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行政書士の守秘義務とは:在留申請の対象は外国人?雇用企業?

2026年03月05日

コンプライアンス

行政書士の守秘義務とは:在留申請の対象は外国人?雇用企業?

在留資格(ビザ)業務では、申請人は外国人本人である一方、実務上の依頼者は雇用企業・支援機関・親族など、申請人と別の主体になることがよくあります。
そこでよく出る疑問が、「守秘義務は、申請人(外国人)というより依頼者(雇用企業等)に向くのか?」という点です。

結論としては、行政書士法の守秘義務は、誰のためかを一言で割り切るよりも、“業務上取り扱った事項について知り得た秘密”を漏らしてはならないという形で、対象を広く捉えるのが実務的・安全です(行政書士法12条)。
つまり、雇用企業の秘密も、外国人本人の秘密も、第三者の秘密も、業務上知り得た限り守秘義務の射程に入ります。

 

  1. 行政書士法上の守秘義務根拠:法令の解釈

まず、守秘義務の規定は以下の通りです。

(秘密を守る義務)

第十二条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。

誰の秘密かの限定無し

これは「依頼者」や「申請人」の限定はありません。

「正当な理由」は狭い

さらに「正当な理由」とは狭く、行政書士は入管業務をやっていると、虚偽申請の片棒を知らない間に担がされることもあります(実際に無実となることは多いのですが、その報道はされず逮捕の報道でダメージを受ける方がいらっしゃいます)。その場合、仮に警察や検察から連絡を受けたとしても、「依頼者のことを必要以上にペラペラしゃべること」での秘密漏洩は罪です。守秘義務違反は免れないことがあると覚えてください。つまり依頼者の秘密を公的機関へ話してよいということにならず、別次元の話なので、行政書士法人内での運用を決める必要があります。

「一生の秘密」

また、業務をやめても義務は免れず、一生の秘密であることも注意が必要です。この義務違反は、民間で通常、民事責任ですが、行政書士法では刑罰も加わるだけでなく、民間ではありえない重い義務です。

SNSの運用などの問題

したがって、SNS運用も注意義務が必要となります。弁護士の場合は、依頼者のことを公にしない運用をベテランから教えてもらっていることが多いです。しかし、それ以外の士業は(特に若手などで、名前を売りたい事務所は)残念ながら、行政書士でも何も考えず、SNSを良くも悪くも使い過ぎであることはリスクです。

目的からの解釈

さらに、直接の規定がなくても、法律は通常、目的規定から解釈を導くことが多くあります。すると行政書士法1条の使命である「国民の権利利益の実現」を侵害してはならない点が解釈されます。

(行政書士の使命)

第一条 行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。

 

  1. 守秘義務は「罰則あり」で責任が重い(代表だけでなく“行為者”も)

行政書士の守秘義務は、倫理上の要請にとどまらず、刑事罰の対象です。
行政書士法では、守秘義務違反(12条)や使用人等の守秘義務違反(19条の3)に対し、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています(22条)。

また重要なのが、代表行政書士だけの問題ではない点です。

  • 行政書士本人:守秘義務(行政書士法12条)
  • 行政書士法人の職員・補助者等(“使用人その他の従業者”):守秘義務(行政書士法19条の3)

さらに、日本行政書士会連合会の「行政書士職務基本規則」でも、
補助者・事務職員等に秘密を保持させる義務や、記録の保管・廃棄時の漏えい防止まで明記されています。

「事務所全体で守秘義務を負う」という設計(教育・権限管理・委託管理)がないと、事故が起きた瞬間に説明できません。

  1. 「依頼者=雇用企業」のケースでも、守秘義務は申請人への“企業情報漏洩も含む”

在留手続では、契約(委任)の当事者が雇用企業であることが多く、“依頼者”は企業と整理されやすいです。
しかし、守秘義務の文言は「依頼者の秘密」に限定されず、“業務上取り扱った事項について知り得た秘密”です(行政書士法12条)。

したがって、たとえば以下の情報は、業務上知り得た「秘密」として守秘義務の対象になり得ます。

  • 外国人本人の学歴・職歴・在留歴、過去の不許可歴
  • 家族関係、健康情報(※取り扱いは特に慎重)
  • 雇用企業の人事戦略、賃金、採用計画、内部事情
  • 支援機関・紹介会社・取引先の情報

 

申請一式に含まれる「事業計画書・税務資料」も守秘義務の対象(企業側情報のリスク)

