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コラム
2024年09月09日 コラム
就労ビザ不許可後の再申請方針
不許可後の再申請をお考えの方に、直ちに行政書士が採るべき理論と実務を解説
Q. 就労ビザ申請が不許可になった場合、行政書士はどのように再申請を行い許可をとってくれるのか。 |
A. 技術・人文知識・国際業務その他就労ビザが不許可になった際は、理由やその対処にいくつかの基本パターンがあります。
その理由を特定するために、行政書士が入管に出頭の上、詳細を掘り下げて聞きます。
それで再申請方針を組み立てます。以下の通り、その手順と実際のケーススタディを交えて解説します。
不許可後案件対処の通則
出国準備等の場合、在留期間30日、または特例期間可能な31日あるいは90日などのケースに応じて次の手順を迅速対応することになる。
なお、31日以上でない場合は、申請後に退去強制の対象とされないように、事前に審査官と話をすること。
審査官との話や依頼者との話で、重要なことをピックアップできる相談技法と質問技法が重要となる。
◆再申請に共通の手順
□受任時ヒアリング
不可能案件かどうか判断し、報酬を事前に決定する。
必要資料
1.不許可理由の通知書
包括的であり、推測しながら、個別の事情を聞くこと
2.提出資料
□プランニング
上記事情の事実と推測をもとに、許可・不許可の類似事例を調査して方針決定
□ディレクション
対外的な案内、所内でも資料収集とさらなる調査
上記を先回りする立証資料を数日かけてでも準備頂く
不能な場合は、さらに次回申請までに準備を促す
□資料作成と申請
理由書は立証資料があってこそ、その効果があり、就労においては該当性及び基準適合性を含む相当性などを立証できる資料を準備。
上記により提出資料50枚ほどになることが多い。100枚近い案件もある。
不許可時の実際の初動から再申請まで
不許可通知文書の理由の例
「安定的・継続的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行うものとは認められません。」 |
上記が、該当性に係る活動が存在しない「単純就労」の疑いなのか、業務量が少ないという疑義によるのか、それとも両方か、他にあるのか、個別事情と経験で考える。
□経験則による場合の問題
忙しいときに判断を誤ったり、網羅できない。
□不許可後案件の特徴
複数の要件適合を網羅できないことで、再度不許可になりえる。
網羅して先回りすることが安全
例:すでに追加通知を受けて対応不十分で不許可になった案件などで、理解していない申請と思われると、同じ過ちを繰り返していると入管は判断することもある。
□理論とマニュアルの必要性
理論があれば再現性が高く、網羅しやすい。しかし対応できる人材が限られ、難解案件は5~8年以上の経験などが必要なことが多い。
マニュアルで再現性が高くなる。
(手順編)スタッフマニュアル例
1.事例の再現性向上 他案件やデータベースで検索し参考にすること ただし、類似事例のほぼ丸写しなど虚偽は厳禁 2.許可事例の使い方 添付資料で有利になったものは一部コピーや応用であてはめて案内可 3.不許可事例の使い方 不安要素は理由書の要件ごとに検索 業務内容その他を実態から変更提案するなどで許可率UP。
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再申請における不許可理由の払しょくの実務と理論
以下の検討した理由について、重要なものを審査官から理由説明において聞き出す。この理由説明の機会は一回きりなので、再申請まで行う行政書士が同席することが必要。
そのため、以下の質問はすべて実行する。事前に依頼者からすべての心当たりを聞いておくこと。再申請で解決すべきはその原因事実である。原因と理由は分離できるため、原因から推測すること。
1. 理由:在留資格該当性に係る活動が存在しない又はあまり存在しない。
原因の推測:「単純就労」の疑い
2. 理由:業務が安定的でない。
原因の推測:職務内容の専門性があっても、量が少ない
3. 1および2の両方
4. 他の不許可理由:非虚偽性又は相当性もありえるが、上記の記載「安定的・継続的」は基本的に在留資格該当性が十分でないことを指す。しかし、審査官があいまいにしていることもあるため、十分に想定問答を準備する。
原因の推測:何か要件に適合しないと思われる事実を推測し、依頼者にクローズドクエスチョンも交えて心配事をすべてヒアリングすること
虚偽申請の場合のリカバリーによる再申請
いずれも原因事実を大事にし、要件との比較を繰り返す。過去の虚偽申請などがあれば、立証すべき証拠や説明文の量が二倍以上大変になると考えてよい。
その際、二度と虚偽申請を行わないことを依頼者と約束し、受任する。
受任後、入管から指摘された箇所をすべて払拭し、説明する。
申請人の責任の例:外国人の過去を責めず、証拠の提出ができなくても、あきらめない姿勢
経歴について送り出し機関などから勝手に記載されて、監理団体がそのまま申請していることもあるため、虚偽がすべて依頼者の責任と思わないで、事実確認の上、物的証拠がない場合は、理由書や第三者の書面等の証拠を確認し提出できるか検討します。
企業の責任の例:過去の不正等の払しょくを行い、今後再犯がなく入管行政に真摯に向き合う努力を行う姿勢
企業は、外国人の資格外活動や時間オーバーを許容やほう助していた場合、資格外活動違反の共犯と、助長していることについて不法就労助長という違反となることがあります。その際、以下のように対応します。
理由書の例:
企業が過去に不法就労となる資格外活動をさせていた場合、それにいたったやむを得ない経緯なども説明すること。
反省文の例:
理由書は主に経緯や申請の理由に関する主張などであり、証拠とは異なる。反省文などにより、その違反の法律の趣旨や、損なった行政上の国益を説明する。
それに対して現状すでに対処している事実を疎明する証拠を出すことも有効である。
例:不法就労助長が企業にあった場合、経緯を説明し、労働市場に対する違反や影響を理解し再犯防止を行う蓋然性を説明し、さらに立証する。
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この記事の監修者
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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザ専門。手続代理及びコンプライアンス顧問として、登録支援機関のほか弁護士等の専門家向け顧問の実績多数。
- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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