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虚偽申請とは?その範囲の見極め、在留資格と会社も守る対処方法と受任判断

2026年03月04日

行政法実務コンプライアンス

虚偽申請とは?その範囲の見極め、在留資格と会社も守る対処方法と受任判断

本解説では、プロとして虚偽の可能性をどう見極め、不適法なニーズに対してどのように毅然と対処すべきか、その実務的知見を共有します。

虚偽申請の対象、類型とリスク総論

入管業務を専門とする行政書士や雇用企業にとって、最も警戒すべきは「虚偽(偽装)申請」への加担です。依頼者・内定者の「どうしても許可が欲しい」といった切実な願いの裏に、不適法な事実が隠されている場合があります。

さらに、就労や婚姻、つまり根幹の「実態」自体は問題なくても、関連する事実の実態と、異なるような申請を作り出す問題があります。実体と手続の虚偽があるわけです。

「3年や5年の許可がほしいから、指示をもらえればなんでも出す」などとという方もいます。つまり、実態と異なる書面を出してくるという話もあります。

当然、それらを指摘しないと仕事は続けられません。最悪、解約になることもあります。それを恐れないことも重要です。

この点、そもそもは受任時に断る必要があります。それを行うには、まず、専門的知識が必要です。その知識によって区別する要素は、主に三つ挙げることができます。

(1)要件となる事実が虚偽であるかどうか

一つ目は、審査官にとって、重要な事実を認識することです。それは要件との関係です。

すなわち事実を曲げることで誤った許可をさせることが問題であり、その事実が「法令要件となっていて立証すべき重要な事実」であることが重要なわけです。立証すべき要件の事実と異なる場合は、それを「虚偽申請」だと騒ぐ前に、そもそも議論対象の中心を、「要件となる事実」に集中することです。

(2)適正な「要件裁量」の法的評価は虚偽と別次元

二つ目は、事実認定と法的評価とは異なる段階であることを理解していることです。例えば、「要件裁量」の概念を行政法で理解している必要があります。

要件裁量とは、事実認定が終わって、法的評価の段階で適用されます。簡単に言うと、「審査官ごとでも違いが表れる要件に合うか合わないかの評価」のことです。

例えば「技術・人文知識・国際業務」の業務において、「専門性」とはどこまで認めるのか、「素行善良」の基準は交通違反もだめというのか、などがあります。

この要件裁量が必要な部分では、一律に虚偽申請ではないので、それを見極めができる知識と経験が必要です。

例えば、散見されますが「飲食店で「技術・人文知識・国際業務」はとれません。専門的な業務といったら、すべて虚偽申請です。」という行政書士がいたら、これを理解する必要があります。

もちろん、虚偽申請をしているであろう飲食店や人材会社があることも原因の一つです。

(3)行政処分や刑罰を軽視すべきでない「回復困難性」

三つめは、依頼者にとっては、その罪や行政処分がどの程度重いのかを分からずに強いてくることもあります。それを専門的に指摘する知識を身に着ける必要があります。

次に行政書士や偽装雇用企業のリスクです。我々は虚偽申請を知らずに依頼され、加担しても、共犯又は正犯として逮捕され、しかもニュースメディアなどで報道される立場にあります。その後無罪になったとしても、メディアは無罪を報道してくれません。ダメージは大きいのです。