在留資格申請では、申請人(外国人)の情報だけでなく、雇用企業・受入企業の内部資料が申請一式に含まれることがあります。代表例が、事業計画書、決算書・試算表、法人税申告書控、勘定科目内訳、給与台帳、納税証明、資金繰り表、取引先資料などです。

これらは、公開されていない情報も多くあります。それは「会社法上、決算書は公開されるから秘密ではない。」という法的に偏り、かつ浅い考えは依頼者に通用しないこともあります。それをすべての法人類型で個別に法的判断をすることも実益は低いと考えます。

行政書士が「業務上取り扱った事項について知り得た秘密」として、行政書士法12条の守秘義務の射程に当然入ると整理するのが安全です。依頼者が企業である場合は特に、企業の秘密(経営情報・財務情報)が中心になります。

1) なぜ企業資料は“より慎重”が必要か(実務上の理由)

企業資料は、漏えいした場合のダメージが大きくなりがちです。

  • 競争上の不利益:原価、粗利、販路、投資計画、人件費設計が外部に知られる
  • 対外関係への影響:金融機関・取引先との条件、未公表の出店/撤退計画
  • 社内ガバナンス問題:決裁者以外の担当者・現場に不要に共有されると、労務・人事トラブルの火種
  • 個人情報の混在:役員・従業員の給与、マイナンバー周辺情報が紛れやすい(※取り扱い要注意)

したがって、守秘義務の「法的義務」としてだけでなく、プロの情報管理(倫理・体制)として、外国人本人の資料以上に厳格に運用する価値があります。

2) 「秘密」は依頼者(企業)が指定しやすい領域—だからこそ、事前の線引きが重要

企業資料は、依頼者が明確に「社外秘」「取扱注意」「閲覧者限定」と指定することが多い領域です。
この指定を尊重し、案件開始時に“共有範囲”を合意しておくと事故が激減します。

入れておきたい合意事項(例)

  • 社内共有先:人事担当のみ/役員まで/現場責任者は不可、など
  • 外国人本人への共有:原則不可(例外は要承認)
  • グループ会社・支援機関・紹介会社等への転送:事前承諾制
  • 税理士・社労士等の士業間共有:目的限定+必要最小限

3) 事務所側の運用:事業計画・税務資料は「別フォルダ管理+閲覧制限」が基本

行政書士法上、守秘義務違反には罰則があり(22条)、また職員等にも守秘義務が及びます(19条の3)。そのため、“誰がアクセスできるか”の設計が最重要です。(行政書士法第8章「雑則」)(行政書士法第9章「罰則」)

推奨運用

特に上場企業はインサイダーの懸念にもつながり、また大手企業や連携当事者が多い場合は特に注意です。

そうでなくても企業の事業や財務の定量的資料は、Googleドライブなどでも外部に共有不可能な機密フォルダで管理すべきです。さらに追加的に例えば以下の通りの運用です。

  • 共有フォルダで原則「リンク共有禁止」「ダウンロード制限」「閲覧ログあり」
  • こちらからのメール送付は原則避け、やむを得ない場合は暗号化+別経路でパスワード
  • Ccのメールでは、事情を知っているCc当事者にそれまでの話は公開されているかどうかが重要。それが不明確なら、同一企業でない方や伝えることが不要である方へのCcは外す。
  • 紙資料は「施錠部屋保管」「コピー制限」「廃棄は溶解/シュレッダー」

なお、「定性的な情報」は内容によっては秘密にならないこともありますが、センスと経験がないとそれも判断できません。

なお、職務基本規則でも、補助者等に秘密を保持させること、記録の保管・廃棄に留意することが求められています。(行政書士職務基本規則)

 

4) よくある注意点:企業資料は「申請人本人に渡してよいか」が揉めやすい

在留申請では、申請人本人が自分の申請内容を把握したい一方、企業は社外秘資料の開示を避けたい、という緊張関係が起きます。

このため、受任時点で次のどちらかに寄せておくのが実務的です。

  • 企業依頼(法人案件)として受任:申請人本人への開示は原則しない(必要箇所のみ要約)
  • 本人依頼(個人案件)として受任:企業資料を預かる場合は、企業の同意範囲を明確化(同意のない提供は避ける)

どちらでも、守秘義務(行政書士法12条)の観点からは、「目的外利用」や「不必要な共有」を避ける設計が安全です。

 

