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コラム

2024年07月01日 経営・管理ビザ

M&A等で外国法人に日本の株式譲渡をする場合の外為法や投資規制

M&A等で外国法人やその日本法人に、日本会社の株式譲渡をする場合の外為法や投資規制

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Q. M&Aその他、外国法人や外国人に日本の株式譲渡をする場合、外為法や投資規制はありますか?

 

A.  はい。対内直接投資や特定取得による法規制があり、その検討が必要です。その概要としては、非居住者による会社設立、株式譲渡、役員就任、一定の取引等に該当する場合、事前届出と事後報告などの事前と事後の手続に大きく分かれます。

 

 

株式譲渡における対内直接投資と特定取得とは

まず、業種の該当性などが、対内直接投資と特定取得で異なります。特定取得とは、外国投資家が、株式や持分を、「他の外国投資家」から譲り受けることです。

 

根拠:

Q29.特定取得の定義

特定取得の定義を教えてください。

 

A. 特定取得とは、外国投資家が国内の非上場の会社の株式または持分を他の外国投資家(Q2.参照)からの譲受けにより取得することをいいます(法26条3項)。対内直接投資等には該当しません。

出典:外為法Q&A https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/data/tn-qa.pdf

 

 

 

対内直接投資・特定取得等の規制の判定要素

この判定は重要であり、谷島行政書士法人グループの場合、最初に次の重要な要素を検討します。

1. 非居住者面:

投資主体は外為法における外国投資家か(「非居住者」である外国法人や外国人等)

2. 投資形態面:

規制される支配又は株式/持分取得などの投資か(一定の支払・貸借・取引も規制有)

3. 手続の区分面:

投資する会社の事業が、事前届等に該当する指定業種・コア業種か

 

例:

外国法人による会社設立等の場合は、対内直接投資の規制を受け、事前届出という規制を受けるかどうかが業種範囲で異なります。

いずれにしても事後報告はほとんど必要です。

 

参考:

Q29.特定取得の定義

特定取得の定義を教えてください。

 

A. 特定取得とは、外国投資家が国内の非上場の会社の株式または持分を他の外国投資家(Q2.参照)からの譲受けにより取得することをいいます(法26条3項)。対内直接投資等には該当しません。

 

 

対内直接投資等とは、外国投資家(Q2.参照)が行う、次の取引または行為をいいます(法26条1項、直投令2条16項1~7号)。

 

 (1) 国内の上場会社(店頭公開会社を含みます。以下「上場会社等」といいます。)の株式または議決権の取得で、それぞれ出資比率または議決権比率が1%以上<注1>となるもの。なお、この場合の出資比率および議決権比率には、当該取得者と密接関係者(Q6.参照。以下同様です。)である外国投資家が所有等するものを含みます。 ― 出資比率とは、所有する株式の数と一任運用((10)参照)の対象とされる株式を合計した株式の数の発行済み株式の総数に占める割合をいいます(以下同様です。)。 ― 議決権比率とは、保有等議決権の数の総議決権数に占める割合をいいます(以下同様です。)。なお、保有等議決権には、自己または他人の名義をもって保有している議決権に加え、一任運用((10)参照)、議決権代理行使受任((11)参照)および議決権行使等権限((12)参照)に係る議決権を含む点にご留意ください(直投令2条9項)。 <注1> 非居住者が居住者の株式を取得する場合で、出資比率および議決権比率が1%未満のときは資本取引となります。 ― Q13.(9)および(10)に記載の取引について、届出および報告の手続が不要になるため、結果として実質株式<注2>または実質保有等議決権<注3>ベースで出資比率または議決権比率が 1%以上になる場合にのみ、届出および報告の手続が必要になります。 <注2> 実質株式とは、議決権等行使等権限(株主としての議決権その他の権利を行使することができる権限または当該議決権その他の権利の行使について指図を行うことができる権限をいいます。以下同様です。)が株式を所有するもの以外のものに委任され、かつ、当該委任により当該株式を所有するものが当該株式に係る株主としての議決権その他の権利を行使できない場合の株式以外の株式をいいます(以下同様です。)。 <注3> 実質保有等議決権とは、議決権行使等権限(株主としての議決権を行使できる権限または当該議決権の行使について指図を行うことができる権限をいいます。以下同様です。)1 が保有等議決権を保有するもの以外のものに委任され、かつ、当該委任により当該保有等議決権を保有するものが当該保有等議決権を行使できない場合の保有等議決権以外の保有等議決権をいいます(以下同様です。)。

 

 (2) 国内の非上場会社の株式または持分を取得すること。ただし、発行済み株式または持分を他の外国投資家からの譲り受けにより取得する場合は除く<注>。 <注>  国内の非上場会社の株式または持分の外国投資家からの譲受けは、対内直接投資等ではなく、特定取得として規定されています。詳細は、後記特定取得の項で説明します。なお、特定取得が居住者および非居住者の間で行われる場合には、資本取引としての手続が必要なケースもありますので、別冊の「外為法Q&A(資本取引編)」をご覧ください。

 

 (3) 個人が居住者であるときに取得(昭55.12.1以降に取得したものに限ります。)した国内の非上場会社の株式または持分を、非居住者となった後に外国投資家に譲渡すること。

 

