谷島行政書士法人グループ

お問い合わせ
Language

育成就労法の転籍、指定区域、人数枠と常勤体制解説(公布確定)

2025年10月02日

コンプライアンス育成就労

育成就労法の転籍、指定区域、人数枠と常勤体制解説(公布確定)

2025年9月30日に育成就労法の政令・省令が公布されました。この確定した範囲に基づき、受入れ企業(育成就労実施者)と監理支援機関向けに、指定区域と転籍の上限制御、受入れ人数枠と常勤人数体制、日本語要件の例外を平易に解説します。

なお、分野別告示の人数枠などは今後制定されます(別ページ作成)

 

内容

はじめに:育成就労法の施行状況と対象読者. 1

1.育成就労法の人数枠、地方など「特定区域」で押さえる要点. 2

  1. 用語の整理. 2
  2. 指定区域と転籍の関係(上限制御と例外). 3
  3. 受入れ人数枠(基本枠/優良加算/地方加算). 4
  4. 常勤人数体制(企業/監理支援機関). 4
  5. 日本語要件(入国時N5未達の例外). 5
  6. よくある誤解と対応. 5
  7. チェックリスト(企業・監理支援機関). 7
  8. 育成就労法施行規則の法令根拠. 7

 

はじめに:育成就労法の施行状況と対象読者

本ページは、公布済みの育成就労法の政令・省令、さらに告示の一部に基づく『確定版』の実務解説です。対象は、受入れ企業(単独型・監理型)や、監理支援機関の経営者のほか、法務・実務担当者となります。

 

1.育成就労法の人数枠、地方など「特定区域」で押さえる要点

本人意向の転籍:在籍育成就労外国人に占める転籍者の割合は1/3以下。 都市部(指定区域外)が地方(指定区域)から受け入れる分は1/6以下(除外規定あり)。

受入れ人数枠:段階式の基本枠+優良加算(2倍)+地方×優良(最大3倍)の考え方。 実際の上限は法人の常勤職員数と分野上限で決まる。

体制要件:企業は『育成就労責任者/育成就労指導員/生活相談員(全て常勤)』を選任。 監理支援機関は常勤役職員について『監理先実施者数÷8』『監理対象外国人数÷40』の両方を満たす配置。

日本語要件の例外:入国時にA1(N5相当)未達の場合、当分の間は相当講習(目安100時間+登録日本語教員可)で代替可。

 

  1. 用語の整理

■ 指定区域(=地方)/指定区域外(=都市部)

人口集積地への過度集中を抑制するため、告示で区域が指定されています。一般に、東京圏・中京圏・近畿圏の主要都市部を『指定区域外(都市部)』とし、それ以外を『指定区域(地方)』とする考え方です。

■ 本人意向による転籍

やむを得ない事情がなくても、同一業務区分かつ、分野ごとに定める在籍期間(概ね1~2年)や技能・日本語の基準を満たす場合に可能。転籍先で新たに育成就労計画の認定を受けます。

なお、転籍に必要な技能水準は以下の通りです。

・技能検定基礎級

・日本語試験A1レベル(N5など)が基本(それ以上の上乗せも分野ごとにあるという例外)

 

 

 

 

出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労及び特定技能制度のイメージ」

 

 

 

  1. 指定区域と転籍の関係(上限制御と例外)

【基本ルール】

A.全体上限:在籍する育成就労外国人に占める『本人意向の転籍者』の割合は1/3以下。

B.都市部集中の抑制:都市部(指定区域外)の受入れ機関が、地方(指定区域)から転籍を受け入れる数は、在籍者数×1/6が上限:

つまり、指定区域の住所である育成就労実施者(企業)であれば、監理支援機関含め優良など他の要件を満たす上で、さらなる人数枠の緩和となり、20分の3が3倍の20分の9(45%)になります。

 

ただし除外される転籍があります。以下は1/3・1/6の割合算定から除外されます。

① やむを得ない事情

② 保護上の特別の理由

③(計画変更に伴う)期間延長者など

 

【カウント方法】 分子=本人意向転籍者数/分母=在籍する育成就労外国人数(施行時の技能実習生を含む)。

《試算例》

在籍者数 転籍者上限(1/3) うち地方→都市の上限(1/6)
18人 6人 3人
24人 8人 4人
60人 20人 10人
  1. 受入れ人数枠(基本枠/優良加算/地方加算)

育成就労の受入れは、段階式の『基本枠』をベースに、優良基準適合(2倍)、実施者・監理支援機関とも優良かつ指定区域(最大3倍)の加算がかかります。

代表例(イメージ):

常勤 101~200人:基本枠 30人(優良で60人、地方×優良で最大90人)

常勤 51~100人 :基本枠 18人(優良で36人、地方×優良で最大54人)

常勤 3~30人   :基本枠 9人(優良で18人、地方×優良で最大27人)

