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在留資格変更・更新申請が不許可になる入管裁量は入国時の認定申請と異なるか

2025年02月08日 行政法実務在留資格一般

在留資格変更・更新申請が不許可になる入管裁量は入国時の認定申請と異なるか

在留者の変更許可申請や更新許可申請などは在留資格認定証明書交付申請の時と要件が異なります。変更や更新は、申請人の要件である業務や学歴、所属機関の要件である資本関係、規模、担当者の年数その他の要件を定める「上陸基準省令適合性」など複数項目の要件を備えることで「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」に適合させる必要があります。

しかし、それらを網羅したつもりでも不許可になる事例があります。なぜなら、変更・更新許可申請と在留資格認定証明書交付申請の要件の厳密さや、相当性の要素も入国時と異なることは別記事でも説明しました。

加えて、裁量も異なるからです。

谷島行政書士法人グループ等の専門行政書士としては、申請人が一見これを満たしても、なお不許可になることを防がなければなりません。不許可になるかどうかが審査官次第とならないように、その理由と防止策、そのような不意打ちとなってしまった場合の再申請等の対応を解説してまいります。

 

目次

ガイドラインを網羅しても不許可になる「広義の相当性」等のリスク

入管裁量の3種類

要件裁量:法的評価の要件該当性における裁量があるが事実認定では無いこと

効果裁量:変更・更新で要件を満たしても不許可になりえるリスク類型

時の裁量

不許可時の対応は、再申請と訴訟はどれがよいか

不許可・処分の取消しなど、行政不服審査で救済が可能な入管手続もある

行政書士の代行と、法務コンサルティングの違い

要件裁量、効果裁量及び時の裁量には、先回り立証が重要

不許可の場合、再申請のプランニングを万全に行い、裁量逸脱を防ぎ、審査を迅速にする立証が重要

取消等不利益処分がないよう虚偽を防ぎ、許可後も実態からの適法化と立証が重要

まとめ

 

ガイドラインを網羅しても不許可になる「広義の相当性」等のリスク

まず、相当性の観点で、ガイドラインをすべて満たしたうえでも不許可もありえます。入管でも他の判断要素があると明示されております。

「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」:https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
 ~略~
代表的な考慮要素であり、これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更又は更新を許可しないこともあります。

 

この不許可の法令根拠は、「相当性」と表現される条文があります。相当性は上記要件のような「狭義の相当性」だけではありません。その他の要素を考慮できる「広義の相当性」もあるからです。

しかし、不当な不許可や、行政平等原則違反があってはなりません。根拠がなければ、それは「相当性」の範囲でもなく違法・不当な処分となります。ただし、裁量があればそれは適法です。そうすると、問題は、裁量がどこまで認められるのかということです。

 

入管裁量の3種類

行政法上、裁量とは、以下の類型の通りです。

1. 要件裁量
2. 効果裁量
3. 時の裁量

 

要件裁量:評価の要件該当性における裁量であるが、事実認定で裁量は無い

要件裁量とは、事実認定に基づいた事実を法的な要件にあてはめる法的評価段階で行政裁量があることを指します。簡単に言うと要件該当性の判断における裁量です。

まず入管庁が行うのは、要件を満たしているかという証明をされる事実の認定を、立証資料という証拠に基づき行うことです。それを事実認定といいます。この事実があったかなかったかという事実認定は、誰が見ても同じ事実です。

そのため、事実認定の段階は、要件に該当する事実があれば、誰でも同一の結果になり、法務大臣又は入管庁長官でも、国土交通大臣でも。同じになります。
その担当する審査官であっても法令上の要件の事実の存在を認めるかどうかは、裁量の余地はないということです。したがって、事実認定に裁量はなく、自由な判断があれば入管庁は違法になるということになります(ただし、事実認定の裁量を認める判例も高等裁判所で存在します(宇賀克也著「行政法概説Ⅰ」第二版及び高松高判昭和59.12.14「災害の防止上支障がないものであること」という表現自体抽象的、包括的な要件となる事実)。しかし、ここでは扱いません)。

しかし、次に行う法的評価は人によって異なります。そこに裁量があります。もちろん、人によって異なる点は、裁量の逸脱があれば違法になりますし(行政事件訴訟法第30条)、審査官による著しい不公平があれば、行政平等原則において認められないことがあります。それらの意味で違法な不許可も多くあります。

行政事件訴訟法
(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

 

要件該当性における要件裁量の例:

1.技術・人文知識・国際業務ビザの専門性の事実認定は、提出された業務資料などの証拠に基づき、例えば「専門的」とされる業務が要件であるので、その業務の存在という事実があるかないかが認定される。

