特定技能受入企業の届出のすべて:入管法改正と処分リスク対応
2025年04月28日
特定技能サービス
特定技能受入企業の届出のすべて:入管法改正と処分リスク対応

内容
制度改正の背景と概要
定期届出の変更点(年次報告への移行)
随時届出の変更点と新設・廃止項目
雇用契約終了の届出(退職・解雇時の報告)
受入れ困難時の届出(受入れ継続が難しい場合)
基準不適合に係る届出(受入れ企業・支援機関の要件不適合)
支援実施困難に係る届出(支援業務が遂行できない場合)※新設
行政書士など代理人による届出手続きについて
特定技能届出制度改正の新旧対照表
人事担当者のよくある質問(Q&A)
この本編は全体像を解説します。それぞれの届出類型にフォーカスした記事は以下のとおりです。
特定技能届出制度改正の背景と概要
特定技能制度の届出ルールが2025年4月に大きく変更されました。この改正は、出法務省令改正に基づくものです。主な背景として、受入れ企業の報告負担軽減と届出項目の整理があります。改正前は「定期届出」を年4回(四半期ごと)提出する必要があり、また「随時届出」の対象事由も多岐にわたっていました。企業からは「頻繁な報告で負担が大きい」「提出書類が煩雑だ」という声もあり、行政側でも届出内容の精査・簡素化が検討されてきました。
そこで2025年4月の改正法施行で、定期届出の提出頻度が緩和される一方で、随時届出については報告すべきケースの追加・整理が行われました。
一方、随時届出では新たに「就労開始の遅れ」や「活動中断(1か月以上活動できない)」場合も報告対象に追加されました。これにより、企業は特定技能外国人が予定どおり就労していない状況なども入管庁へ届け出る義務を負います。
また、提出書類の見直しも行われています。届出様式の変更や一部書類の提出不要化など、全体的に届出手続の簡素化が図られました。
たとえば、特定技能外国人を初めて受け入れる際の在留資格申請時には、改正前は企業の登記事項証明書や納税証明書等を提出する必要がありましたが、改正後はそれらの書類提出が原則不要となり、代わりに定期届出時の「特定技能所属機関概要書」などの資料を記載して提出する必要があります。
随時届出等である「基準不適合の届出」の運用に変更されています。これにより初回申請時の手続き負担は軽減されますが、届出が増えることで企業側の適格性を確認する仕組みに移行したとも言えます。
まとめると、2025年改正のポイントは以下のとおりです。
- 定期届出(定期報告)の頻度緩和 – 四半期ごとの報告を年1回に変更。初回の年次届出は2026年4月~5月に実施。
- 随時届出(都度報告)の対象整理・拡充 – 報告が必要な事由(ケース)の追加・変更。新たな届出類型の新設や不要となる報告の明確化。
- 届出様式・提出書類の見直し – 書式改定および一部書類の提出省略。受入れ企業に関する書類は必要に応じ年次届出で提出する形へ変更。
- オンライン対応の促進 – 入管庁の電子届出システムの利用が推奨され、オンライン申請・届出を行う企業には一部書類提出の免除措置もあり。
以下では、定期届出と随時届出それぞれについて、改正による具体的な変更点を詳しく見ていきます。また、行政書士など代理人による届出についての留意事項も解説します。
行政書士など代理人による届出手続きについて
特定技能の各種届出は、本来受入れ企業(所属機関)や登録支援機関自身が責任をもって行うべき手続きです。しかし実務上、企業が行政書士などの専門家に届出業務を委託するケースも多く見られます。ここでは、代理人による届出に関するルールと留意点をまとめます。
まず大前提として、届出義務を負うのは受入れ企業です。登録支援機関に支援業務を委託している場合でも、届出の提出自体を支援機関に丸投げすることはできません。入管庁も「登録支援機関に届出を委託することはできない」旨を明言しています (特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類))。
したがって、特定技能所属機関(受入れ企業)は、支援の委託有無にかかわらず自社の責任において届出を提出しなければなりません。
その上で、専門の行政書士や弁護士に代理人となってもらい、実際の書類作成・提出手続き代行を依頼すること自体は可能です ([PDF] 特定技能制度に関するQ&A 目次 【制度概要関係】 Q 1 申請書や …)。
これは在留資格申請の代理提出と同様、特定技能に詳しい行政書士に委任状を発行し、企業の代わりに定期届出や随時届出書類を作成・提出してもらうことができます。
行政書士や弁護士は代理なので、入管庁からの連絡や疑いへの追及があっても、受け入れ企業が調査を受ける前に代理人として対応可能です。
期限超過の理由書などにおいても、谷島行政書士法人は対応可能です。
多忙な経営者や人事担当者にとって、煩雑な入管手続きを専門家に任せられるのは大きなメリットでしょう。
上記から、代理提出を利用する際の注意点は以下のとおりです。
- 行政書士等に依頼する: 入管窓口で企業の代理として届出書類を提出できるのは、行政書士・弁護士等に限られます。依頼する際は、その専門家が正当に資格を有しているか確認しましょう。
- 登録支援機関には届出代理どころか、代行資格がない: 繰り返しになりますが、支援委託先の登録支援機関は支援業務のプロですが、届出の提出者とはなり得ません (特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類))。
特定技能届出制度改正の新旧対照とまとめ表
以下に、定期届出と随時届出の改正届出制度のポイントを一覧表(新旧対照表)にまとめます。各届出類型について、改正前後の分類・内容、届出事由(発生要件)、届出期限、概要、および今回の改正における位置付け(新設/統合/廃止/変更)を比較しました。社内資料等にもご活用ください。
(備考) 上記の他にも、雇用条件変更時の届出(特定技能外国人の労働条件を変更した場合の届出)や登録支援機関に関する届出(委託している登録支援機関の変更や契約締結・解除時の届出)なども引き続き必要です。
ただしこれらは改正による大きな変更がなかったため、本表では割愛しています。全ての届出事項について最新情報を把握したい場合は、顧問行政書士へご相談ください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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