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行政書士の書類作成技法:ESと「三段論法」の基礎と応用

2025年06月20日

コンプライアンスサービス

行政書士の書類作成技法:ESと「三段論法」の基礎と応用

この解説ページでは、伝わる文書を作成し、スムーズな申請を実現するためのポイントをご紹介します。

まずは、王道であるアカデミック技法を簡単に紹介します。Executive Summary (ES)と法的三段論法です。

次に、事務所のオリジナルである「逆三段論法」を公開します。

これらにより、「伝わりやすい」円滑な行政手続に寄与し、審査円滑化の可能性が高まります。

さらに、社内や顧客の満足が高まるコミュニケーションまで応用できるようにします。

(理由書作成技法の関連記事を参照する場合は以下)

⇒ 理由書作成技法:在留申請をする入管行政書士や企業必読

内容

行政書士の書類作成技法、「逆三段論法」等の応用

1. 伝わる文書作成の重要性

2. 物語調ではないビジネス・法律文書のミックスで審査も早くなる

3. 法的文書の基本:三段論法

4. エッセイやHPコンテンツ作成における活用

5. 専門家同士、あるいは行政官に質問・相談

6. 応用:論点が明確なスピード重視の「逆三段論法」

質問、相談の例1(形式的な理解で行うことができるもの)

質問、相談の例2(実質的な理解で行うべきもの)

7. 慣れるまで、まずチャットやメールで行い、次に口頭で補足する

8. 結論

1. 伝わる文書作成の重要性

文書作成において最も大切なのは、「伝わる」です。谷島行政書士法人グループの代表である私にとって、伝わるかどうかは、シンプルにするテクニックを知っているかどうかともいえます。国語力などということもありますが、国語の問題を解けるかどうかは、ケースバイケースで言い換える技法が重要です。技法、つまり訓練次第で身に着くのです。

「伝わりやすさ」とは、伝わりにくい言い回しを回避する必要があります。まず、経緯を話したいために、情報を詰め込みすぎると、何を伝えたいのかが不明瞭になり、誤解を招く可能性があります。優先順位が低い情報は、あえて排除する必要もあります(自分が伝えたいニュアンスは、論証をし、または後述の「逆三段論法」で補足すればよいのです)。

文書の目的は、誤解なく知識を共有し、上司や顧客による確認を迅速にすることにあります。特に、アメリカのアカデミックな手法では、Executive Summary (ES) と呼ばれる概要が重視されます。これは、10枚ほどのエッセイやレポートであっても、要点をまとめたA4用紙半分程度の資料を読むだけで、経営層が内容を判断できるようなものです。これにより、文書を読む価値があるか、どのような内容が書かれているかを事前に予測しながら読むことができます。

2. 物語調ではないビジネス・法律のミックス文書:入管等審査迅速

日本の「起承転結」のような物語形式は、ビジネスや法律の文書作成には適していません。ビジネスや法律の文書では、結論から先に述べる構成が効果的です。

  • 「小説と逆」の考え方: 意外性を与えることは避け、明確で論理的な記述を心がけます。
  • ES技法を用いる場合、3行程度でもよいです。書いてある内容の予測がつけばよいのです。読み進めるストレスが減り理解しやすいからです。

3. 法的文書の基本:法的三段論法

法律文書の作成においては、「法的三段論法」が基本となります。これは、ロースクール出身者が実務で一般的に使用するもので、顧客からの相談への回答や、行政庁への申請書類にも適用されます。

法的三段論法のステップは以下の通りです。

  大前提:法令解釈

  小前提:事実(前提条件)

  結論:効果

法的三段論法とは、大前提(法律の規定など)、小前提(具体的な事実)、結論という3つのステップで構成される、法律的な論理の組み立て方です。具体的には、以下の3段階を踏みます。 1. 規範定立(大前提): 法律の条文など、適用されるべき法律の規定を明確に示します。 2. あてはめ(小前提): 問題となっている具体的な事実が、上記で定立した法律の規定に当てはまるかどうかを検討します。 3. 結論: 上記の検討結果から、法的な判断(例えば、この事実は法律に違反する、など)を導き出します。  

出典:得津晶、東北大学法学部「法科大学院の教室における2つの法的三段論法」

https://www.law.tohoku.ac.jp/staging/wp-content/uploads/2023/03/%E2%91%A0%E6%B3%95%E7%A7%91%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%99%A2%E3%81%AE%E6%95%99%E5%AE%A4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%EF%BC%92%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%B3%95%E7%9A%84%E4%B8%89%E6%AE%B5%E8%AB%96%E6%B3%95.pdf

