【工業製品製造業】特定技能事例:技能実習と異なる職種からの研修など移行要件
2025年04月19日
成功事例
【工業製品製造業】特定技能事例:技能実習と異なる職種からの研修など移行要件

当ページでは、工業製品製造業における「特定技能」の誓約書要件に関する研修事例と、技能実習から特定技能へ移行する際のポイントを解説いたします。
今回の事例は、実際に当法人にて対応した企業と外国人を架空名にした相談事例を参照しております。
内容
2. 【機械金属加工の事例】技能実習から特定技能へ移行する際の研修要件
4. まとめ:研修実施で誓約書要件を満たし、長期的な基盤人材を育成
1. 工業製品製造業の特定技能の「誓約書」要件とは
1-1. 特定技能の誓約書要件
「特定技能(工業製品製造業)」で外国人を受け入れる場合、入管庁や経済産業省等のガイドラインに基づき、受入れ企業(所属機関)が適切な雇用管理や研修の実施を誓約する必要があります。
特定技能外国人を受け入れる際、当該特定技能外国人が技能実習で従事した職種とは異なる業務に従事させる等の場合には、十分な訓練や各種研修を実施すること。 |
出入国在留管理庁「特定技能に係る運用要領」の誓約書箇所から引用
1-2. 誓約書に含まれるポイント
- 適切な研修(特に業務内容が技能実習と異なる場合)
- キャリアアッププランの策定・確認
- 安全衛生教育や日本語学習支援
- 公的機関(経済産業省や工業製品製造業の協議会など)への定期報告
以上の項目を、受入れ企業が「実施します」と誓約して署名・押印し、入管等に提出することで受入れ要件を満たすことになります。
2. 【機械金属加工の事例】技能実習から特定技能へ移行する際の研修要件
2-1. 相談の背景
- ご相談者(顧客企業A社・製造業)
これまで技能実習生として「機械加工」に従事していた外国人(仮称:見本さん)を、特定技能(工業製品製造業)の素形材に関する「機械金属加工」として雇用したい。 - 課題・悩み
- 受け入れるにあたり、誓約書における研修実施の要件をどのように満たせばよいか。
- 見本さんは技能実習でフライス加工やマシニングセンタ等の「機械加工」を経験したが、今後行う業務が「仕上げ作業」に近い。
- 長期的な就労を見据え、見本さんのキャリアアップ(特定技能2号や永住申請)も必要だが、どのように計画すればよいか。
2-2. 行政書士からの回答内容
(1) 法令要件を満たす訓練
Q.「技能実習時の職種と少し違う仕事になるが大丈夫?」
A.
- 異なる業務に従事させる場合は、十分な研修を実施することが誓約書要件のひとつになります(入管庁資料より)。
- 「機械加工」に携わっていた経験がある見本さんですが、今回のA社で実施するのが「治工具仕上げ」に近い業務であれば、実習で身に付けた技能だけでは不十分な可能性が高いです。
なぜなら、技能実習時の職種として「機械加工」職種と、治工具等の「仕上げ」職種は異なるので、追加研修が必要となります。
参考:厚生労働省、技能実習計画審査基準https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/002.html
- そのため、業務開始時に必要な研修を行い、「治工具仕上げ」に関わる「機械金属加工」の基本的な知識や安全衛生面をカバーしてください。
- 具体的には、マシニングセンタやフライス盤などの使用方法・注意点と異なる「治工具仕上げ」の特徴に関する研修メニューを作成し、業界が推奨している安全ガイドライン等を参考にすると良いでしょう。
- 研修についての誓約書は特定技能の法令要件の委任を受けた規定となっており、違反した場合は、受け入れ停止処分になる規定です。
(2) キャリアアッププランの確認
Q.「特定技能での就労と、将来的なキャリアパスはどう結びつけるべき?」
A.
- 特定技能ではキャリアアッププランの策定が求められるか?
