永住申請で「経営・管理」「高度専門職1号ハ」から不許可となる新基準の影響
2025年11月21日
永住高度専門職ビザ経営・管理ビザ
永住申請で「経営・管理」「高度専門職1号ハ」から不許可となる新基準の影響
経営管理ビザから永住許可申請中の外国人への影響:行政書士がポイントを解説
最近の「経営・管理」の許可基準改正により、「高度専門職1号ハ(経営・管理型)」や「経営・管理」から永住許可を目指している方から、「すでに出している永住許可申請に影響が出ませんか?」というご相談が増えています。
本ページでは、すでに永住許可を申請済みの方や、これから永住許可・高度専門職2号を検討されている方に向けて、改正のポイントと実務上の影響を整理して解説します。
1.経営・管理ビザ許可基準の改正の概要
今回の改正では、「経営・管理」ビザおよび「高度専門職1号ハ・2号(経営・管理活動を前提とするもの)」について、おおむね次のような要件が新たに求められる方向になっています。
- 資本金等が3,000万円以上であること
- 日本人・永住者等の常勤職員を1名以上雇用していること
- 申請人または常勤職員のいずれかが、一定水準以上の日本語能力(例:JLPT N2相当)を有すること
- 経営経験が3年以上、または関連分野の大学院修士以上の学位を有すること
- 中小企業診断士・税理士・公認会計士等の専門家による事業計画書の確認 など
これらは、従来よりも「経営の実態」「雇用」「日本語・専門性」といった側面を、
より厳格に確認していく方向の改正といえます。
2.永住許可申請への影響(結論)
すでに出している永住申請はどうなる?
まず、多くの方が一番気にされるポイントはここだと思います。
施行日前に受理された永住許可申請が、改正を理由にいきなり「新基準」で審査されて、不許可になるのか?
という点です。
結論からいうと、実務上は次のように整理するのが自然です。
- 改正前に受理された永住許可申請について、改正を理由として自動的に「アウト」とする趣旨ではない
- これまでどおり、
- 高度専門職としてのポイント要件
- 納税・年金・社会保険の状況
- 素行(違反歴など)
- 生計の安定性
など、従来の永住許可ガイドラインをベースに審査が行われると考えられる
- したがって、「一度出した永住申請を、改正を理由に取り下げて出し直す必要は通常ない」と考えられます
もちろん、審査の途中で入管から追加資料を求められる可能性はありますが、
それは従来からある「事業の実態確認」の一環としての要請と考えてよいでしょう。
3.「3年猶予」の経過措置と永住許可の関係
入管庁の資料には、次のような記載があります。
| 施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請については、改正後の許可基準に適合する必要があります。 |
出典:入管庁、 https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf
ここでいう「在留期間更新許可申請」は、「経営・管理」ビザそのものの更新についての経過措置です。
- 経営・管理ビザの更新については、施行後3年間は一定の経過措置が設けられている
- 永住許可申請は「更新」ではないため、この3年猶予そのものが永住許可に直接かかっているわけではない
この「3年猶予」は「経営・管理」の更新に関する話であって、永住許可の取り扱いは別枠で整理されています。
4.「永住許可申請等について」の文言は何を意味するか
入管庁の資料には、永住許可に関して次のような趣旨の記載があります。
施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、
「経営・管理」、「高度専門職1号ハ」又は「高度専門職2号」(「経営・管理」活動を前提とするもの)からの永住許可
および「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への在留資格変更許可は認められません。
この文言は、実務上は次のような意味合いだと解釈されています。
- 施行日以降に新たに行う
- 「経営・管理」からの永住許可申請
- 「高度専門職1号ハ・2号(管理型)」からの永住許可申請
- 高度専門職1号ハから2号への在留資格変更
については、
- その時点で、改正後の「経営・管理」許可基準を満たしていることが前提条件となる
つまり、
「これから永住を申請する人」「これから高度専門職2号に変更する人」については、
新基準を満たしていないと、そもそも永住や2号への変更自体を認めません
という「今後のキャリアパスに関するルール」を宣言したものといえます。
5.どのような経営外国人に影響が出やすいか
すでに永住を申請中の方にとっては、
「今の申請が、改正だけを理由に急にダメになる」
といったイメージまでは不要ですが、
将来の再申請・高度専門職2号への変更を見据えると、
次の点は意識しておく必要があります。
影響が出やすい主なポイント
- 資本金が3,000万円未満の会社
- 日本人・永住者等の常勤職員がまだいない会社
- 経営者本人や常勤職員の日本語力がN2相当未満で、社内で日本語対応できる体制が弱いケース
- 事業計画書について、まだ専門家による確認を得ていないケース
- 経営経験・学歴など、経営者個人の要件が改正後の基準を満たしているかグレーなケース
特に、
「今回はいったん高度専門職1号ハで活動を始め、数年後に永住か2号への切替を考えたい」 といった中長期プランの方にとって、
新基準に合わせた体制づくりをどう進めていくかが重要になってきます。
6.申請中の方からよくあるご質問(Q&A)
Q1. すでに出している永住許可申請は取り下げた方がよいですか?
