谷島行政書士法人グループ

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コラム

2025年01月09日 在留資格一般

交通違反・罰金や犯罪歴でビザが不許可?在留(認定、変更、更新)申請類型毎にリスクを徹底解説

在留(認定、変更、更新)許可申請では上記の通り、申請書に処分歴の記載欄があります。これは「犯罪処分歴」、「犯罪歴」あるいは「処分歴」と表現されます。
このように、犯罪処分歴は、入国時の申請である在留資格認定証明書交付申請に限りません。在留資格変更許可申請でも更新許可申請でも「処分歴の記載」が必須です。

それではこの欄に記載すべき処分歴はどこまで記載すればよいのでしょうか?キーワードとして、「刑事処分」や「交通違反等」はよく論点として相談されます。つまり、交通違反の反則金もすべて含まれるのでしょうか?

谷島行政書士法人グループではそのような多くの相談対応をした結果、類型や程度を分析してまいりました。以下の通り、類型ごとに妥当な解釈をしております。それらを、事例を交えて解説してまいります。

 

この解説が必要な方
・外国人を雇用する企業
・外国人が親族や知人にいる人
・処分や罰金刑を言葉として聞いたことがあっても、これが刑事上の責任なのか、行政上の責任で済むのかなど、その類型がわかれば、外国人の場合、それが申請の際にどれくらいひびくのか見込みをつけたい人。
・「交通違反でお金を払ったことがある」という意味や、「赤切符」「青切符」の違いを認識したい人
・「在留資格認定と資格変更・期間更新とでは結論が異なる」理由や根拠を知りたい人

 

この解説でわかること/目次

罰金その他違反についての、在留申請と永住許可申請との違い

行政文書における処分歴の申告記載欄に書くべき基準と期間

運用における処分歴の基準

刑事処分と、交通違反の反則金・罰金

在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドラインの重要性から基準となる解釈

罰金などの素行不良が直接の要件とならない申請類型とは

 羈束行為(きそくこうい)とは

 「非虚偽性」と「素行善良」の違い

 「上陸拒否事由」と「素行善良」の違い

交通違反の反則金と、犯罪である罰金刑の違い

過料(秩序罰)を受けた「一時不停止」の交通違反歴があった場合、不許可になるか

罰金刑(刑事罰)を受けた交通違反歴があった場合、不許可になるか

不許可になりえる刑事処分の範囲

結論

 在留資格認定証明書交付申請

 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請

 

 

罰金その他違反についての、在留申請と永住許可申請との違い

上記在留申請の項目の類似として、永住許可申請書には、以下の項目があります。

 

永住許可申請書:
“13.犯罪を理由とする処分を受けたことの有無 (日本国外におけるものを含む。)  (Criminal record in Japan / overseas)”

これは在留資格(認定、変更、更新)許可申請の以下の項目(上記)とは少し異なります。

 

在留資格(認定、変更、更新)許可申請書:
“13.犯罪を理由とする処分を受けたことの有無 (日本国外におけるものを含む。)※交通違反等による処分を含む。Criminal record (in Japan / overseas)※Including dispositions due to traffic violations, etc.”

 

こうみると、在留申請の方が広いように思えます。
しかし、交通違反のあらゆる違反が申請書に記載すべき罰金刑等の処分歴となるかについて、そうではありません。法令や行政文書から妥当な解釈を導くことができるからです。

 

行政文書における、処分歴の申告記載欄に書くべき基準と期間

違反歴の申告の基準については、私の知る限り、いまだ行政の審査基準を定める文書として存在しておらず、担当官によっても時期によっても異なり、明確な回答はありません(2025年1月6日時点)。

その中でも行政文書等の中で、参考になる行政回答として以下のQ&Aがあります。

Q24申請書(在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、在留資格認定証明書交付申請等)に犯罪歴を記入する欄がありますが、過去何年前のものまで記入する必要がありますか。

