資格外活動違反は不法就労?【外国人雇用の専門家が解説】
2025年08月02日
コンプライアンス特定技能技能実習在留資格一般
資格外活動違反は不法就労?【外国人雇用の専門家が解説】

外国人材の活躍がますます重要となる現代において、企業コンプライアンスの観点から「在留資格」の管理は極めて重要です。特に、些細な認識違いから重大な法令違反に繋がりかねないのが「資格外活動」です。
本ページでは、外国人を雇用する企業様、そして日本で働く外国人ご本人の双方にとって必須の知識である「資格外活動」について、許可のルールから違反した場合の重い罰則まで、専門家である行政書士が分かりやすく解説します。
内容
【外国人雇用の専門家が解説】資格外活動は不法就労?許可のルールと違反のリスク
6. 企業を守るために。行政書士顧問による定期的チェックのススメ
外国人は、許可された「在留資格」の範囲内で定められた活動のみを行うことが認められています。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ方はエンジニアや通訳・翻訳者として、「技能」の在留資格を持つ方は調理師や建築技能者として、その専門性を活かして働くことが前提となります。
この本来の在留資格で認められた活動以外の、収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行おうとする場合、原則としてあらかじめ地方出入国在留管理局から「資格外活動許可」を受ける必要があります。この許可を得ずに行う活動、または許可の範囲を超えた活動が「資格外活動違反」となります。
資格外活動許可には、活動内容を特定しない「包括許可」と、個別に活動内容や就労先を指定して許可する「個別許可」の2種類があります。
許可の種類 | 主な対象となる在留資格 | 許可される活動内容・条件 | 注意点 |
包括許可 | 「留学」「家族滞在」「特定活動(一部)」など | 原則週28時間以内の収入・報酬を伴う活動 (風俗営業等、法令で禁止された業務を除く) |
・長期休暇中(学則による)は1日8時間以内まで拡大可 ・勤務先や業種が特定されない(単純労働も可) |
個別許可 | 就労系の在留資格を持つ方 (例:「技術・人文知識・国際業務」「技能」「企業内転勤」など) |
個別の申請に基づき、許可された勤務先・業務内容・期間での活動 | ・本来の在留資格の活動を妨げないことが条件 ・単純労働は原則として認められない ・フリーランスや個人事業主として活動する場合も必要 |
【具体例:個別許可が必要なケース】
ITエンジニア(在留資格:技術・人文知識・国際業務)として企業に勤めるAさんが、週末に知人の会社でウェブサイト制作のアルバイトを有償で行う場合。
このケースでは、Aさんは本来の在留資格の活動(ITエンジニア)に加え、別の会社で報酬を得る活動を行うため、事前に「個別許可」としての資格外活動許可を取得しなければなりません。
資格外活動違反は、意図せずとも発生してしまう可能性があり、その違反態様によって「専従資格外活動違反」と「通常の資格外活動違反」に分けられます。これらは、外国人本人だけでなく、雇用主にも厳しい罰則が科される重大なコンプライアンス違反です。
違反の類型
- 専従資格外活動違反
本来の在留資格活動を全く、またはほとんど行わず、資格外活動に専ら従事している状態です。在留資格制度の根幹を揺るがす非常に悪質な違反と見なされます。
- 例: 翻訳者として「技術・人文知識・国際業務」の許可を得たにもかかわらず、実際には一度も翻訳業務は行わず、毎日工場でライン作業のみに従事している。
- 通常の資格外活動違反
本来の在留資格活動は行いつつも、許可の範囲(時間、場所、業務内容など)を超えて資格外活動を行う状態です。
- 例:
- 留学生が包括許可(週28時間以内)を超えて、週40時間アルバイトをする。
- 「家族滞在」の在留資格を持つ方が、資格外活動許可を得ずにパートタイムで働く。
- ITエンジニアが、個別許可を得ずに他社で有償のコンサルティングを行う。
資格外活動違反は「不法就労」の一類型
「不法就労」とは、以下の3つのケースを指します。資格外活動違反は、このうちの③に該当します。
- 不法滞在・被退去強制者など:オーバーステイや密入国した外国人が就労するケース
- 就労が認められない在留資格:「短期滞在」や「研修」など、就労が認められていない資格で就労するケース
- 許可の範囲を超えた就労:資格外活動の許可なく、または許可の範囲を超えて就労するケース
つまり、**資格外活動違反は明確に「不法就労」**であり、違反した本人と、そうとは知らずに雇用した企業も厳しい処分の対象となります。
違反した場合の罰則・行政処分
違反が発覚した場合、外国人本人と雇用主の双方に厳しいペナルティが科されます。
対象者 | 刑事罰(入管法) | 行政処分など |
外国人本人 | 不法就労罪 ・3年以下の懲役もしくは禁錮、または300万円以下の罰金(または併科) |
