「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」の要件を徹底解説

2025年02月08日 在留資格一般
「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」の要件を徹底解説
外国人は、就労ビザと身分系ビザを問わず、日本での在留を継続し、又は就労範囲や地位の変更をする前に、在留資格の変更許可申請や在留期間更新許可申請をする必要があります。
この点、「在留資格認定証明書交付申請(CoE)」と在留者の申請は基準が異なるため、在留者の変更許可申請や更新許可申請などはこの「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」に則る必要があります。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
しかし、個別的なケースへのあてはめや、すべての在留資格に適用されないガイドラインもあるため、ややわかりにくいと存じます。
そこで、本記事では、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)を基に、手続を行う前に必要となるガイドラインの要件の基本的なポイントを解説します。
目次
在留資格変更・更新許可の基本的な考え方
入管法第20条および第21条に基づき、在留資格の変更および在留期間の更新は、法務大臣が「適当と認めるに足りる相当の理由」がある場合に許可されます。これは申請者が提示する活動内容や状況を総合的に判断し、許可の可否を決定するものです。
法令引用:入管法第20条第1項 |
1. 在留資格該当性
申請者が行おうとする活動が、入管法の別表に掲げられた在留資格に該当することが必要です。
入管法別表第一(第一の表) |
「技術・人文知識・国際業務ビザ」に必要な活動の程度は、単純就労では足りず、その専門性が必要であるため、上記条文は、その専門性を規定したものです。
別の記事でも「技術・人文知識・国際業務ビザ」の要件を詳しく紹介しておりますが、在留資格該当性とは以下の3つを中心的に判断されます。
1.専門性
学術上の素養が必要、単純就労は不可
2.安定性・継続性
例:専門的業務の業務量
3.適正性
独占業務や許認可が必要な事業の法令遵守
2. 上陸許可基準の適合性
上陸許可基準(入管法第7条第1項第2号)は上陸時つまり入国時だけでなく、在留資格の変更および更新においても原則求められます。
定住者告示や特定活動告示の場合は、その基準適合性に代えます。
これらは主に上記の在留資格該当性と別に、主に学歴や実務経験などの基準となっていますが、業務内容を規定していることもあります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」の場合は、以下となります。
申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第九十八条に規定する国際仲裁事件の手続等及び国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。 |
・在留資格該当性:専門性、安定性・継続性、適法性
・上陸基準省令適合性:関連性、その他
①「技術」「人文知識」の場合、学歴で基準適合させて申請するときは関連性必須
②「国際業務」の場合、3年以上の経験で基準適合させて申請するときは、関連性必須。
これらの基準は、入国後、年齢の経過によって基準不適合となっても、更新できることがあります。
3. 現在の在留資格に応じた活動
現在の在留資格に基づく活動を適法な範囲で行っていることが必要です。たとえば、留学生が除籍後も在留している場合、正当な理由がない限り、申請に不利な要素となります。なぜなら、留学においての本来活動は、学業であるからです。これは「在留資格該当性」が基準となります。
「在留資格該当性」に該当する活動をしていない場合、またはその期間が過去にあった場合、以下のリスクに気を付けることになります。
①申請に対する不許可リスクの増加
②在留資格取消し
4. 素行が不良でないこと(素行善良)
素行が良好であることが条件となり、過去の違反行為や犯罪行為は不許可の要因となります。
特に、入管法第24条に基づく退去強制事由に該当する行為は問題視されます。つまり退去強制をされていなくても不許可理由になるということです。
退去強制事由には、虚偽申請関係も多くあります。
その他、刑事処分を受けていることが事由となっておりますが、それを問わないものもあります。
(退去強制) |
さらに、資格外活動違反をもっぱら行ったことも退去強制事由に該当します。留学生が学校に行かないでアルバイトばかりしていた場合も大変なリスクになります。
退去強制事由に該当しない場合でも、「出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合」は不許可理由になります。不法就労をあっせんするなどが例示となっておりますが、それより軽いものであっても不許可事例は多くあります。
5. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
申請者が経済的に自立しており、公共の負担にならない生活を送っていることが求められます。独立した生計を営む資産または技能があることが条件です。
申請時にこれを満たしていない場合は不許可リスクがあります。ただし、経済力がなくても、将来的な自立の立証をすることで可能性が向上します。
公共の負担とは
公共の負担とは、主に生活保護などを指します。ただし、一律それで不許可となりません。
例えば、例外として人道上の理由が挙げられております。例えば、「日本人の配偶者等」の在留資格をもっている外国人が生活保護を受けている場合、不許可になることで、日本国籍の児童などを路頭に迷わせることになります。したがって、家庭状況や、日本国籍者への影響などを鑑みる人道上の理由によって、許可されることがあります。
6. 雇用・労働条件が適正であること
申請者が就労する場合(アルバイトも含め)、その雇用条件が日本の労働関係法規(例:労働基準法、最低賃金法)に適合していることが求められます。
さらに、社会保険加入の除外でないのに加入させないことなどは社会保険者か法令ですが、労働法令違反とされることにも気を付けるべきです。
なお、労働条件として捉える労働保険や社会保険は次の「納税義務等の履行」と密接に関連します。
7. 納税義務等の履行
申請者が納税義務を果たしていることが求められます。長期間の未納または高額な未納がある場合その他悪質な経歴があれば、不許可の可能性が高まります。
国税、地方税もすべて含みます。
さらに、国民健康保険や国民年金、社会保険も納税義務の一つとなります。なぜなら社会保険料は税金と捉えることもでき、納税義務「等」に含めることもできるからです。
例えば、国民健康保険では国民健康保険税として、地方税法に基づく納税義務です。
8. 入管法に基づく届出等の義務履行
外国人は、入管法に定められた届出義務(例:住所変更、在留カード記載事項変更など)等を履行する必要があります。
入管法 |
なお、所属機関による届出もありますが、それは雇用される外国人の場合、自身の就労ビザ申請の問題で多く問われるものではありません。
他の考慮で不許可になる「広義の相当性」等のリスク
ガイドラインの上記3から8を満たしたうえでも不許可もありえます。「代表的な考慮要素であり、これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更又は更新を許可しないこともあります。」と記載されております。
入管がその他の要素で不許可にする事例や法令・基準などの理論と経験を用い、専門の行政書士がリスク分析することが重要です。
まとめ:申請書類作成の前に、ガイドラインの各要件チェックが重要
在留資格の変更および在留期間の更新申請では、入管法や労働法令その他関連法令に基づく各要件を満たしていることを証明する必要があります。特に申請書類の正確性はもちろん、書類作成前の要件チェックが重要です。
このような場面で専門の行政書士にリスク分析をしてもらうことはすべての外国人にとって有益かつ必要なことです。
この点、谷島行政書士法人では、上記のすべての要件において、どのような難解事由があっても個別に許可可能性を模索し、対応してきた実績があります。
ぜひお声がけください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人ビザ専門。「手続代理」と、企業や弁護士等専門家向けに「外国人雇用の顧問」実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他