4. エッセイやHPコンテンツ作成における活用

ここで述べたアカデミックな文書作成手法は、短い論文やHPコンテンツの作成にも応用可能です。

  • 引用の作法: 他のサイトや政府のサイトからの引用であっても、必ず引用元を明記するなど、著作権に関するルールを遵守することがプロとして重要です。

5. 専門家同士、あるいは行政官に質問・相談

質問や相談は、相手のリテラシーを察知して、伝わりやすくしなければなりません。

実は行政官も誤った回答をすることがあります。それは、質問力がない相談の場合、特にそうなります。

誤った回答の原因として、人間関係のミスコミュニケーションを防ぐ組み合わせが重要です。

例えば、相手が感じるであろう誤解ないし多義的な言葉に注意し、その兆候をみて察知する能力がある優秀な人と、そうでない人なら正確な専門家同士のコミュニケーションが成り立ちます。

他の例えでは、業界の常識、最低限の法則を知っている場合もコミュニケーションが成り立ちやすいです。

例えば、一定レベルの行政官や法律職の世界では、原則と例外を用いる話やルールを使い、取り決め(契約書)等を交わすことが多いです。

原則を使えば、もれなく網羅でき多数パターンの暗記が必要ないという常識があり、その重要性を認識して頭で整理します。それがない人と法律職が話すと、毎回、多数のパターンを相談され判断させられるのです。

しかし、双方に察知する能力がなく自分が言いたいことしか言わない場合、その相談や質問自体が長々と何を言いたいかわからないため、国語の問題のようになります。つまり、「話者の意図理解」の問題です。皆が解けるわけではない問題になるため、誤った回答になることが多いです。

そのため、片方に能力があれば、上記の例でも、議論や講義のような教えが発生する等の過程を経て、相互理解が成り立ちます。

したがって質問は相手のリテラシーを察知して、パラフレーズし、又は絞るべきです。

6. 応用:論点が明確なスピード重視の「逆三段論法」

「逆三段論法」とは、谷島行政書士法人グループの代表である私が考案・命名した技法です。上記三段論法をひっくり返すことで、最初に結論をもってきます。それを疑問形にもでき、あらゆる場面で幅広く使える汎用性があります。

  • 逆三段論法では、最後の結論を質問形式にすると、スピーディーに意思疎通が図れるだけでなく、大前提が誤っている場合に、自分でも気づくことができます。
  • これは、社内なら論理矛盾を訓練しながら恥をかいても問題ない安全な環境であることが必要です。上司は揚げ足取りや細かい指摘をしてはいけません。

a.質問、相談の例1(形式的な理解で行うことができるもの)

 結論を疑問形にして凝縮し、最初にもってくる方法により予測させ、誤解を減らす

  1. (三段論法の疑問版の結論+小前提)〇〇の場合、△△の該当性は、〇〇でよいのでしょうか?

  2.なぜなら△△という事実が法令要件××にあてはまるからです。

入管法の「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」等の条文などで、イレギュラーな事実を原則または例外にあてはめてみる。

b.質問、相談の例2(実質的な理解で行うべきもの)

 結論を疑問形にして凝縮し、最初にもってくる方法により予測させ、誤解を減らす

  1. (三段論法の疑問版の結論+小前提)〇〇の要件について、△△は〇〇に該当するとされるのでしょうか?

  2.なぜなら〇〇の規定に関して、△△という事実は××とされるからです。

  3. (パラフレージングでさらに補強する: △△は〇〇の原則/例外で許可に問題ないでしょうか?××でない場合です。例えば××です。)

技人国の条文などで、イレギュラーな事実を原則または例外にあてはめてみる。

ただ、場面に応じてカジュアルさがなくならない程度にします。そうでないと、詰められていると感じる相手もいるからです。間に傾聴やミラーリング、相槌などの心理的な技法を入れると解決するでしょう。

7. 慣れるまで、まずチャットやメールで行い、次に口頭で補足する

これらの文書作成技術は、繰り返し実践することで身につきます。質問や相談もより円滑に進められるようになります。

慣れているからといって、最初から口頭で気軽に話しすぎると、訓練にならず、自分の癖が直らないこともあります。この点、チャットツールを使うと、論理的かどうか整理され、自己チェックができてから話す習慣が身に付きます。つまり、訓練になります。

8. 結論

以上、様々な場面で使えるライティング技法をお伝えしました。中でも中心に論じた外国人ビザ申請における書類作成は、単なる情報の羅列ではなく、論理的な構成と明確な要件適合事実を「伝える優先順位」が不可欠です。本解説でご紹介した三段論法やExecutive Summary(ES)の考え方を活用し、常に「伝わる文書」を意識してください。

この解説が、貴社の外国人在留資格(ビザ)申請業務の一助となれば幸いです。もし、このような書類作成技法のセミナーや顧問による書類チェック又は修正のご依頼がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士
谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
・外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。
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 - 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他

- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。

- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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