定期届出マニュアル:特定技能受入停止処分防止のチェック(2025年改正)
2025年04月28日
特定技能サービス
定期届出マニュアル:特定技能受入停止処分防止のチェック(2025年改正)

内容
定期届出の変更点:支援実施届出も企業が提出
定期届出とは、特定技能外国人の受入れ状況・活動状況・支援実施を定期的に届け出るものです。
2025年4月改正法施行により、年1回の届出で良くなった一方で、随時届の類型拡大と、申請時にチェックしていない資料の提出が必要になりました。具体的には、定期届の準備資料が増え、毎年の基準不適合をチェックされることになりました。
特定技能運用要領○ 入管法施行規則が改正されたことに伴い、これまで在留諸申請時に提出を求めていた特定技能所属機関の適格性に関する次の書類(以下「適格性書類」という。)は、令和7年4月1日以降は、1年に1度の頻度で提出する定期届出「特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に係る届出」(第7章第6節)の添付書類となります。同日以前から特定技能外国人の受入れを継続している機関は、原則として、在留諸申請において適格性書類の提出は不要です。 (特定技能所属機関の適格性に関する書類) ・特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号) ・登記事項証明書 ・業務執行に関与する役員の住民票の写し ・特定技能所属機関の役員に関する誓約書(参考様式第1-23号) ・(特定技能所属機関の)労働保険料の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)社会保険料の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)国税の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)法人住民税の納付に係る資料 ・特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号) ・雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号) |
例えば、以下の事項を確認して提出することになります。そもそも基準不適合になる場合は、提出時にわかってもどうにもならないため、普段からチェックが必要です。すると、防止できる妥当な期間としては、今までの届出は年1回になっても、3か月に1回ごとに基準不適合チェックをした方が良いでしょう。
基準不適合例:
・債務超過
・退職勧奨など非自発的離職
・再入国までの帰国時の有給
・その他
定期届出の改正の新旧まとめ表
定期届出は回数が減った一方で、基準不適合を判定する資料提出が増えました。以下まとめ表にしております。
項目 | 改正前 | 改正後 | 実務上の注意点 |
提出頻度 | 四半期ごと(年4回) | 年1回 | 年次へ移行 |
対象期間 | 各四半期 | 4月-翌3月(1年度分) | 1年分の下記添付資料を準備し定期的にチェックすること |
提出窓口 | 地方出入国在留管理局 | 同左(郵送・持参・電子) | 電子届出は事前登録必須 |
添付資料 | 受入れ状況+支援状況別々 | 新様式に一本化+企業適格性資料を追加提出: ・特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号) ・登記事項証明書 ・業務執行に関与する役員の住民票の写し ・特定技能所属機関の役員に関する誓約書(参考様式第1-23号) ・(特定技能所属機関の)労働保険料の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)社会保険料の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)国税の納付に係る資料 ・(特定技能所属機関の)法人住民税の納付に係る資料 ・特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号) ・雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号) | ・添付資料の情報の他、1年分の勤怠・支援記録を社内で月次チェック氏基準不適合を確認。 ・納税証明は直近年度・最新発行分 |
提出者 | 特定技能所属機関、支援委託の場合支援実施のみ支援機関が届出 | 特定技能所属機関が一本化して提出;もちろん行政書士代理作成と手続き可能 |
定期届出の変更点:支援実施届出も企業が提出
定期届出は、従来登録支援機関が支援実施状況のみ届出、そして、特定技能受け入れ企業が、受入れ状況・活動状況の届出を届け出るものでした。
しかし、今後は、特定技能受け入れ企業がすべてを届け出ることになりました。したがって、企業の資料を登録支援機関が届出することはありません。
もちろん、行政書士への代理の依頼は変わらず可能です。
- 様式の変更: 定期届出の様式も一部改訂されています。改正後の年次報告では、「受入れ・活動・支援実施状況に係る届出書」という統合様式(参考様式第3–6号)が用いられます。従来は受入れ状況と支援状況で書類が分かれていましたが、年次届出では一体的に報告する形式となります。
- 行政書士の代理による手続きは可能ですが、届出義務者は受け入れ企業に一本化となります。登録支援機関は支援実施状況を企業に渡して、報告してもらうことになります。もし登録支援機関がまともに支援実施をしていない場合、今後はごまかしや遅れが企業に見破られることになります。
- 提出方法: 提出先は改正前と変わらず、本社所在地を管轄する地方出入国在留管理局です。
定期届出の変更点:年次届出への移行
定期届出とは、特定技能外国人の受入れ状況・就労状況・支援実施状況を定期的に入管当局へ報告する届出です。改正前は3か月に1度(四半期ごと)**の頻度で、「受入れ・活動状況に係る届出書」および「支援実施状況に係る届出書」を提出する必要がありました。例えば、第1四半期(1~3月)の分について4月15日までに提出、といったサイクルです。
2025年の改正により、この定期届出の頻度が「年1回」に緩和されました。具体的には、対象期間を1年度(毎年4月~翌年3月)とし、その内容を翌年度の4月1日から5月31日までに報告する形になります。例えば2025年度(2025年4月~2026年3月)分の定期届出は、2026年4月1日~5月31日の間に提出する予定となります。
定期届出の内容自体は、基本的に従来から報告していた項目(特定技能外国人の在籍状況、就労日数・時間、支払われた報酬額、社会保険加入状況、提供した支援の状況など)を網羅します。ただし、提出書類面での変更があります。改正に伴い、年次届出時に初めて提出を義務付けられた書類や、新しい様式が登場しています。
- 企業情報に関する書類の年次提出: 上述のとおり、登記事項証明書や各種納税証明書(労働保険料・社会保険料・国税・法人住民税)等は初回申請時には省略される代わりに、毎年1回の定期届出時に提出する運用に変わりました。これにより、入管当局は年次報告で受入れ企業の適正性をチェックすることになります。人事担当者は年次報告の準備として、これら証明書を年度末にまとめて取得・提出する必要があります。定期届出の頻度が年1回になったとはいえ、報告内容が削減されたわけではない点に注意が必要です。むしろ年次報告では追加事項が多くなりました。添付資料も準備しておく必要があります。
1年分の情報をまとめて提出するため、提出漏れのないよう計画的な情報管理が求められます。例えば特定技能外国人の月々の勤怠や支援記録を社内で蓄積し、年度末にスムーズに集計できる体制づくりが重要です。
定期届出の基準不適合と遅滞へのリスク対応
定期届出を怠ることは入管法違反となり、特定技能所属機関としての雇用継続性に関わります。最悪の場合、特定技能外国人の受入れ停止措置など行政指導・ペナルティの対象にもなりかねません。
人事担当者は年1回になったからと油断せず、3か月に1回程度は最低でも基準適合のチェックを顧問行政書士に相談し、確実に適法な状態を保ちながら行いましょう。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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