A. 過去何年前までという限定はありませんので、日本国内・国外を問わず、犯罪を理由として処分を受けたことがある場合は、全て記載してください。

入管庁HP:https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html

 

在留申請に処分歴を記載すべき期間について、処分歴の期間の制限はありません。犯罪についてはすべて記載することになります。ここでいう「犯罪」とは、刑事処分を受ける行為を基本とします。
Criminal recordという英語は刑事処分を受けた犯罪歴を指すと解されます。では犯罪歴とは何かが重要です。

 

運用における処分歴の基準

運用上の参考として、以下の行政書士の「注意的記載」とする解釈が私の感覚に近しいところです。

1. “「※交通違反等による処分も含む」は、記載すべき範囲を拡大したのではなく注意的な記載ということと解釈してよいのかもしれません。”
2. “蛇足ですが、交通違反以外の刑事事件での不起訴処分は書く?書かない?
>答えは、書かない(書かなくてもよい)です。これも理由は同じで、罰金刑以上は書く(書かなくてはならない)からです。

※ 2024年2月26日 東京入国管理局審査管理部門に確認
 本記事の内容で間違いないことを確認しました。(ひょっとして運用に変化があるかもと思ったからです。)”
引用元:行政書士 IMMIGRATION DOOR to JAPAN :https://visa-niigata.com/kotsuihan5191/

私の場合は前科前歴の基準でなく、処分歴の記載であるため、「科料」も含まれると考えます。しかし、科料という刑罰は罰金刑に比べ圧倒的に少ないため、上記の通りで問題ありません。

さらに、永住許可申請との違いの他に在留資格取得許可申請の類型も考慮できますが、原始的に取得する子どものケースが多いため、あまりここでは言及しません。ただし、在日米軍基地関係者の場合は、問題になりえます。

 

刑事処分と、交通違反の反則金・罰金

結論としては、まず、何年前であろうと刑事処分歴があれば必ず記載すべきこととなります。
又は過去の交通違反であっても、それが入管にとって重要な行為であれば記載すべきとなります。
この点、基準があいまいと思われますが、より具体的な基準があります。実際に、依頼された行政書士が、個別に不許可リスクが高まるかどうかを受任時に確認します。

具体的には、罰金を受けている場合、不許可リスクが高まります。なぜなら罰金とは「罰金刑」であり、刑事処分を指すことになります。
例えば交通違反の罰金は、在留申請と永住許可申請で違いがあります。永住許可申請の方が、より不許可リスクが高まる経験則があります。

ただし、在留申請でも十分注意が必要です。
刑事処分その他入管にとって看過できない不良行為となれば、以下のガイドラインが根拠として、「在留資格変更許可申請」と「在留期間更新許可申請」の場面で不許可リスクとなります。

 

4 素行が不良でないこと
 素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。

在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン、出入国在留管理庁平成20年3月策定(最終改正令和6年10月):https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html

 

在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドラインの重要性から基準となる解釈

上記ガイドラインから、「善良」でない、さらに「不良」とされるかについては、次の2つが対象となると考えられます。
1.  刑事処分
2. 1を除く出入国在留行政上、看過できない不良行為

 

罰金などの素行不良が直接の要件とならない申請類型とは

在留資格認定証明書交付申請では、このような基準が法令要件になりません。なぜなら、在留資格認定証明書交付申請は上記ガイドラインが適用されない条文が適用され、さらに「羈束行為」だからです。

 

羈束行為(きそくこうい)とは

羈束行為とは、裁量行為の反義語です。簡単に言うと「法令に定める基準の他に、行政が裁量をもって基準を上乗せしてはならない」という行政行為です。
羈束行為である以上、在留期間更新許可申請などの法令要件として「相当性」の基準を、在留資格認定証明書交付申請の基準に準用するなどで上乗せすることはできません。準用するなど適用できる条文で存在しない以上、それを基準として不許可にした場合、入管が違法となります。

 