2.事実があれば、次に法的評価として、例えば「学術的な素養」が必要な業務かどうかの基準の範囲内で要件に該当するかしないかの評価をする。

上記2の該当性判断に裁量があることを要件裁量といい、これは、法務大臣の裁量とされます。

しかし、要件をどう評価するかは個別事情に応じた、すべてがケースバイケースになります。法令や審査基準という全国的な基準を適用する範囲では、行政平等原則も守られ、案件ごとに要件へのあてはめの裁量があるということになります。

ただし、入管審査などあらゆる行政行為では、通常、事実認定段階で裁量の余地がないとされます。したがって、法的評価の裁量というのは、事実に基づかなければならず裁量は限定されることになります。

 

効果裁量:変更・更新で要件を満たしても不許可になりえるリスク類型

入管が要件を満たしても、なお、適法に不許可にできるのは、行政法上「効果裁量」という規定が法令根拠として場合です。要件を満たしてもなお不許可に出来るとなり、またはそのように解釈できる規範があれば、裁量権を行使されます。

しかし、効果裁量は、入国をさせる申請である在留資格認定証明書交付申請では、法令上、認められていません。したがって、要件を満たしているにもかかわらず在留資格認定証明書交付申請が不交付にされた場合は、違法・不当な処分である可能性があります。さらに、反証の機会を与えずに不交付にする事例も多く、更新や変更許可申請より明らかに反証の機会が少ないです。

例えば、在留状況が不良であるとして在留資格認定証明書交付申請が不交付処分にされることがあります。しかし、法令上の要件を満たしている場合、つまり在留状況に関する要件もなく不交付である場合は違法を免れないことになります。さらに、反証の機会もない場合は行政法上の信義則違反にもなりえます。

一方で、変更や更新では、認められることがあります。例えば、政策面でも不許可の理由の実態として使われます。例えば「連れ親」類型の在留資格「特定活動」です。健康保険が外国人に乱用されていると判断されるときに、この不許可は、相当性として適法と考えられます。

なお、厳しすぎる不許可や厳しい条件の許可を選ぶことも法令範囲内で選択できるという「選択裁量」もあります。これも効果裁量の一つです。しかし、目的や情状に照らして目的と規制程度が比例しておらず厳しすぎる場合は、比例原則違反となります。

ちなみに、入管は訴訟を見据えて曖昧な不許可理由を書面として交付するため、後から「理由は、生活保護の乱用がありえ、国益要件に合わないから不許可にした」という反論もあります。しかし、法令が明示的なので正面から説明できる理由ではないと考えられます。

 

時の裁量

時の裁量とは、いつ行政庁が許可などの行政行為をするかについての裁量です。この点、審査期間は、行政手続法第二章で、標準処理期間を定めることになっております。

(標準処理期間)
第六条 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

 

しかし、入管は在留申請では標準処理期間を公表しておりますが、それを守らなくても直ちに違法となりません。行政手続法第二章が在留申請で除外されているからです。

行政手続法
(適用除外)
第三条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。
~略~
十 外国人の出入国、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第六十一条の二第一項に規定する難民の認定、同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定又は帰化に関する処分及び行政指導

 

それであっても、行政手続法で適用がされなくても無制限にしてよいというものではありません。

特に在留資格認定証明書交付申請においては、難解事由があれば長引く審査があり、時の裁量の逸脱とされる程度の1年近い審査がされる案件もあります。この場合は時の裁量に逸脱がありえます。このように、実際に審査が放置され、その期間が6カ月以上に及ぶなどがあれば、時の裁量や行政平等原則に照らして違法・不当になることもあります。

 

不許可時の対応は、再申請と訴訟はどれがよいか

上記の理由から訴訟をしても入管は十分に準備しており、法令で入管に有利なものを熟知して巨大な組織として対応がされます。

したがって案件によりますが、訴訟より、再申請で誤りを正すことが有効です。

 

不許可・処分の取消しなど、行政不服審査で救済が可能な入管手続もある

入管手続では、不許可の取消しを行政不服審査である審査請求・異議の申立て・申出の手続が用意されております。

入管に認められていない効果裁量は、行政法上、違法となることが通常です。この場合、不服申し立てで処分を取消すこともありますが、在留申請では認められていない問題があります。

そのように不服申し立て制度があるのに、なぜ在留申請ではほとんどできないかというと、行政不服審査法という不服申し立ての一般法で、適用除外にされている法令規定があります。それが根拠です。

ただし、登録支援機関申請や、難民認定・補完的保護対象者認定に関する処分、特定技能外国人の受け入れ停止等処分など、一部の手続や不利益処分は、不服申し立てが可能です。