A. 一般的には、その必要はありません。
今回の改正は、
「施行日以降に新たに行う申請」についてのルールを示したものと解釈されます。
すでに施行日前に受理されている永住申請については、
従来どおりの永住ガイドラインに基づいて審査が進められると考えられるため、
改正を理由に自ら取り下げる必要は、通常はありません。
むしろ、取り下げることにより、緩和されることは確定的になくなると認識することが重要です。
Q2. 改正後の基準(資本金3,000万円など)を満たしていないと、今の永住は不許可になりますか?
A.「それだけ」を理由に即不許可、というイメージは持たなくて大丈夫です。
永住許可の審査は、以下を総合的にみるガイドラインに基づいて行われます。
- 日本での在留期間・活動内容
- 納税・年金・社会保険の履行状況
- 犯罪・違反歴の有無
- 生計の安定性 など、
新しい経営・管理基準の要素が、
事業の実態確認の一部として参照される可能性はありますが、
「資本金が3,000万円に達していない=自動的に永住不許可」ということではありません。
Q3. もし今回の永住が不許可になった場合、再申請するときはどうなりますか?
A. 再申請のタイミングでは、原則として新基準を前提に考える必要があります。
施行日以降に新たに行う永住申請については、
- 経営・管理ビザ側が改正後の許可基準を満たしていること
- 高度専門職1号ハ・2号(管理型)の場合も、同様の扱いになること
が前提となります。
したがって、将来の再申請を見据える場合には、
- 資本金増額のタイミング
- 日本人・永住者常勤職員の採用計画
事業計画の専門家チェック
など、中長期的な体制づくりを一緒に検討していく必要があります。
7.今から準備しておきたいポイント
これから永住申請や高度専門職2号への変更を検討される方は、
次のような観点で準備を進めておくと安心です。
- 資本金・自己資本の強化プラン
- 今後3,000万円ラインを目指すかどうか
- そのための増資スケジュール・投資家対応など
- 日本人・永住者等の常勤職員の採用計画
- どのポジションで、いつ頃採用するか
- 採用後の役割・就業実態をどう設計するか
- 日本語・コミュニケーション体制の整備
- 経営者ご本人の日本語力向上
- 日本語対応できるスタッフの配置
- 事業計画と専門家チェック
- 中長期の収支計画、事業戦略の見直し
- 中小企業診断士・税理士・公認会計士などの専門家による事業計画の確認
当法人では、
「永住許可」単体の申請代行だけでなく、
経営・管理ビザの体制づくりや事業計画の整理を含めた中長期プランのご相談も承っています。
8.経営管理ビザからの永住の個別ご相談について
本ページの内容は、経営・管理ビザ許可基準の改正および永住許可申請への影響を、できる限り分かりやすく整理した「一般的な解説」です。
- 実際の審査では、お一人おひとりの
- 在留履歴
- 会社の状況
- 納税・年金・社会保険の履行状況
- 家族構成・生計状況
などが総合的に判断されます。
- また、入管実務の運用は、今後の通達や現場運用によって細部が変わる可能性もあります。
「うちの会社の資本金や従業員構成で、将来の永住や高度専門職2号は大丈夫か?」
「今出している永住申請で、追加資料が必要になりそうか?」
といった個別のご事情については、無料及び有料のご相談も可能です。 永住許可や経営・管理ビザの見直しをご検討中の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
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行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
- 対応サービス
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他





