特定技能の新19分野と、育成就労17分野の解説 -全分野の比較表付き-
2025年05月27日
特定技能育成就労
特定技能の新19分野と、育成就労17分野の解説 -全分野の比較表付き-

特定技能と育成就労の全産業分野の比較表付き解説
内容
- 既存分野の比較対照表(2025年5月時点)… 3
- 追加・拡充が検討中の分野… 5
- 各分野の改正ポイント(ダイジェスト)… 6
- 受け入れ企業担当者が押さえる実務ポイント… 7
- 育成就労と特定技能の改正でよくある質問(FAQ)… 7
- まとめ… 8
1. 特定技能産業分野と育成就労産業分野改正対応のスケジュールと期限
- 2025年3月11日、特定技能の基本方針と並行して育成就労(技能実習の後継)に関する基本方針が閣議決定。これを受けて分野別運用方針の策定作業が本格化し、2025年12月に分野別運用方針も決まります。
受け入れ企業や監理支援機関は、従来の制度で受入れができなくなる期限、つまり2026(令和8)年度中までに許可要件等をはじめと下準備と、育成、雇用、支援などの実務の知識、要件チェックおよび体制構築が必要です。
そのために、2025(令和7)年12月決定の「分野別運用方針」などの新情報を収集し、計画が必要です。
谷島行政書士法人グループはそのタイムラインに沿って、企業と監理支援機関ともに受入準備のアドバイザリー顧問をしております。ぜひお声がけください。
- 2025年5月20日開催の有識者会議(第3回)で、対象分野案・業務区分案・試験整備方針案が提示され、同年12月の関係閣僚会議で確定させる工程表が公表されています。
ポイント
分野別運用方針は「特定技能」と「育成就労」の共通部分を策定。両制度を分けて考えていた従来よりも、採用・転籍・キャリアパス設計がシームレスになります。
育成就労では、特定技能のように「業務区分」の中で包括的に多数の業務ができる制度と同じにした場合、やや不都合があります。すなわち、育成就労はキャリアパスが重要です。育成目標である試験合格を目指すために、技能実習でいう「作業」の区分のような技能カテゴリーが必要です。
したがって、「主たる技能」をさらに定める方針が採られております。
例として建設分野について、以下で解説します。
⇒リンク「建設分野「育成就労」の「業務区分」と「主たる技能」の最新解説」
育成就労評価試験とは
育成就労評価試験の初級・専門級が創設されることで、上記の目標達成ができることとなり、特定技能の要件を満たします。
これは、「主たる技能」によって特定技能評価試験も併用で用いられることになりました。
特定技能評価試験が育成就労に使われる理由
育成就労は特定技能に連続する制度として設計されました。すなわち特定技能に移行することができます。育成就労の3年目に、受験すべき試験が育成就労評価試験の専門級とされることもあり、あるいは特定技能1号評価試験がつかわれることも、その主たる技能ごとに決定されるのです。
したがって、特定技能評価試験合格のみが用意される主たる技能となるかは、同じ業務区分でも別に設定されることになります。どの受験が必須の要件となるかは主たる技能毎に確認することになります。
2. 既存16分野の比較対照表(2025年5月時点)
分野名 | 特定技能1号/2号 | 育成就労案 | 主務省庁 | 特筆すべき改正予定事項 | |
1 | 介護 | ○ | ○ | 厚労省 | 育成就労は技能実習2号試験を名称変更して活用予定 |
2 | ビルクリーニング | ○(2号対象) | ○ | 国交省 | 1年目に新試験、3年目は特定技能試験を利用 |
3 | 建設(⼟⽊・建築・ライフライン設備) | ○(2号対象) | ○ | 国交省 | 新たに「基礎ぐい工事」等を「主たる技能」に追加 |
4 | 造船・舶用工業 | ○(2号対象) | ○ | 国交省 | 既存試験を利用 |
5 | 自動車整備 | ○(2号対象) | ○ | 国交省 | 車体整備を独立区分化、試験新設 |
6 | 宿泊 | ○(2号対象) | ○ | 観光庁 | 企画・広報業務を必須業務に追加 |
7 | 自動車運送業(トラック・タクシー・バス) | ○ | × (免許等) | 国交省 | 改正なし(現行区分を維持) |
ただし、N3を緩和検討 | |||||
8 | 農業(耕種・畜産) | ○(2号対象) | ○ | 農水省 | 区分全般の必須業務+技能実習作業で主技能設定 |
9 | 漁業(漁業・養殖) | ○(2号対象) | ○ | 農水省 | 3年目試験は特定技能試験へ統合予定 |
10 | 外食業 | ○(2号対象) | ○ | 観光庁 | 1年目に育成就労試験を新設 |
「医療・福祉施設給食製造」業務区分新設 | |||||
11 | 林業 | ○ | ○ | 林野庁 | 技能検定ベースで運用(変更なし) |
12 | 木材産業 | ○ | ○ | 林野庁 | 合単板・集成材等を必須業務に追加 |
