『特定技能』と『技術・人文知識・国際業務』―ホテル業界での外国人雇用に適した在留資格とは?
2025年06月20日
宿泊特定技能技術・人文知識・国際業務
『特定技能』と『技術・人文知識・国際業務』―ホテル業界での外国人雇用に適した在留資格とは?

現在日本のホテル業界では、インバウンド需要の回復や人手不足を背景に、外国人人材の採用がますます重要となっています。
しかし、外国人を雇用する際には業務内容に合った 適切な在留資格を選ぶことが不可欠です。本記事では、ホテル業界でよく使われる二大在留資格である「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」を、採用側の視点から徹底解説・ 比較します。
目次
1. 特定技能とは?(宿泊分野)
「特定技能」は、2019年4月に創設された新しい在留資格で、特に人手不足が深刻な分野の外国人受入れを目的としています。
ホテル業界では、「特定技能1号(宿泊分野)」が該当します。
● 特定技能(宿泊分野)の基本概要
- 対象業務:
フロント業務、企画広報、接客、客室清掃、館内清掃、ベッドメイキング、レストランサービス、施設管理等。 - 必要条件:
① 宿泊業技能測定試験に合格
② 日本語能力試験(N4程度)合格
または、技能実習2号を良好に修了していること。 - 在留期間:
1年・6か月・4か月の更新制で、通算最大5年間。 - 家族帯同:
基本的に不可。
◆ 実例:特定技能1号で働く外国人スタッフ
例)ベトナム人のNguyenさん(22歳)
Nguyenさんは、母国ベトナムで宿泊業の特定技能試験に合格し、
日本のホテルチェーンに客室清掃スタッフとして採用されました。
業務は主にベッドメイキング、浴室清掃、備品管理、館内清掃。
単純作業が含まれるため、「技術・人文知識・国際業務」では対応できないが、「特定技能」であれば問題なく従事可能です。
宿泊分野の特定技能の特徴と魅力
- 現場負担を軽減
即戦力の外国人スタッフを雇用し、ベッドメイキングや清掃などの現場作業を担ってもらえる。 - 人材の多様化
ベトナム、ミャンマー、ネパールなど多国籍の人材が受け入れ可能。 - 短期戦力化が可能
技能試験済の人材なので、入社後の研修期間を短縮できる。
特定技能1号の採用における注意点
- 長期的な雇用は難しい。
「特定技能2号」になればよいが、そうでないと通算在留期間は最大5年
- 永住・高度人材にすぐになれない。
「特定技能2号」になればよいが、そうでないと永住許可申請などができない。
- 家族帯同は不可
「特定技能2号」になればよいが、そうでないと本人のみの就労資格で、家族を日本に呼ぶことはできない。 - 建設など分野特有の手続き有:例. 受入れ計画書の提出義務
企業は受入れ体制を整え、法務省だけでなく国土交通省等に事後またはに対し事前の申請や届出が必要。
2. 技術・人文知識・国際業務とは?
「技術・人文知識・国際業務」は、いわゆる「就労ビザ」の一つで、専門的知識や技術を要する業務に従事する在留資格です。
単純労働は認められず、学歴や専門知識、実務経験が重視されます。
● 技術・人文知識・国際業務の基本概要
- 対象業務:
① 技術分野:ITエンジニア、建築設計、システム開発
② 人文知識分野:経理、総務、法務、ホテルフロント、企画・マーケティング
③ 国際業務分野:通訳、翻訳、海外取引、海外顧客対応 - 必要条件:
① 学歴:大学・短大・専門学校(専門課程)卒業(関連分野)
または
② 実務経験:10年以上の実績(例外あり) - 在留期間:
1年、3年、5年(更新可能、制限なし) - 家族帯同:
可能(配偶者・子が家族滞在ビザを取得)
◆ 実例:技術・人文知識・国際業務で働く外国人スタッフ
例)インドネシア人のAyuさん(26歳)
Ayuさんは、インドネシアの大学で観光学を学び卒業。
日本語能力試験N2を取得後、日本の高級ホテルのフロントスタッフとして採用されました。
主な業務は、外国人観光客のチェックイン・チェックアウト、宿泊予約管理、観光案内、英語対応。
単純作業ではなく、専門性・語学力・対人スキルが求められる業務であるため、「技術・人文知識・国際業務」での採用が可能となります。
技術・人文知識・国際業務の特徴と魅力
- 高度人材の確保
語学・観光・マーケティングなどの専門性を持ったスタッフを確保できる。 - 長期雇用が可能
更新制限がないため、長期的な育成・キャリア形成ができる。 - 家族帯同が可能
優秀な人材を家族ごと日本に受け入れ、生活基盤を安定させることができる。
技術・人文知識・国際業務の採用における注意点
- 単純労働は不可
清掃や荷物運び、配膳、皿洗い等は業務対象外。 - 学歴・専門性の確認が必要
卒業証明書、成績証明書、業務内容との関連性を精査する必要がある。 - 入管審査のハードルが高い
職務内容・雇用契約書・会社概要等の書類を揃え、適切に説明できる体制が求められる。
3. ホテル業界における比較
特定技能 vs 技術・人文知識・国際業務
以下は、ホテル側の採用担当者が押さえるべき比較ポイントです。
項目 | 特定技能(宿泊分野) | 技術・人文知識・国際業務 |
対象業務 | 宿泊業務全般(清掃・ベッドメイキング含む) | フロント、企画、広報、海外顧客対応(単純労働不可) |
必要条件 | 技能測定試験・日本語試験合格 | 大卒・専門卒(関連分野)、または10年実務 |
在留期間 | 通算最大5年 | 更新制限なし(長期雇用可能) |
家族帯同 | 不可 | 可能(家族滞在ビザ取得可) |
採用メリット | 即戦力の宿泊業人材/単純作業も可/現場負担を軽減 | 高度人材の採用/長期育成・マネジメント可能/キャリア形成 |
採用デメリット | 雇用期間が限定/更新回数に制限/家族呼び寄せ不可 | 単純作業は不可/職種が限定される |
4. 採用担当者が押さえるべき注意点
在留資格の確認は必須
- 在留カードで資格・期間・活動内容を確認。
業務内容が資格範囲内か確認
- 特定技能は単純労働も可。
- 技術・人文知識・国際業務は専門的業務がメイン。
適切な労働契約を結ぶ
- 労働条件通知書・雇用契約書で条件を明示。
入管法違反リスクを理解
- 在留資格に合わない業務をさせると、不法就労助長罪の対象になる可能性があります。
5. 行政書士法人のサポート内容
谷島行政書士法人グループでは、ホテル業界の外国人採用をトータルでサポートしています。
- 在留資格確認・助言
- 特定技能、技術・人文知識・国際業務の申請書類作成代行
- 採用スキーム・就労体制の整備支援
- 入管手続き、更新・変更手続き代行
谷島行政書士法人グループでは、採用前からのご相談、ビザ申請、その後の在留資格の管理までワンストップでのサポートが可能です。
外国人採用を成功させ、安心・安定した雇用を実現するために、外国人のホテル業界採用に関するご相談は、当グループまでお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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