育成就労法施行規則が公布されました。この法令では都市部集中の抑制のために『地方から一定の都市』への本人意向による転籍には、都市部の受け入れ企業において育成就労外国人総数の「6分の1上限」までとされる規制が設けられました。

これは、全体として、転籍受け入れは3分の1上限と併用されることになります。

一方で、条文は 『申請者の住所』『直近の実施者の住所』という“法人の住所(本店・主たる事務所)”を基準に 規制をかけているため、事業所(勤務先)所在地ベースではない点が実務上の論点です。

つまり、勤務先が地方であっても、都市部の本店所在地の企業はリスクがあることが問題となります。以下にわかりやすく解説してまいります。

内容

結論(行政書士の見解)

根拠条文(要旨)

パブリックコメントに見られた主な論点

『住所ベース』がもたらす実務上のズレ(例示)

リスクを抑えるための運用ヒント

FAQ(よくある質問)

脚注(出典)

結論(谷島行政書士法人の見解)

現行条文の素直な解釈では『住所=本店所在地』基準で1/6規制の算入可否が決まります。 そのため、地方“事業所”勤務でも法人住所が都市部なら1/6の対象外となるように解釈されます。

その一方、法人住所が地方なら当該規制を受け保護される対象になります。

したがって、法人の本店所在地の基準であり、事業所・営業所や外国人の住所等で引き抜きなどの都市部への流出の可否を決しないことが問題です。これは地方から都市部への流出懸念に対して、防止策として機能するか疑問を生じますが、公布済み省令・告示の確定文言上は住所基準として運用される前提です。

根拠条文(要旨)

育成就労法施行規則28条2号ロ:『申請者の住所が指定区域にあるものでない場合は、直近の育成就労実施者の住所が 指定区域にある者の割合が6分の1を超えないこと(1人となる場合の但書あり)』等となっております。

これは企業の住所を指します。法人の場合、主たる事務所(会社の本店)を指すのが実務の通常です。

なお、「指定区域」に関する他の条文でも「住所」が明文化されております。

パブリックコメントに見られた主な論点

以下はいずれもパブリックコメントにおける『御意見の要旨』の要約と、それに対する政府側の考え方です。

  • 都市部(大都市圏)に育成就労外国人が集中する懸念: 本人意向の転籍が都市部流入を招くのではないか
  •  → 政府は『大都市圏への過度な集中抑制』の観点を示し、必要な制約を講ずる旨を回答。(脚注2)
  • 都市部企業への一律な転籍制限の要否: 都市部への移動制限や受入条件の強化を求める。
  •  → 政府は一律の“居住地・都市圏指定”による拒否までは設けず、個別に必要な措置を検討と回答。(脚注2)
  • 制度目的(地方人材の確保)との整合性: 受入見込数(分野上限)や上限制御で需要と供給の均衡を図るべき。
  •  → 政府は分野別運用方針で受入れ見込数を上限として運用と回答。(脚注1)

『住所ベース』がもたらす実務上のズレ(例示)

・ ① 地方“事業所”勤務だが、法人住所(本店)が都市部:

この場合、 転籍先が都市部でも“地方→都市”の6分の1の人数枠規制の計算に乗らない可能性がある。

・ ② 法人住所(本店)が地方:

この場合、 同じく地方“事業所”勤務者の都市部転籍は6分の1に算入される。

・ ③ ただし、受入企業は、別途『本人意向転籍の受入総量=在籍の1/3以下』の全体上限を同時に満たす必要がある。

リスクを抑えるための運用ヒント

□ 住所(本店)と受入実態の見直し:

特定技能外国人も分野により差がありますが、やはり都市部へ移動する傾向があります。育成就労外国人もその流れが懸念されており、その趣旨での規制です。

したがって、恒常的に地方で受入れを行うなら、組織再編や、指定区域への本店所在地への移転、法人化等も含め住所設計を検討する必要があります(他法令影響は個別検討します)。

□ 二つの上限の常時モニタリング:

分母(在籍総数)と分子(本人意向転籍数/うち地方出どころ)を台帳化し、1/6・1/3双方のアラートを可視化すべきです。

□ 但書(地方→都市への受け入れが“1人”になる場合は除外があります。)や『やむを得ない事情』除外の該当性を、社内判定基準・記録様式で明確化することが必要です。

□ 分野別運用方針の“受入見込数(上限)”と基本枠・優良枠の交差制約を、採用計画に反映すべきです。

FAQ(よくある質問)

Q. 事業所(勤務先)が地方なら、法人住所が都市部でも『地方→都市』に数えますか?

A. いいえ。条文は『住所=法人の住所(本店)』基準です(施行規則28条2号ロ)。

Q. 趣旨とズレるのでは?

A. パブコメでも『大都市圏への集中懸念』などの意見が出され、政府は抑制の方向性を示しました(脚注2)。 ただし、省令文言は住所基準のため、現行はその枠内での運用・内部統制が前提です。

脚注(出典)

・ 脚注1:e-Govパブリック・コメント案件(315000105)『結果の公示』(結果・公布日の記載)および別紙『御意見の要旨/御意見に対する考え方』。

・ 脚注2:同別紙の該当箇所(都市部集中・転籍関連の意見と政府見解)。

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育成就労外国人は受け入れ人数枠の管理は非常に複雑になります。

また、分野ごとの人数枠等の確認も常に必要です。

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この点、谷島行政書士法人の「行政書士  for外国人雇用」サービスでは、あらゆる外国人雇用の管理が可能です。

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ご興味があればぜひご依頼やご相談ください。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


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特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他


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・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


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