・在留資格の取消し ・退去強制(国外追放) ・在留期間の更新や変更が不許可 |
雇用主・あっせん者 | 不法就労助長罪 ・3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科) |
・行政指導 ・技能実習、特定技能等の受入れ機関としての認定取消し ・企業の社会的信用の失墜 |
【重要ポイント】
雇用主は、外国人労働者が資格外活動違反であることを**「知らなかった」としても、在留カードの確認を怠るなどの過失があれば処罰の対象**となります。採用時の確認はもちろん、雇用後の管理体制も極めて重要です。
在留資格の目的によって、違反となりうるケースは様々です。
在留資格 | 違反となりうる具体例 |
技術・人文知識・国際業務 | ・専従違反: 翻訳者として許可を得たが、実際は工場でライン作業や清掃業務にのみ従事。 ・通常違反: 許可を得ずに、週末に飲食店で調理や接客のアルバイトを行う。 |
企業内転勤 | ・関連会社以外の、別の会社・事業所で業務を行う。 |
技能実習 | ・実習計画と異なる作業への従事。例えば、溶接の技能実習生が、計画にない建設現場での単純作業や農作業をさせられる。 |
特定技能 | ・許可された業務区分(例:介護)以外の業務に従事させる。例えば、介護人材として雇用したにもかかわらず、主に送迎バスの運転業務や、関連施設での調理業務をさせる。 |
留学 | ・許可された週28時間の制限を超えてアルバイトをする。 ・パチンコ店やゲームセンター、バーなど風俗営業等にあたる店舗で働く。 |
特に**「技能実習」や「特定技能」においては、外国人本人の資格外活動違反であると同時に、受入れ企業側が実習計画や雇用契約の重大な違反**を問われ、改善命令や認定取消しといった重い行政処分に直結します。
「特定技能」の外国人が働く企業で、共通要件である日本人の退職勧奨や、分野別要件である地方からの引き抜きなどをした場合は基準不適合となります。そうすると、基準不適合が在留資格該当性を失うことになるので、資格外活動違反となる法律となっております。
a.共通要件:同一職種の非自発的離職となる「退職勧奨」
退職勧奨は労働法上、多くは解雇とならないため、解雇させたい企業によって利用される手法です。これは社会保険労務士や弁護士からも助言を受けて実行されるケースがあります。
しかし、入管法上、これは「非自発的離職」に該当し、特定技能基準省令違反となります。すると、一年間は特定技能外国人を受入できなくなります。受入停止という重大なことになると、多く受け入れている企業の事業は立ち行かないでしょう。
労働法以上に入管法が重大な問題となり、しかも日本人に対する行為が影響してしまうことは、入管法の世界が特殊な世界であることを認識しなければなりません。
外国人雇用企業の場合、そのような日本人に対する処分や行為も一般の人事担当者には予想しにくいため、行政書士に定期的チェック依頼が必要です。
b.分野別要件: 協議会の取り決め・誓約事項「引き抜き禁止」
地方から都市部への引き抜き禁止の違反があれば、違反となり、企業が協議会の要件を満たさず、基準不適合となります。すると、届出の上、
6. 企業を守るために。行政書士顧問による定期的チェックのススメ
資格外活動違反は、知らず知らずのうちに境界線を越えてしまうリスクを常に内包しています。企業のコンプライアンス体制を万全にし、貴重な外国人材と共に安心して事業を継続するためには、専門家による定期的なチェックが不可欠です。
【行政書士顧問によるチェックポイント】
✅ 採用時のチェック: 在留カードの就労制限の有無、資格外活動許可のスタンプの確認を徹底します。
✅ 業務内容の適合性チェック: 現在の業務内容が、本人の在留資格で認められた範囲内か、定期的にヒアリングし確認します。
✅ 労働時間の管理: 特に包括許可を持つアルバイトの労働時間が、週28時間の制限を超えていないか、管理方法をアドバイスします。
✅ 「特定技能」等の要件遵守チェック: 特定技能外国人材の受入れ企業に課せられる様々な義務(日本人の非自発的離職の防止など)が遵守されているかを確認します。
✅ 法改正・最新情報の提供: 目まぐるしく変わる入管法や関連法令の最新情報、審査の運用動向をお伝えし、常に適法な状態を維持できるようサポートします。
資格外活動に関する少しの不安や疑問が、将来の大きなリスクに繋がります。「これは大丈夫だろうか?」と感じた時が、専門家に相談するタイミングです。
当法人では、外国人雇用に関する法務顧問として、各企業様の実情に合わせた最適なサポートをご提供しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
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行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他