外食分野などと異なり、工業製品製造業では、現時点で受入れ企業側の義務というわけではありませんが、外国人本人の将来を考慮するうえで非常に有益です。
- 家族滞在の希望や、特定技能2号への進級、もしくは別在留資格(技術・人文知識・国際業務)への切替え、最終的には永住申請の可能性まで幅広く検討し、社内でプランを確認しましょう。
(3) 特定技能2号へのステップ
Q.「特定技能2号を見据える場合、どのような準備が必要?」
A.
- まずは特定技能2号へ移行するために必要なオペレーションの試験内容(技能・日本語能力・安全衛生など)を把握し、試験合格を目指すための研修計画を立てます。
- 加えて、日本語学習支援も欠かせません。本人の語学力向上は業務効率だけでなく、将来的な在留資格手続きや生活面の安定にも直結します。
(4) 他の在留資格の検討(技術・人文知識・国際業務)
Q.「特定技能でうまくいかない場合の選択肢は?」
A.
- 見本さんは日本企業で5年間の「機械加工」経験があるとのこと。さらに同じ業務で通算10年程度携わる見込みがあれば、「技術・人文知識・国際業務」への変更が可能になる場合があります。
- 「技術・人文知識・国際業務」は、家族滞在や永住許可も目指しやすい資格です。もし特定技能2号への移行が難しい場合、あるいはより高度な業務に携わる道が開けた場合には、ぜひ検討してみてください。
3. 研修事例:異なる業務への導入研修スケジュール例
- 入社前・現場配属前研修(1~2週間程度)
- 「治工具仕上げ」等の工程手順と安全衛生に関する座学
- 過去の技能実習との業務差異についてポイント解説
- マシニングセンタやフライス盤と異なる機械金属加工の基礎操作確認
- 現場配属後の定期研修(随時)
- ベテラン作業者によるOJTでの技術指導
- 1~3ヶ月に一度の技術レビュー:習熟度合いを確認し、不足があれば追加訓練
- 日本語学習サポート(専門用語の補足教材作成など)
- キャリアアップ研修(特定技能2号や将来の在留資格変更を視野に)
- 技能試験対策講座(実務的な講習+過去問題対策)
- 安全衛生におけるリスクアセスメント研修
- 必要に応じてオンライン学習ツールも活用
4. まとめ:研修実施で誓約書要件を満たし、長期的な基盤人材を育成
- 誓約書要件の大枠:
- 適切な研修プログラムの整備・実施
- キャリアアッププランを含む雇用管理体制の確立
- 外国人本人が安心して働ける環境づくり
今回のポイント:
- 技能実習での経験と異なる業務なら、誓約書上の研修義務をしっかり果たす必要がある
- 特定技能1号から2号へ進むためには、試験合格や日本語力向上が必須
- もし特定技能の要件や試験が難しければ、技術・人文知識・国際業務への切替えも視野に入れる
継続的な研修はコストがかかりますが、未経験業務にもチャレンジしながら長期的に成長する基盤人材を育成することで、企業にとっても大きなメリットとなります。今回の事例のように、一人ひとりの外国人材の将来像を把握しながら、計画的に研修を実施することが重要です。
5. 当法人へのご相談
本事例はあくまで一例であり、実際には企業の業務内容や外国人材の経歴、日本語能力など個々の状況によって最適な研修内容は異なります。当法人では、以下のサポートを行っております。
- 特定技能に関する各種書類作成・届出支援
- 誓約書要件を踏まえた研修プラン策定のアドバイス
- 技能実習から特定技能への在留資格変更手続き
- キャリアアッププラン策定・在留資格に関する長期的な相談対応
特定技能の誓約書などの要件や工業製品製造業の受入要件、研修やキャリアアッププランなどでお困りの際は、お気軽に谷島行政書士法人にご相談ください。
谷島行政書士法人には、協議会加入手続きから、在留申請、あるいはキャリアプランまで、家族滞在や永住をも踏まえたワンストップ対応の実績があります。
企業様・外国人本人様それぞれにとって最善のプランを一緒に考えさせていただきます。
この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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