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2024年12月27日 成功事例
建設業「特定技能1号」から「技術・人文知識・国際業務ビザ」変更申請事例:支援担当者が兼ねる語学指導と技術指導の線引き
その外国人は特定技能1号で経験を積んでいたこともあって、もともとは、現場における技術指導をさせたいニーズがありました。しかし、弊社ではこれをしない方が良いとアドバイスをして、その業務範囲の線引きを提案しました。
なぜなら、「技術指導」は、次の二つの点で問題になります。
1.「技術」基準と異なり、「国際業務」基準は「語学の指導」の場合、大学卒業者は実務経験が不要であること
技術指導をさせたい場合、「技術」基準適合を果すには、専攻科目によって出来るかどうかを検討する必要があります。
2. 特定技能外国人が所属する部署でない中立性を要する「支援担当者(支援責任者兼務)」としての業務
現場で技術職として特定技能外国人に指導をする場合、それは通常「上司」です。例外もあると考えますが、技術・技能の本職である特定技能外国人らに指導をするのは上司からの技術的な仕事に関する命令と捉えられるからです。
①「技術」基準で、本件「技術・人文知識・国際業務ビザ」申請へのあてはめ
本件では、「機械専攻」であり、特定技能外国人が建設現場にいるケースであったため、以上の2点に適合しないとされる可能性が高く、不許可リスクが想定できました。
したがって、「語学の指導」にとどめる業務範囲である必要がありました。
その線引きが可能かどうかは、数回の打合せが必要でしたが、現場での運用が可能かどうかをお考えいただいた末、ご納得いただけました。
②特定技能の「支援担当者」の中立性による技術指導の制約、語学指導との線引き
特定技能の支援担当者は、特定技能外国人と同一部署では許可されません。そのような中立性が法令上求められます。したがって、「縦のライン」である上司であってはなりません。他部署である必要があり、本件では「技術の指導」を諦めることが必要でした。
外国人従業員に任せたい翻訳・通訳のニーズ
しかし、それでは企業の業務が狭められ、外国人雇用のデメリットが大きくなります。会社は外国人には語学を活かした業務を任せたいニーズが多いのです。
そこで議論した結果、外国人らへの日本語を指導するサポートのポジションは存在しました。したがって、語学の指導を技術の指導から線引きすることで成り立つと考えました。
さらに日本語が不便な国籍の外国人には、同じ国籍者の翻訳・通訳も必要となります(この場合、通常、N3以上の日本語能力は必要とされる運用があります)。
この点、指導であれば上司とされると考えることもできますが、基本的には人事などが行う教育は、上司が行うものと別であり育成プログラムの実行です。これを現場つまりOJTで行うことは「縦のライン」ではないと考えることができます。
また、直接的に技能を活かした業務でもないため、間接部門と捉えることもできます。
実体を伴う「技術・人文知識・国際業務ビザ」に該当する専門業務の決定
語学の指導なら「技術・人文知識・国際業務ビザ」の基準に適合します。
その業務量では当然少ないのですが、現場でもOJTで語学の指導をしながら、ペーパーワークも業務量が見込むことができました。中立性があるため、特定技能の「支援担当者」の業務が可能と判断できるからです。そのジョブディスクリプションを作成し、建設業である会社とも合意し、証拠書類を集めました。申請では証拠が必要であり、当該業務に関する業務資料の収集をしたうえで、さらにその説明が必要になります。
現場で通訳などを行う業務の場合、許可後の就労リスクとして単純就労をしないかの検討
現場で行う言語対応は、時間が経つにつれて作業をメインに行ってしまうのではないかなどリスクがあったため、本当に業務が多く存在するかも含めて、慎重に考えました。
そこで、現場監督などマネジャー又はサブマネジャー以上の立場の方が現場で指示をする際、どこまで日本語を技能者に理解させることが重要かという観点で考えました。それで本当に必要な業務かどうか、また十分な業務量がありそうかどうかです。
この点、サッカーの監督を想像しました。例えば、日本代表のトルシエ監督は、フィールドという現場で細かな作戦や方法を伝えるでしょう。その通訳は、まさに職人などをはじめとしたプレイヤーに考えや意図を理解させる必要があります。さらに外国人もまた日本人に意思疎通が多く必要です。
さらに、メディアへの発信においても通訳は重要です。これは建設現場でいうところの、取引先や施主、住民への発信です。
また、安全関係や法定の掲示物の翻訳・通訳も業務として必要でしょう。
したがって、外国人プレイヤーが多い建設現場という状況においては、単純就労をしないで現場で通訳をする業務が相当程度存在すると想像し結論を出せました。
結果
上記の実態の確定後、申請を行いました。
結果は2か月ほどで許可でした。
この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他