13 | 工業製品製造業 | ○(2号対象) | ○ | 経産省 | 2024改正で分野名を変更、業務区分10が存在。 |
(旧:素形材ほか) | さらに8区分が追加予定。 | ||||
14 | 飲食料品製造業 | ○(2号対象) | ○ | 厚労省 | 「水産加工業」を切り分け検討中 |
15 | 航空(グランドハンドリング・整備) | ○(2号対象) | × (免許等) | 国交省 | 育成就労は現時点で対象外 |
16 | 鉄道 | ○ | ○ | 国交省 | 同上(駅・車両清掃など一部が新たな業務区分) |
3. 追加・拡充が検討中の分野
以下三つの特定技能産業分野が創設されます。したがって、育成就労産業分野でも、これらから絞って設定されます。
1.リネンサプライ
2.物流倉庫
3.資源循環
廃棄物処分業・中間処理
さらに、業務区分がいくつか追加されます。例えば「工業製品製造業」は8つも追加されます。
- 電線・ケーブル製造
- プレハブ製造
- 家具製造
- 定形耐火物製造
- 不定形耐火物製造
- 生コンクリート製造
- ゴム製品製造
- かばん製造
区分 | 新設・追加検討中の分野 | 特定技能 | 育成就労 | 備考 |
A | リネンサプライ | 新設分野(P) | 新設分野(P) | ホテル等のリネンサプライ事業者が要望 |
B | 物流倉庫 | 新設分野(P) | 新設分野(P) | 物流2024問題を背景に追加検討 |
C | 資源循環(廃棄物処分業・中間処理) | 新設分野(P) | 新設分野(P) | GX政策との連動を想定 |
D | 工業製品製造業-以下8つ業務区分を新設:l 電線・ケーブル製造l プレハブ製造l 家具製造
l 定形耐火物製造 l 不定形耐火物製造 l 生コンクリート製造 l ゴム製品製造 l かばん製造 |
新設の業務区分 | 拡充 | 18区分へ増加 |
注:「P」は省庁側の要望に基づき検討・精査中の区分であり、2025年12月までに確定予定です。
4. 各分野の改正ポイント(ダイジェスト)
分野 | 改正キーワード | 企業側チェックリスト |
建設 | 主たる技能追加・試験再編 | 既存技能実習生が新技能へシームレスに移行できるかを確認 |
工業製品製造業 | 名称変更+業務区分拡大 | 追加区分に該当する工場は就業規程・登録支援計画を更新 |
外食業 | 1年目試験新設 | 新試験スケジュールと教育体制を要チェック |
自動車整備 | 車体整備独立 | 整備工場の受入計画書を2区分で用意 |
宿泊 | 企画・広報業務を必須化 | 外国人従業員の職務記述書(JD)を改訂 |
介護 | 名称のみ変更(試験統合) | 既存入職者の学習教材を統一 |
5. 受け入れ企業担当者が押さえる実務ポイント
- 制度横断のキャリア設計
育成就労→特定技能1号→2号へスムーズに進めるロードマップを書面化し、人材定着率を高めましょう。 - 転籍ルールと待遇向上策
分野別運用方針で転籍制限期間が設定された場合、クリアした人材には昇給・職務拡大でインセンティブを検討することも一つです。 - 試験日程の先読み
新設試験は2026年度以降に段階導入予定。試験センター数・言語別実施可否も早めに確認。 - 登録支援機関・監理支援機関の役割分担
育成就労の監理:監理支援機関
特定技能の義務的支援:登録支援機関 - 手続書類作成の適法なアウトソーシング:行政書士
- コンプライアンスや外部監査人確保:行政書士、弁護士等
育成就労の外部監査人は、行政書士等の有識者に限られます。
以上のような外部パートナーを選定する際、手続一元化がシンプルかつ便利です。
6. 育成就労と特定技能の改正でよくある質問(FAQ)
Q | A |
育成就労はいつから申請できますか? | 分野別運用方針が2025年度中に決まり、その後、各分野で順次受付開始の予定です。 |
航空・自動車運送業分野で育成就労を使いたい場合は? | 現行案では除外されています。追加を待つ必要があります。 |
新しく物流倉庫分野が創設された場合、現行の自動車運送業区分でもできますか? | 物流と言っても倉庫業務の分野は別であるため、それを主で行う場合は、物流倉庫分野で許可をとることになります。詳細は告示を確認またはご相談ください。 |
7. まとめ
- 特定技能産業分野+工業製品製造業など拡充業務区分がされ、育成就労でも育成就労産業分野について育成方針の決定がされ、「主たる技能」により受入可能。
- 新分野である、物流倉庫・リネンサプライ・資源循環(廃棄物処理業)など新規分野も2026年度以降にスタート。
- 企業は転籍制限期間・試験日程・信頼できる監理支援機関、企業の雇用体制などの見込みを令和7年度中に計画し、令和8年度に整備することで、人手不足を“制度改正”でチャンスに変えましょう。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他