「非虚偽性」と「素行善良」の違い

在留資格認定証明書交付申請の場合、似ている概念として「非虚偽性」があることに注意が必要です。
すなわち、過去の過ちがあった場合、それだけで認定不交付になることはないにしても、「社会通念上、虚偽でないとはいえない程度」の要件を備えることが必要です。

 

「上陸拒否事由」と「素行善良」の違い

前科前歴があっても、又はそれらがなくても、上陸拒否事由に該当することがあります。それも別の基準で不交付になります。安易に判断してはいけません。

 

交通違反の反則金と、犯罪である罰金刑の違い

まず、ひとくちに処分といっても、以下の区分があります。
1. 刑事処分
2. 行政処分

つまり、行政処分の場合は、刑事処分に該当しません。
ただし、行政処分を理由として受けることがある罰金・反則金などの行政罰もあります。行政罰については、以下の2つがあります。
1. 行政刑罰:科料、罰金刑、拘禁刑(旧:懲役・禁錮刑)など)
2. 秩序罰:過料など

1の行政刑罰とは刑事処分であり、その場合は、不許可リスクが大きく高まります。特に5年以内であれば刑の言い渡しの効力が存続しているため、相当注意が必要です。
なお、罰金刑は5年満了すれば、刑の言い渡しの効力は消滅します。

刑法

第34条の2
第1項 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。

 

一方で、2の秩序罰の場合は全く異なります。
具体的に、交通違反の反則金納付ですむ処分は、多くは秩序罰における「過料」という類型であり、刑事罰である「科料」や「罰金」と異なります。罰金以上でなければ刑事処分上の前科はつきません。
 例:交通違反であって、検察や裁判所が関与せずに納付すれば終わる「一時不停止」の違反に対する処分など

 

過料(秩序罰)を受けた「一時不停止」の交通違反歴があった場合、不許可になるか

「一時不停止」違反で過料に終わった場合は、重大な刑事処分ではありません。不許可リスクがあるものの、それ単体では不許可になりにくいと結論付けられます。
なお、交通違反の反則金を無視すると行政刑罰になることもあるため、納付していない場合などは事情が異なります。

 

罰金刑(刑事罰)を受けた交通違反歴があった場合、不許可になるか

交通違反でもいきなり罰金となることがあります。つまり刑事処分です。例えばスピード違反です。

スピード違反などで刑事処分かどうかの記憶・記録で、わかりやすいのは、いわゆる赤切符です。これは刑罰になり、在留申請や永住申請に大きく影響します。
しかし、反則金は「過料」であり、青切符です。刑罰である罰金と区別されます。したがって、申請書に記載は必須とはいえないこととなります。
ただし、刑事処分でなくても、「出入国在留行政における重大な違反」の場合は注意が必要です。

 

不許可になりえる刑事処分の範囲

なお、刑事処分であってもすべてが不許可になるわけではありません。ただし、退去強制事由に準ずるものとは例示である程度に留意した方が良いです。総合的に消極的要素を勘案される中での要素となってしまうからです。

 

結論

在留資格認定証明書交付申請と、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請では結論が異なります。

 

在留資格認定証明書交付申請

犯罪歴等は記載すべきですが、不許可となるリスクの見積もりは、「非虚偽性」と「退去強制事由該当性」が法令要件です。素行善良は直接の要件ではありません(羈束行為だからです)。

 

在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請

一方で、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請などでは、「素行善良」要件がガイドライン上で具現化された「相当性」の要件となります。不許可となるのは、素行善良要件に照らして、「不良」とされる次の2つが対象となると考えられます。
1.  刑事処分歴
2. 1を除く出入国在留行政上、看過できない不良行為歴

なお、在留資格取得許可申請では、原始的に取得する子どものケースが多いため、在日米軍基地軍人やその関係者でなければ、あまり考慮しません。

いずれも上記理論に基づき判断しますが、不明点があれば、専門の行政書士にご相談ください。

なお、このような論点にニーズがあれば、別の解説では永住許可申請についても執筆したいと思います。

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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