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外国人ビザの基礎:在留審査要領の全般事項

2025年05月31日

特定技能技術・人文知識・国際業務経営・管理ビザ在留資格一般

外国人ビザの基礎:在留審査要領の全般事項

このページでは、外国人ビザ申請、いわゆる在留諸申請において重要な規範となる「在留審査要領」の「全般事項」について解説します。在留審査要領は、入管法に関して、行政法上の「審査基準(行政手続法の直接適用ではないが準ずるもの)」の役割を果たします。申請人が直接参照するガイドラインなどに抜粋されるものもありますが、それ以外は入管の審査官が参照するテキストのような性質です。したがって、処分運用や許可見込みの予測をつけるためにこの要領を理解することは不可欠です。

内容

1. 在留審査要領の目的と構成

2. 在留資格該当性と上陸許可基準適合性

 入管法別表とは

3. 「本邦の公私の機関との契約」の定義

4. 「契約」の範囲と解釈

5. 個人事業主や、経営・管理の在留資格

6. 活動の適法性と継続性

7. 労働基準法との関連性

8. 特定技能と労働法遵守

1. 在留審査要領の目的と構成

在留審査要領は、在留資格該当性、上陸許可基準への適合性、立証資料、在留期間、および審査の留意点について規定しています。特に「第12編 在留資格」は1000ページを超える量であり、その冒頭にある「全般事項」は、各在留資格に共通する総則的な事項を定めています。

この「全般事項」では、各在留資格に共通する言葉の定義や、入管がどのように運用しているかが示されています。入管審査官は、この要領に基づいて申請を審査するため、申請者や企業担当者及び行政書士はこの要領を深く理解し、それに沿った申請を行う必要があります。

2. 在留資格該当性と上陸許可基準適合性

入管がビザの許可・不許可を判断する上で特に重視されるのが、在留資格該当性上陸許可基準適合性です。これらの項目については、提出された立証資料に基づいて事実認定が行われます。

私たちは理由書を作成する際に、これらの項目を明確に説明し、審査官が審査しやすいように構成します。これは、審査官が在留審査要領に基づき、効率的に審査を進めることを意図しているためです。

まず、在留資格該当性は、入管法別表に規定されております。

在留資格該当性を規定する入管法別表

入管法の末尾には、以下のように在留資格ごとに活動、つまり「在留資格該当性」を定めている表があります。このような本文から話した表を、別表と呼び、入管法には別表第一に就労系・活動系を定め、別表第二に身分系を定めております。

活動や身分が、すなわち要件であると理解してください。仮に「技術・人文知識・国際業務」で申請しても、在留資格該当性がなければ必ず不許可になります。そもそも「外国人役員は原則「経営・管理」だった」、転勤だったので「企業内転勤」だった」等の失敗は、申請しても気づかないことが一般のリテラシーです。数か月の審査を経て不許可になってからわかる場合もあるのです。

以下、抜粋します。

経営・管理本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
技術・人文知識・国際業務本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

3. 「本邦の公私の機関との契約」の定義

在留資格の要件として頻繁に登場する「本邦の公私の機関との契約」という文言は、入管法の別表に明記されている重要な要件です。この「本邦」とは日本国内を指し、「公私の機関」には以下のものが含まれます。

  • 公の機関: 国、地方公共団体、独立行政法人など
  • 私的な機関: 会社、公益法人、任意団体など

さらに、日本国内に事務所や事業所を有する外国の国、地方公共団体、外国法人なども含まれます。また、個人事業主もこの「公私の機関」に含まれるため、個人事業主が所属機関となる場合、申請書には個人名(屋号ではない)を記載します。

上記を読むと、「技術・人文知識・国際業務」には「本邦の公私の機関との契約」が要件であるのに対して、「経営・管理」では「本邦において貿易その他の事業の経営」となっております。

したがって、「経営・管理」では契約は不要ということとなります。

4. 「契約」の範囲と解釈

「契約」という言葉は、雇用契約に限定されず、委任、請負、嘱託なども含まれます。重要なのは、特定の機関との継続的な契約であることです。

また、契約は複数でも認められます。例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人が、本業以外に翻訳・通訳の副業を別の会社から委託で受けている場合、これも「特定の機関との継続的な契約」に該当し、在留資格の活動範囲から逸脱しないと解釈される可能性があります。ただし、個別の活動内容については、別途判断が必要です。

5. 個人事業主や、役員の「技術・人文知識・国際業務」と「経営・管理」の在留資格

個人事業主の場合でも、特定の機関との継続的契約ができます。ただし、その活動が継続的でない場合、不許可になりえます。

では、どうするか。例えば、「経営・管理」の在留資格で対応できる場合があります。なお、「技術・人文知識・国際業務」でも取締役など役員就任による活動が一定範囲で可能です。これは、役員が会社と委任契約を結んでいるためです。

一方、「経営・管理」では「本邦の公私の機関との契約」が不要であるため、この立証は不要です。

なお、契約の当事者となり得るのは自然人や法人格を有する団体に限られるため、形式上、支店長などの個人と契約しているように見えても、実質的には法人が契約の当事者となります。

6. 活動の適法性と継続性

契約に基づく活動は、日本国内において適法に行われることが必要です。違法な活動や、許認可が必要な事業であるにもかかわらず許認可を取得していない場合は、在留資格の該当性が認められない可能性があります。

また、活動は継続して行われることが見込まれなければなりません。例えば、日雇い契約のような一時的な活動では、継続性が満たされないと判断され、不許可のリスクが高まります。

一方、有期雇用契約の場合は、一定期間の継続性が見込まれるため、原則として可能です。

7. 労働基準法との関連性

労働契約の締結にあたっては、労働基準法第15条に基づき、書面での明示が義務付けられています。賃金や退職に関する規定など、絶対的記載事項が記載された労働契約書、雇用予定書、または労働条件通知書などが必要です。これらの書類は、「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」(本国の出向でなく、新たに日本で雇用契約を交わす場合)などの在留資格申請において、重要な立証資料となります。

もし、これらの絶対的記載事項が欠けている場合、在留審査基準を満たさないと判断される可能性があります。

8. 特定技能と労働法遵守

特定技能の在留資格においては、労働基準法その他労働法令に加え、特定技能雇用契約の基準も満たす必要があります。

 特定技能基準省令の雇用契約基準例:原則、有給休暇を一時帰国時に与えること等

これは、入管法が法務省令に委任している事項であり、基準に合致しない場合は在留資格該当性が認められず、認定申請、変更申請、更新申請が不許可となる可能性があります。特に特定技能においては、労働法違反が在留資格の該当性を失わせる原因となる条文が存在するため、より厳格な労働法遵守が求められます。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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