随時届出マニュアル:特定技能の受入困難届拡大、基準不適合届創設等2025年改正対応
2025年04月28日
特定技能サービス
随時届出マニュアル:特定技能の受入困難届拡大、基準不適合届創設等2025年改正対応

随時届出とは、特定技能外国人の雇用や支援状況に一定の変化や事由が生じた際に、その都度行う届出です。定期届出が定期報告だとすれば、随時届出は変更事由に該当するイベント発生時の都度報告と言えます。
これが難しいのはどのような事由が変更届対象かです。それによって、刑事処分や受入停止につながるため、以下わかりやすく解説していきます。
内容
随時届出に関して特定技能受け入れ企業からのよくある質問(Q&A)
随時届出の変更点と新設・廃止項目
改正前から義務付けられていた主な随時届出事由として、雇用条件の変更(例:減給や就業場所の配置転換等)、雇用契約期間満了前の終了(途中退職・解雇)、不正行為の発生、支援計画の内容変更、登録支援機関委託契約の変更などが挙げられます。これらの場合、事由発生から14日以内に届出を提出しなければならず、怠ると罰則や受入停止処分等の可能性もあります。
2025年の改正では、この随時届出に関するルールが大きく見直されました。届出対象となるケースの追加と整理(統廃合)が行われ、一部新しい届出類型の新設や提出不要となるケースの明確化がなされています。
随時届出の改正ポイントまとめ表
随時届出の主な改正ポイントを以下の通り表にしました。割と厳しいのが、受入困難届の拡大と、基準不適合届の創設です。
届出類型 | 主な届出事由 | 14 日以内に提出する書類 | 改正ポイント | 区分 |
雇用契約終了 | 退職・解雇 | 《様式3-1-2》 | 自己都合退職だけなら受入れ困難届出は不要に簡素化 | 変更 |
受入れ困難 | ①会社都合解雇 | 《様式3-4》 | ③④を新規追加、自己都合退職は対象外 (参照:法務省) | 拡大(自発的離職は除外) |
②倒産・事業停止 | ||||
③入国後1か月就労開始遅れ | ||||
④就労後1か月以上の活動中断 | ||||
基準不適合 | 日本人含む非自発的離職、債務超過、税・社保未納、刑罰、入管法違反、労基法違反など企業が適格性基準を外れたとき | 《様式3-5》 | 対象範囲を基準省令不適合全般」へ拡大 | 新設 |
支援実施困難(新設) | 自社支援担当の退職・病気等で計画どおり支援できない | 《様式3-7》 | 2025 年新設。 | 新設 |
以下、主な変更点を項目別に解説します。
雇用契約終了の届出(退職・解雇時の報告)
特定技能外国人との雇用契約が何らかの理由で終了した場合(契約期間満了前の退職・解雇など)は、従来より必ず入管へ届出を行う必要があります。これは特定技能所属機関による雇用契約に関する届出として法律上義務付けられているものです。改正においてもこの原則は変わりません。
したがって、特定技能外国人が自己都合退職した場合や会社都合で解雇した場合には、14日以内に「雇用契約終了届出書」を提出する必要があります。
ただし、今回の改正との関係で注意すべき点があります。改正前は、特定技能外国人が退職した際に受入れ困難時の届出と雇用契約終了の届出の両方を提出していたケースがありました。
改正後は、退職理由が「自己都合(本人都合)による退職」の場合、受入れ困難届出は不要と明示されました。本人が辞めただけの場合、受入れ企業側に「受入れ困難」(後述する企業都合で受入れ継続が困難な状況)が生じたとはみなさず、契約終了の届出だけで足りるという整理です。一方、会社都合の解雇や契約打ち切りの場合は、後述の「受入れ困難届出」に該当する可能性があります。
まとめると、特定技能外国人が退職・解雇した際の対応は次のようになります。
- 自己都合退職(本人が任意で辞職した場合): 雇用契約終了届出のみ提出(受入れ困難届出は不要)。
- 会社都合退職(解雇・倒産・契約更新拒否等): 雇用契約終了届出に加え、状況によっては受入れ困難届出の提出も必要(下記参照)。
この変更により、企業にとって不要な届出業務が一つ減る形になります。ただし契約終了の報告自体は必須である点は変わらないので、退職者が出た場合は速やかに届出手続きを行いましょう。
受入れ困難時の届出(受入れ継続が難しい場合)
受入れ困難に係る届出とは、特定技能所属機関が当該外国人を引き続き受け入れることが困難になった場合に提出する届出です。改正前は、例えば特定技能外国人が自己都合で突然退職してしまった場合など、受入れ企業側にとって受入れ継続が困難となったケースで届出対象とされていました。改正後、この「受入れ困難届出」に関して届出対象となる具体的事由が拡充および一部見直しされています。