  1. 「秘密」とは、依頼者が決めるもの?—実務では“依頼者の指定”を最大限尊重しつつ、客観的にも判断する

『秘密』とは依頼者が決めるものか」という観点は、実務運用として重要です。
なぜなら、企業・本人が「これは社外秘」「本人にも伏せてほしい」と指定する情報を軽視すると、信頼関係が壊れるからです。

一方で、法文上は「秘密」を依頼者のラベルだけで機械的に決めるというより、

  • 非公開であること
  • 漏えいすれば権利利益を害しうること
  • 本人(依頼者等)が秘匿の意思を持つことが通常であること

といった要素を含む“秘匿に値する情報”として広く捉える運用が安全です。
そのうえで、トラブルを避けるには、依頼時点で“秘密の線引き”を明文化するのが最も効果的です。

実務で必ず入れたい取り決め例

  • 依頼者(企業)⇄ 申請人(外国人本人)間で、共有してよい情報/共有しない情報
  • 社内の共有範囲(担当者、決裁者、現場責任者など)
  • 外部(支援機関・紹介会社・弁護士・社労士等)へ共有する場合の同意手続
  • 退職者・外注先を含む情報管理(アクセス権、持ち出し禁止、廃棄方法)
  1. 「代表だけでなく行為者も対象」—“組織の仕組み”が必要

行政書士職務基本規則は、秘密保持を行政書士個人の注意義務で終わらせず、補助者・職員等に保持させること、さらに記録の保管・廃棄にまで注意義務を置いています。

 

したがって、法律解釈だけで、個別に判断するベテランの運用は、新入社員や経歴が浅い資格者に通用しません。2006年以降の行政書士試験は行政書士法がない、2020年代でもあまり知らない合格者が多数です。

もちろん、税理士資格者などの無試験組は、行政書士法をほぼ見たこともない人もいます。

結論、行政書士法の解釈があまりできない人でも安全に運用できる仕組みが必要となります。

 

最低限の事務所体制チェックリスト

  • 役割ごとのアクセス制御(案件フォルダ・クラウド権限)
  • 外注・業務委託の再委託禁止、NDA(秘密保持契約)
  • 退職時の権限剥奪、端末回収、データ返却・削除の手順
  • 誤送信対策(宛先自動チェック、BCCルール、添付自動暗号化等)
  • 物理管理(施錠、来客導線、会議室の防音・画面覗き見対策)
  1. 行政書士には「プロフェッショナルの倫理」が必要(“守秘義務=最低ライン”)

守秘義務は「やらないと罰せられる」最低限の規律であり、実務ではそれ以上に、説明責任・境界線管理・利益相反回避など、プロとしての倫理が信頼を決めます。

たとえば在留業務では、以下のような要望や状況があります。

  • 企業が「本人に言わずに進めてほしい」と言う
  • 本人が「会社に言わないでほしい」と言う
  • 両者の利害が異なる(解雇・内定取消・転職など)

ここで必要なのは、感覚ではなく、受任時に合意したルールに沿って淡々と運用できる設計(法律家としてのマインドの徹底)です。

 

よくあるFAQ(行政書士向け)

Q1. 依頼者が企業で、申請人本人が別の場合、本人に情報を渡さないのはOK?

A. 受任形態と合意次第です。ただし「業務上知り得た秘密」は広く守る必要があるため、“本人に共有する情報/しない情報”を委任契約・同意書で明確化するのが安全です(行政書士法12条の趣旨)。

Q2. 事務員が漏えいしたら、代表だけの責任?

A. 事務員等にも守秘義務が及び得ます(行政書士法19条の3)。
また、職務基本規則上も保持させる義務が明記されているため、事務所としての管理体制が問われます。

Q3. 守秘義務違反の重さは?

A. 刑事罰があります(行政書士法22条:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)。

まとめ:在留業務では「依頼者=企業」と整理しつつ、秘密は“業務上知り得た範囲すべて”として設計する

  • 守秘義務は罰則ありで重く、代表だけでなく行為者(職員等)も対象
  • 対象は「申請人か依頼者か」ではなく、業務上知り得た秘密すべて(行政書士法12条)
  • 「秘密は依頼者が決める」は運用上重要。だからこそ、共有範囲を文書化して事故を防ぐ
  • 倫理は精神論ではなく、体制(ルール・権限・教育・委託管理)で実装する

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この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


- 講師実績
行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。

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- 資格等

特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他


- 略歴等

・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


- 取引先、業務対応実績一部

・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他

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