入管がその他の要素で不許可にする事例や法令・基準などの理論と経験を用い、専門の行政書士がリスク分析することが重要です。

 

行政書士の代行と、法務コンサルティングの違い

行政書士への依頼つまりアウトソーシング業務には2種類あります。

1. 手続代行
2. 法務コンサルティング

まず、許認可申請を代行することです。これは一般の企業でもなれれば出来るものであり、通常の許可基準を満たせば、行政書士の価値であるスピードや品質、あるいは人件費削減が提供されることになります。なお、価格は比較的安価です。

次に、法務コンサルティングとは、そのリスク分析を行うことが最重要な価値と考えます。我々はそれをプランニングと呼んでいますが、それが間違っている場合や、重要リスクを見逃している場合は、いかに申請書類をきれいにつくっても不許可になります。

この点、行政書士法人の優れたオペレーションがあるかどうかが要素となります。担当行政書士が誰になっても、一定以上の専門の対応をできることが仕組みづくりされているかということです。

 

要件裁量、効果裁量及び時の裁量には、先回り立証が重要

谷島行政書士法人グループの場合、15年以上にわたって、入管業務の仕組みづくりを行い以下の対応の仕組みづくりをしてまいりました。

違法な不許可や不利益処分がされた場合、重要な突破口があります。これは裁量があっても、入管庁は自ら策定した審査基準に拘束される点です。そのため、先回り予測をして、要件適合に関し、蓋然性が高いことで入管審査官が「これを不許可にしたら審査基準違反となる。」というように納得せざるを得ないような立証、つまり証拠と理由書による説明が行政書士の腕の見せ所です。

① 狭義の相当性
在留資格該当性、上陸基準省令適合性、その他

② 広義の相当性
1の狭義の相当性+個別の事情を勘案して、法令運用や告示・法令にない事例の運用を満たすことができるか

③ 要件裁量・効果裁量による不許可や長期審査をみすえた、先回り対応
 ・申請時に先回り予測した立証資料により、要件裁量があっても、「蓋然性」を高める立証で、許可率を最大限に高める
 ・慎重審査に区分されてしまうような難解事由がある案件は、長期審査二なることを防ぐための立証で、審査期間を短縮する。

 

不許可の場合、再申請のプランニングを万全に行い、裁量逸脱を防ぎ、審査を迅速にする立証が重要

仮に不許可があっても、それが違法・不当な不許可かどうかを分析し、次回申請では、それを正す再申請を行います。まず、プランニングで最初に可能性予測を行います。

 

取消等不利益処分がないよう虚偽を防ぎ、許可後も実態からの適法化と立証が重要

仮に許可されても、それが虚偽申請等の場合は、あとで在留資格の取消しを受けることに怯えることになります。

そのため、申請時は虚偽申請をしないことが絶対です。さらに、事実に違法な点がある場合は適法な事実に変更し、それらを立証することです。

例えば、変更・更新前に、資格外活動違反があった場合は、それを是正していることについて反省文を提出し、現状は適法であることを立証するなどです。

仮に、それでも裁量逸脱があった場合は、違法・不当な不利益処分があったものとして、意見陳述の機会があります。この点、行政手続法では、聴聞・弁明がありますが、除外されている在留資格においても、意見陳述の機会は事実認定のために用意されております。

 

まとめ

以上のように、在留資格認定証明書交付申請では入管の裁量が限定的であり、要件裁量は認められつつ、それは妥当な法的評価でないと裁量の逸脱になることもあります。さらに時の裁量は、難解事案の場合、時に守られていません。

在留資格の変更や更新では、行政の広い裁量があります。その裁量は、要件裁量と、効果裁量、さらに、一定程度の時の裁量があります。

例えば事実に関する資料を提出しているにもかかわらず、「そのような事実は認めない」などとする裁量の逸脱があれば違法となりえます。しかし変更・更新における広義の相当性による不許可は法令上の要件裁量および効果裁量の問題であり、その範囲内なら違法ではありません。

ただし、裁量にも限界があります。たとえば入管庁は審査基準を決めていることに拘束されます。そのため、先回り予測をして、要件充足が確実であることを多くの資料で立証する姿勢が重要です。

これは申請だけでなく、在留資格の取消しや、受け入れ停止などの不利益処分にもいえることです。

そのように、相当性を二段階で考え、さらに不許可時の対応方針も先回りで行うことで事前に防げる不許可もあります。

行政書士法人でも手続代行のみを提供する事務所が多いのですが、谷島行政書士法人グループでは法務コンサルティングを行うことで、上記のリスク分析と評価、さらに対策を適切にできるメリットがあります。お困りの方は、ぜひお声がけください。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。

 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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