追加・変更された主なポイントは以下のとおりです。
- 就労開始の遅れ(新規追加): 在留資格許可日から1か月以上経過しても当該外国人が就労を開始していない場合、新たに受入れ困難届出の対象となりました。例えば、在留資格「特定技能」を取得して入国したものの、何らかの理由で雇用開始が大幅に遅れているケースが該当します。企業としては「労働力として受け入れたいが1か月経っても就労できていない」状態であり、受入れ計画が滞っているため報告が必要となります。想定される場面として、外国人本人の渡航遅延や、入社日延期などが挙げられます。
- 活動中断(1か月以上活動できない場合)(新規追加):雇用後に病気・ケガや事業上の都合等で、特定技能外国人が1か月以上その活動を行えない状況が発生した場合も、新たに届出対象となりました。例えば労働災害で長期療養が必要になった場合や、一時的な事業休止で外国人を就労させられない場合がこれに該当します。このように受入れを継続したくても1か月以上実際の就労が途切れる場合には、受入れ困難として報告する必要があります。
- 自己都合退職の除外:前述のとおり、自己都合による退職のみの場合は受入れ困難届出不要とされました。これは届出対象事由からの除外(事実上の廃止ですが、雇用契約終了の届出は必要)と言えます。改正前は自己都合退職も広義で受入れ困難に含められていましたが、改正後は自己退職だけでは届出事由としないルールに統一されています。
以上により、受入れ困難届出は企業都合または不可抗力で受入れ継続が困難な場合に限って提出する位置づけが明確になりました。改正後の提出様式は参考様式第3–4号となっており、上記の就労開始遅れ・活動中断・非自発的離職(退職勧奨含む)が発生した場合に、この様式で届出を行います。
人事担当者は、特定技能外国人の勤務状況に目を配り、もし長期間の休業や雇用開始の異常な遅延が発生した際には、本届出を提出する必要があることを認識しておきましょう。「受入れ困難」という言葉からイメージしにくいかもしれませんが、要は“予定どおり雇用できていない”状態を知らせる届出と捉えると分かりやすいでしょう。
基準不適合に係る届出(受入れ企業・支援機関の要件不適合)
基準不適合に係る届出とは、特定技能の制度上定められた受入れ機関や支援機関の適格性基準を満たさない事態が生じた場合に報告する届出です。
改正後の規定では、「特定技能基準省令第2条第1項各号および同条第2項各号に適合しない場合」と表現され、広く受入れ機関・支援機関に課されている雇用契約や所属機関、支援計画等について全ての基準の不適合時が届出対象となりました。これにより、以前は届出不要だった事態も報告義務が生じる可能性があります。
具体例として入管庁が示しているものに、受入れ企業による税金や社会保険料の滞納、特定技能外国人でなくても企業における非自発的離職の発生、企業関係者が違反や刑罰を受けた場合などがあります。これらはいずれも「基準不適合状態」であり、発生時には速やかに届出しなければなりません。
例えば、社会保険料を未納のまま放置していると、それだけで基準不適合(適切な公的義務の履行ができていない)となり届出対象です。また、特定技能外国人を会社都合で解雇した場合も、雇用の安定継続という基準に反するため、本届出が必要となります(併せて契約終了届出も必要)。
このように、基準不適合届出の範囲が拡大したことで、受入れ企業・支援機関はより一層コンプライアンスに留意する必要があります。「多少の未納やトラブルなら黙っていても…」という考えは通用せず、基準から外れる事態が起きたら必ず自己申告することが求められます。提出様式は参考様式第3–5号で、該当する基準項目や状況を説明する書類を添付して報告します。
支援実施困難に係る届出(支援業務が遂行できない場合)※新設
今回の改正で新たに創設された届出類型が、「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出」です。これは、受入れ企業がその支援計画どおりの支援を実施することが困難になった場合に提出を義務付けられるものです。特定技能1号では、受入れ企業は外国人への支援を適切に実施する責任がありますが、人手不足や担当者の退職などにより計画していた支援が提供できない事態が起こりうるため、そうしたケースでの報告ルールが新設されました。