 (4) 外国投資家が①国内の会社の事業目的の実質的な変更(当該会社が上場会社等の場合、外国投資家が総議決権数の3分の1以上を保有している場合に限る<注1><注2>。)または、②取締役もしくは監査役の選任に係る議案<注3>、③事業の全部の譲渡等の議案<注4><注5>(②③については、当該会社が上場会社等の場合、外国投資家が総議決権数の1%以上を保有している場合に限る<注6>。)について同意すること<注7>。

出典:外為法Q&A https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/data/tn-qa.pdf

 

 

事前届出と、事後報告・実行報告などの規制区分

外国法人などによる株式取得や株式会社・合同会社設立などの行為は、基本的に事前または事後に何らかの届出が必要と考えてよいです。なぜなら、非居住者の株式取得や支配などはほとんどが実行報告つまり事後の手続が生じます。漏れてしまった場合、罰則にも注意が必要です。

 

投資実行の注意点も含めて、投資の制約として投資類型や方法に応じた手続、あるいは審査中の禁止期間などの一定の規制があります。

 

なお、対外直接投資や、貸し借りについての特定資本取引などの類型の詳細は、ここでは割愛します。

 

(1) 外国投資家の国籍または所在国(地域を含む。)が日本および掲載国以外のもの。

(2) 投資先<注2>が営む事業に指定業種<注3>に属する事業が含まれるもの(事前届出免除制度(Q5.参照)を利用した場合を除く。)。

(3) イラン関係者<注4>により行われる、次の行為に該当するもの。

 

事後届出があることで、検討をせずに外国人会社設立や株式譲渡後に手続をしようと考えてしまうことは問題です。なぜなら、事前届出となるかどうかは、指定業種・コア業種とされている一定業種に該当するかどうかの調査や、あるいはその業種の事業運営や新事業としての変更などが見込まれる場合に可能性がでてくるからです。

 

さらに、それが事前届出に該当する場合、通常の株式譲渡のように契約書や、議事録、譲渡承認の請求書面などの手続と異なり、実態から禁止されてしまう期間があることに注意すべきです。

この点、指定業種・コア業種や、金額、国等に応じて、事前または事後の手続および事前届出免除が変わるため、コンプライアンスはもちろん、禁止期間における違反や刑罰を避けるために、専門家に相談し進める必要があります。

 

 

手続面:対内直接投資・特定取得等の概要

まず、業種の該当性などを調査し、最新の告示などの範囲で、事前届出をすべき業種かどうかの判断が必要です。

具体的には、株式の取得の前後で手続が生じます。外為法に基づき財務大臣や分野ごとに所管の各大臣に対して日本銀行を窓口として事前届出や、取得後の事後報告・実行報告をしなければなりません。

その後は、窓口が各省庁に割り振られます。

 

                                                                                                                                                                 

指定業種

                                                                                                                                                                              この指定業種に該当すると、原則、事前届出の判定となります。年々規制範囲が広がっており,過去に外国人役員選任,外国法人支配や投資について、問題が無くても定期的に確認する必要があります。

 

コア業種

電気通信やライフラインの他、より厳格な規定がされている業種です。この業種に該当する場合は、事前届出免除の制度がある場合でも免除されません。

なお、武器転用ができる場合は、業種限定もありません。

 

コア業種該当判定例

 1. 通信業:

電気通信事業者のうち、複数市町村にまたがる事業者

 2. 軍事転用可能な汎用品:

限定無し(例えば、炭素や半導体の関連も幅広く検討)

                                                                                                                                                                     

質問状と回答の膨大な対応

 指定業種の類型に応じて,事業所管大臣が割り振られます。基本はそれを提出する際に判断し、宛名を記載の上,該当すると思われる業種を書いて提出します。この点,多すぎると、質問状が複数の大臣から来て,膨大な回答をすることになります。

 

事前届出の禁止期間

禁止期間においては,株式譲渡や設立,投資なども禁止され、その間審査結果に応じて実行を待たなければなりません。

 

 

外為法違反の刑罰

外為法違反の中でも、事前届出に該当するにもかかわらず、それを偽って届出した場合などは1億円以上の罰金刑を科されることがあります。それを日本で代理する者も同様であり、注意が必要です。

この違反は、経済安全保障上の国家利益にかかわり、具体的には技術流出も法令上の国益と考えられます。

 

外為法違反の行政処分等

処分を受ける可能性がある違法な株式譲渡や設立を実行した結果、事業継続することにはリスクがあります。ちなみに行政処分に時効はありません。

もし、わからないまま甚大な損害を生じることがないよう、専門家に相談することをおすすめします。

 

金額の検討その他:対外直接投資の規制に類する資本取引

支払や貸し借りによっても対外直接投資または資本取引の手続が生じえます。近年のように円安の局面では特に為替換算に注意しなければなりません。

 

代行や相談可能な特定行政書士の選定

谷島行政書士法人グループは,グローバル企業,外国法人に対して,ビザや許認可規制のリーガル面すべてに対応できるワンストップグループです。

なお、特定行政書士は、行政処分に対する不服申し立て等の代理が可能であり、責任を一貫して持つことができます。ぜひご相談ください。

 

結論

年々、日本への投資は活発化しており、円安局面では、特に加速化している外国法人の投資がニュースになっております。

そのような局面においては、届出の制約を受けないように最初の方針決定が重要です。

弊社には、そのようなニーズから御依頼を考えられる外国法人や外国人が出資や役員となっている日本法人、グローバル企業も多くいらっしゃいます。ぜひご相談ください。

 

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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