さらに、依頼者や会社に適用される行政処分に時効はありません。刑罰よりその意味では重く、つまり「ばれるまで一生の問題」になります。

なお、登録支援機関が虚偽申請をしても、企業は責任を逃れられません。

 虚偽申請の依頼が疑われる傾向

経験豊富な実務家は、最初の問い合わせや相談の段階で「違和感」を察知します。以下の傾向に当てはまる場合は、慎重な判断および調査が必要です。

虚偽が疑われる主なサイン

・経歴の整合性: 過去の入国履歴、学歴、職歴に空白期間や矛盾がある(例:母国での就学期間中に日本に滞在している等)。

・不自然な動機: 「なぜ今、その資格なのか」「なぜその会社なのか」に対する説明が、一般的・抽象的すぎる。

・情報の小出し: 都合の悪い事実(犯罪歴、不許可歴)を、こちらが突っ込むまで隠そうとする。

・過度な急ぎ案件: 「理由を問わず、明日中に申請してほしい」と、精査の時間を与えないようにする。

・第三者の介在: 本人ではなく「ブローカー」らしき人物が窓口になり、本人との接触を拒む。

実務のアドバイス

「おかしい」と感じたら、まずは「原本確認」「時系列の表作成」を徹底してください。口頭の説明と書面が1ミリでも食い違う場合、そこには必ず理由があります。

 虚偽を見抜く「ディープ・ヒアリング」の技術

単に質問するだけでなく、整合やタイムラインを前提としたヒアリングを行います。

  • 「いつ・どこで・誰と」を詳細に聞く: 虚偽のストーリーは細部から崩れます。
  • 矛盾を指摘した際の反応を見る: 整合性のなさを指摘した際、論理的な説明ができず、感情的になったり話を逸らしたりする場合は危険信号です。
  • SNSや公開情報の照合: 職務上の範囲内で、申告された活動実態と矛盾する情報がないか確認することも一つの手段です。

 毅然とした「断り」のテクニックと文言

「不適法な案件」と判断した場合、曖昧な返答は禁物です。行政書士としての職務倫理と法的リスクを背景に、「受任できない理由」を明確に伝えます。

冒頭で「我々は虚偽申請をしません」と断言し意識付け

そのような疑いや、傾向がある案件は、受任説明等の中で、さりげなくでもよいので、「弊社は虚偽の申請を一切代行しません」などと言うことで、かなりの確率で変な案件を遠ざけることができていると実感します。

自信がなさそうな受任対応はしないこと

また、経験が少なそうであったり、仕事に困っていそうな雰囲気を、ブローカーや申請者は敏感にみています。したがって、日々の研鑽や仕事を通じた成功体験による自信を持つことが重要です(もちろん、どのような案件でも受けられますといった対応をとるべきと言いたいわけではありません)。

 

 

依頼者が、不法就労助長や不正取得の罪や行政処分を受けると回復困難であることを伝えること

「依頼者ファースト」の考えなら、行政書士としての逮捕や懲戒より先に、依頼者自身や関係者が正犯や共犯となって、処分を受けることを心配することが重要です。つまり申請依頼において、何も言わず拒否又は遂行するだけではなく、そのリスクが大きいことは伝えるべきです。

パターン別:断り文言の例

虚偽の内容が含まれている場合

「当事務所では、入管法および行政書士倫理に基づき、真実に基づかない申請は一切お引き受けできません。ご提示いただいた内容で、このまま申請することは法令違反(虚偽申請)に該当する恐れがあります。プロとして、虚偽の内容を含む書面を作成することはできません。」

ここで、「違法を反省文などで表明し、適正に許可を目指すことなら、我々は自信があります」と伝え、適法化を促すことは重要な社会的役割です。更生までを期待されているわけではないので、混同に注意してください。

過ちを犯した依頼者であっても、適正化に同意されるなら、後押しし、妥当な範囲でリスペクトすることが重要です。

法律上の要件を明らかに満たさない(不法なニーズ)場合

「ご希望の活動内容は、現在の入管法における在留資格の要件を満たしておりません。要件を満たさない状態での申請は『不許可』が確実であり、無理に申請を行うことは、お客様の今後の在留状況に深刻な悪影響(ブラックリスト化等)を及ぼします。したがって、本案件の受任はいたしかねます。」

協力体制が得られない場合

「入管業務は依頼者と行政書士の信頼関係の上に成り立ちます。必要書類の原本提示や、事実関係の正確な開示にご協力いただけない場合、責任を持って業務を遂行することができないため、受任を辞退させていただきます。」

 なぜ「毅然と断る」ことが重要なのか

「せっかくの依頼だから」と妥協して受任することは、結果として誰の幸せにもなりません。

  1. 依頼者の保護: 虚偽申請は、将来的な強制退去や上陸拒否該当、会社にも受け入れ停止や不法就労助長罪などの重い刑罰など、依頼者とその関係者の人生を破壊します。
  2. 事務所の信用維持: 入管から「疑わしい申請を出す事務所」と認識されると、他の正常な案件の審査にも影響が出かねません。
  3. 法的責任の回避: 行政書士が虚偽を知りながら加担した場合、資格剥奪や刑事罰の対象となります。

結び:入管業務と行政法の専門家の役割

私たちは依頼者の味方ですが、同時に日本の入管行政の適正な運用を支える「行政法の専門家」でもあります。

「受けるべきでない案件」を自信持って見極め、断る勇気を持つこと。それが、虚偽申請を行う依頼者を気づかせることができ、適正化に資することがあります。

それらの積み重ねが、巡り巡って事務所の質を高め、本当に助けを必要としているクライアントを救う力に繋がります。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


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特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他


- 略歴等

・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


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・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他

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