「外国人社員のビザ管理で見落としがちな3つのポイント」 〜企業が知っておくべきリスクと対応策〜
2025年06月25日
コンプライアンス特定技能育成就労技能実習
「外国人社員のビザ管理で見落としがちな3つのポイント」 〜企業が知っておくべきリスクと対応策〜

はじめに
近年、日本企業における外国人雇用は拡大傾向にあります。特に、高度外国人材の活用やグローバル人材の採用は、大企業に限らず中小企業にも広がりを見せています。留学生の新卒採用や専門的な知識・技術を有する外国人の登用など、企業の人材戦略の一環として、国籍にとらわれない採用が行われるようになりました。
しかしながら、在留資格(就労ビザ)に関する法的理解やビザ管理の実務が不十分なまま雇用を進めてしまい、「在留資格(就労ビザ)に関する法的理解が曖昧なまま採用を進めてしまった」「更新期限の管理ができていなかった」など、ビザ管理に関する基本的な対応が見落とされているケースも少なくありません。ビザ管理の不備は企業側の法令違反や信用失墜につながるおそれがあります。
本ページでは、外国人社員を安心・合法的に雇用し続けるために、企業が見落としやすい3つの重要ポイントを解説いたします。
目次
見落としがちなポイント③:ライフイベントや転職による在留資格の変化
見落としがちなポイント①:職務内容と在留資格の不一致
最も多いトラブルが、「実際の業務内容と在留資格(ビザ)の不一致」です。
例えば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」で雇用された外国人に単純労働(倉庫作業や清掃など)をさせてしまうと、資格外活動と見なされ、在留資格の取消しや企業への処罰につながる恐れがあります。
また業務範囲外であることを行うことも同様です。例えば、経営・管理ビザであるのに、経営も管理もしない場合です。
対策ポイント:
- 採用前に、在留資格の活動範囲を確認
- 雇用契約書や職務記述書とビザの在留資格内容を照らし合わせる
- 必要に応じて、ビザ変更手続き(在留資格変更許可申請)を検討
見落としがちなポイント②:在留期間の更新忘れ
意外と多いのが、在留期限の管理ミスです。特に社員数が多くなると、誰がいつ更新すべきかを正確に把握することが困難になります。「社員に任せていたら、更新期限を過ぎていた」「更新書類の準備が遅れて出せなかった」なども見落としがちなケースです。期限切れのまま働かせると不法就労となり、企業も処罰対象になります。
対策ポイント:
- 社員ごとのビザ期限を管理する台帳を整備(例:Excelや専用管理システム)
- 遅くとも3ヶ月前には更新の準備を始める
- 社員任せにせず、企業として主体的に更新支援を行う
見落としがちなポイント③:ライフイベントや転職による在留資格の変化
外国人社員の結婚・離婚・留学終了などのライフイベントや転職は、在留資格に大きな影響を与える場合があります。たとえば、配偶者ビザで在留していた社員が離婚した場合、取り消されることがあります。
離婚した場合、通常の更新もできません。就労可能な在留資格に変更しないとなりません。
対策ポイント:
- 外国人社員の在留資格の種別を確認し、定期的に面談を行う
- 状況に応じて、在留資格変更許可申請や再申請が必要か専門家に相談
- 入社時・定期面談時などに資格状況をチェックリストで確認する体制をつくる
まとめ:企業側は何をしたらよいのか
以上の見落としがちなポイントを含めて、企業は何をしたらよいのでしょうか。企業が行うべき対応や対策は、まとめるとこのような感じです。
- 在留カードの確認と記録
:在留資格や期限、就労資格の有無の確認をしましょう。万が一期限が切れている場合は不法滞在者になっている可能性があります。
- 在留資格と職務内容の整合性
:見落としがちなポイント①にある通り、 在留資格と職務内容が合っているか確認しましょう。企業リスクもあるので、難しい場合は専門家に相談がおすすめです。
- 在留期間の管理と更新支援
:働いている外国人の一覧表を作成するなどして、在留期限を管理しましょう。本人が更新を希望していれば、更新の支援も必要です。
- 離職・転職時の届出義務
:外国人社員が離職した場合、企業には14日以内に「契約終了届出」 を入管に提出する義務があります。社員本人も「契約終了」の届出が必要です。
- 定期的な社内研修・教育の実施
:在留資格に関する誤解やミスを防ぐため、総務・人事担当者向けに定期的な研修を実施しましょう。行政書士や専門家を招いて、最新の入管情報や改正点を共有するのも効果的です。
外国人雇用を安全・安定的に行うために
外国人雇用においては、採用だけでなく「継続的なビザ管理体制の構築」が重要です。万が一のトラブルを未然に防ぐためにも、専門家の力を借りることがリスクヘッジとなります。
谷島行政書士法人グループでは、就労ビザの取得から更新・変更、そして企業全体の外国人雇用管理の体制整備まで、ワンストップでサポートしています。また、それに加えて顧問サービスでは、「この社員のビザは今の業務で問題ないか?」「更新手続きが間に合うか不安」などのちょっとしたご相談にも対応しております。外国人雇用でお悩みの企業様、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他