具体的には、「支援担当者が急病・退職し当初の支援計画が遂行困難になった」、「予定していた日本語講習や面談を提供できない事情が発生した」等が考えられます。受入れ企業が全部支援を自社で行う場合に限られ、該当時には参考様式第3–7号の届出書を提出します。なお、支援業務を登録支援機関に委託している場合は、受入れ企業ではなく登録支援機関側から同様の報告(参考様式第4–3号)を入管庁へ行うこととされています。つまり、支援を誰が担っているかによって届出主体が異なる点に注意が必要です。
この支援実施困難届出の新設は、特定技能制度が円滑に運用されるためのセーフティネットと言えます。適切な支援が滞ることは外国人本人の生活・就労にも支障を来すため、企業側は無理をせず、困難が生じた時点で速やかに報告・必要な対応(例:新たに登録支援機関へ委託する等)を検討しましょう。
以上、随時届出の主な改正点を見てきました。改正後は「随時届出の対象範囲が拡大」したため、以前にも増して注意深い人事管理が求められます。特に基準不適合届出の範囲拡大は重要な変更点であり、法令遵守や労務管理上の問題があれば適切に対応し是正する姿勢が必要です。以下の点について、特定技能外国人の就労状況を確認するなど、細かな点に気を配りましょう。
1. 1か月以上の遅れがないか
2. 1か月以上の就労活動ができていないか
随時届出に関して特定技能受け入れ企業からのよくある質問(Q&A)
Q2. 特定技能外国人に関して随時届出が必要となるのはどんなケースですか?
A2. 主なケースとして、
(1) 特定技能外国人が退職・解雇した場合(雇用契約終了)
(2) 労働条件を変更した場合(例:減給や配置転換。ただし昇給のみは不要)
(3) 特定技能外国人が入国後1か月以上就労を開始しない場合
(4) 就労中に1か月以上の長期離脱(病気療養や事業停止等)が発生した場合
(5) 受入れ企業や支援機関が満たすべき基準を満たさなくなった場合(例:社会保険未加入が判明、違法行為の発覚等)
(6) 支援計画に沿った支援の実施が困難になった場合
などがあります。これらの場合に14日以内の届出提出が義務付けられます。改正により新たに追加されたのは上記(3)、(4)、(6)のケースで、従来対象だった自己都合退職のみのケースは除外されました。いずれにせよ、特定技能外国人に関わる重要な変動があった際には速やかに届出が必要と覚えておきましょう。
Q3. 特定技能の外国人が自己都合で退職した場合、どのような届出が必要ですか?
A3. 本人の都合で退職した場合は、「雇用契約が終了した」事実のみを届出します。具体的には雇用契約終了届出を提出してください。改正後は自己都合退職の場合、受入れ困難届出の提出は不要です。
ただし、会社都合で解雇した場合は雇用契約終了届出に加えて、解雇に至ったことで受入れ企業が基準不適合となる可能性があります。その場合は基準不適合届出や必要に応じて受入れ困難届出も提出します。いずれの場合も14日以内という期限を守り、忘れずに届出を行ってください。
Q4. 届出の提出を代理で依頼することはできますか?
A4. はい、行政書士や弁護士など入管庁の申請等取次者資格を持つ専門家に依頼すれば、企業の代理として届出書類の作成・提出を行ってもらうことが可能です。ただし、登録支援機関はあくまで支援業務の委託先であり、届出提出の代理人にはなれません。代理人に依頼する際は、企業から代理人宛の委任状を作成する必要があります。
Q5. 届出を出し忘れたり遅れて提出した場合、どうなりますか?
A5. 特定技能の届出は法律で義務付けられているため、提出を怠ったり期限に遅れたりすると法令違反となります。具体的な罰則規定もあり、届出をせずに放置すると20万円以下の過料等が科される可能性も指摘されています(入管法第71条の2等の規定による)。また、行政指導の対象となり、受入れ企業としての信用失墜や特定技能外国人の受入れ停止(一定期間、新たな特定技能ビザ申請が認められなくなる)といった措置が取られるリスクもあります。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
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行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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