※実際の上限は『基本枠 ∧ 分野別の受入れ見込数(上限)』の小さい方となります。

  1. 常勤人数体制(企業/監理支援機関)

■ 企業:必須の選任(すべて常勤)

育成就労責任者:統括・進捗管理(過去3年以内の講習修了)。

育成就労指導員:実地指導(従事業務の経験5年以上+講習修了)。

生活相談員  :生活支援(講習修了)。

■ 監理支援機関:人員・規模の基準

常勤の監理支援実務担当:2名以上。

規模基準:『監理先実施者数÷8』『監理対象外国人数÷40』の両方の数値を上回る常勤者数が必要(端数切上げ)

「超える」という条文なので、最低2名。

  1. 日本語要件(入国時N5未達の例外)

入国時点でA1(N5相当)の試験未合格者は、当分の間、相当講習(目安100時間、登録日本語教員による授業を含む)で代替可能です。

  1. よくある誤解と対応

ご不明な点がございましたら、谷島行政書士法人にご相談ください。下記のような誤解があります。

Q. 転籍の規制に関して、同じ法人内の店舗・支店間の異動はどうなるか?

A. 異動については、転籍ではありません(計画変更の要否は別途判断)。

 

Q. グループ会社など別法人への移動はどうなるか?

A. 転籍となります。上限(1/3、都市部受入れは1/6)や要件に注意が必要です。

 

Q. 在籍者の分母には施行時点の技能実習生を含むか?

A. 含みます。経過措置期間の母数管理に注意が必要です。

 

Q. 指定区域に福岡県、広島県、宮城県、北海道の札幌など地方都市が入っていないが、指定区域となるのか?

A. 地方として指定区域となります。

 

Q. 指定区域の住所は外国人の住所基準か?

A. 下記の通り、条文上に住所となっております。

 

 

 

 

 

出典:2025年9月30日付官報、育成就労法施行規則

 

  1. チェックリスト(企業・監理支援機関)

□ 在籍外国人数と『本人意向転籍』の申出見込みを把握し、1/3・1/6を常時計算。

□ 常勤者の証拠(社保加入・雇用契約・賃金台帳・出勤簿)を最新版に。法人単位での常勤数を確定。

□ 責任者・指導員・生活相談員の講習修了(3年以内)・経験年数の証跡をファイリング。

□ 監理支援機関は『実施者÷8』『人数÷40』基準と最低2名を満たす人員計画を四半期ごとに更新。

□ 日本語A1未達者向け100時間講習の枠(委託契約・時間割)を確保。

□ 直前の育成就労実施者の住所が指定区域かどうかを確認すること

 

  1. 育成就労法施行規則の法令根拠

転籍に係る受け入れ人数枠に関する指定区域の箇所は以下の通りです。

育成就労法施行規則(抄)

育成就労法施行規則

(新たな育成就労計画の認定)

第二十八条

法第九条の二第四号ハ(法第十一条第二項において準用する場合を含む。 ) の主務省令で定める基準は、次のとおりとする。

一 法第八条第一項の認定を受けた育成就労計画に係る育成就労の対象となっている育成就労外国人を対象として育成就労を行わせている者であること。

二 次のいずれにも該当すること。

イ 育成就労外国人(第十九条第四項各号に掲げる者を除く。以下この号において同じ。 ) の総数のうちに法第八条の五第一項の認定を受けた育成就労計画に係る育成就労の対象となっている育成就労外国人の数の占める割合が三分の一を超えることとならないこと。

ロ  申請者の住所が指定区域にあるものでない場合にあっては、育成就労外国人の総数のうちに法第八条の五第一項の認定を受けた育成就労計画に係る育成就労の対象となっている育成就労外国人(直近の育成就労実施者の住所が指定区域にあるものに限る。 ) の数の占める割合が六分一を超えることとならないこと。ただし、法第八条の五第一項の認定を受けた育成就労計画

に係る育成就労の対象となっている育成就労外国人(直近の育成就労実施者の住所が指定区域にあるものに限る。 )の数が一人となる場合にあっては、この限りでない。

 

 

以下は転籍の申出に基づく認定要件規定であり、上記施行規則の該当条文です。

育成就労法(抄)

(新たな育成就労計画の認定)

第八条の五 第八条の二第一項の規定による申出をした育成就労外国人を対象として新たに育成就労を行わせようとする本邦の個人又は法人は、主務省令で定めるところにより、新たに当該育成就労外国人を育成就労の対象とする育成就労計画を作成し、これを出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、その育成就労計画が適当である旨の認定を受けることができる。この場合においては、第八条第二項の規定を準用する。

 

 

 

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。

▶ ご依頼、セミナー、取材等のお問合せはこちら

- 対応サービス

  • 行政対応
  • 外国人材紹介
  • 外国人登録支援機関業務
  • TAKUMI人事

- 資格等

特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他


- 略歴等

・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


- 取引先、業務対応実績一部

・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他

03-5575-5583に電話をかける メールでお問い合わせ
ページトップへ