事前届出後【実行報告】の期限と注意点|外為法対内直接投資
2026年07月02日
会社設立、投資
事前届出後【実行報告】の期限と注意点|外為法対内直接投資
実行報告の解説のポイント
外為法上、対内直接投資等について事前届出を行った外国投資家は、届出後に実際の取引・行為を行った場合、一定の実行報告を行う必要があります。実行報告は、取引・行為の日から45日以内に、直投命令に定められた様式で、日本銀行を経由して財務大臣および事業所管大臣へ提出します。根拠は、外為法55条の8、対内直接投資等に関する政令6条の5、対内直接投資等に関する命令7条1項1号から5号です。
外為法の事前届出は、「届出をして終わり」ではありません。株式取得、議決権取得、金銭貸付、社債取得、事業承継などを実際に行った後には、実行報告の期限管理が必要です。
外為法の対内直接投資の「実行報告」とは
外為法の対内直接投資では、外国投資家が日本企業の株式・議決権を取得する場合や、日本国内で一定の事業活動を行う場合などに、事前届出が必要となることがあります。財務省は、外為法では対外取引自由を原則としつつ、国の安全、公の秩序、公衆の安全、我が国経済の円滑な運営の観点から、一定の対内直接投資等について事前届出を求め、財務大臣および事業所管大臣が審査を行う制度であると説明しています。(財務省)
この事前届出をした外国投資家が、届出後に取引・行為を実際に行った場合に提出するのが「実行報告書」です。日本銀行Q&Aでは、届出を行った外国投資家が、株式・持分・議決権等の取得または処分、金銭貸付、社債取得、支店設置の中止・廃止、共同議決権行使同意の取得・解除、事業承継・処分をしたときは、45日以内に報告が必要とされています。
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対象となる取引・行為 |
実行報告が必要となる場面 |
主な報告書様式 |
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株式、持分、議決権、議決権行使等権限の取得・処分 |
株式取得を実行した場合、または届出済みの株式等を処分した場合 |
別紙様式19 |
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株式への一任運用・処分 |
株式への一任運用を行った場合、またはその処分をした場合 |
別紙様式19 |
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金銭の貸付・返済金の受領 |
外国投資家が金銭貸付を実行した場合、または返済金を受領した場合 |
別紙様式20 |
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社債の取得・償還 |
社債を取得した場合、または償還を受けた場合 |
別紙様式20 |
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支店等の設置の中止・廃止 |
事前届出後、支店等の設置を中止または廃止した場合 |
別紙様式22 |
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共同議決権行使同意の取得・解除 |
共同して議決権を行使する同意を取得した場合、または解除した場合 |
別紙様式22の2 |
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事業の承継・承継事業の処分 |
事業譲渡、会社分割、合併等により事業を承継した場合、または承継した事業を処分した場合 |
別紙様式22の3 |
日本銀行の様式掲載ページでも、外為法55条の5・55条の6・55条の8に係る対内直接投資等・特定取得・技術導入の報告として、様式19、20、22、22の2、22の3が掲載されています。
様式番号ごとの実務上の整理
株式等の取得・議決権取得・一任運用|様式19
株式、持分、議決権、議決権行使等権限の取得、または株式への一任運用について事前届出をした場合、実際に取得・運用を行った後は、実行報告書を提出します。株式等を取得した後に処分した場合も、実行報告の対象となります。
たとえば、外国法人が事前届出を行ったうえで、日本の会社の株式を取得した場合、株式取得日を基準に45日以内の実行報告を検討します。上場株式・非上場株式、取得比率、密接関係者との合算、特定取得との関係により、届出・報告の種類が異なることがあるため、当初の届出内容と実行内容の一致を確認することが重要です。
金銭貸付・社債取得|様式20
外国投資家が日本法人に対して金銭貸付を行う場合や、社債を取得する場合も、事前届出の対象となることがあります。届出後に実際に貸付を行った場合、または返済金を受領した場合、様式20の実行報告書を提出します。社債についても、取得時だけでなく償還を受けた場合が実行報告の対象となります。
実務上は、貸付契約日ではなく、資金実行日・返済受領日・社債取得日・償還日など、どの日を「実行日」と見るかを整理しておく必要があります。日本銀行Q&Aでは、金銭の貸付は「金銭を貸付ける日」、社債の取得は「社債の取得日」が基準となる旨が示されています。
支店等の設置の中止・廃止|様式22
事前届出をした支店等の設置について、その設置を中止・廃止した場合には、様式22の実行報告書を提出します。ここでいう「支店等」は、登記上の支店に限られず、外為法・直投令上は「支店、工場その他の事業所」を含む概念として整理されています。(e-Gov 法令検索)
したがって、外国会社が日本で工場、営業拠点、その他の事業所を設ける計画について事前届出をした後、計画を取りやめる場合や、設置した事業所を廃止する場合には、様式22の要否を確認すべきです。名称が「支店」でなくても、実質として日本国内の事業所に該当する場合は注意が必要です。
共同議決権行使同意の取得・解除|様式22の2
外国投資家が、他の株主等と共同して議決権を行使する同意を取得した場合や、その同意を解除した場合には、様式22の2の実行報告書を提出します。共同議決権行使同意は、単なる株式取得とは別に、会社支配・議決権行使への影響が問題となる類型です。日本銀行Q&Aでも、共同議決権行使同意を取得したときや解除したときは、実行報告の対象とされています。
株主間契約、投資契約、議決権拘束契約、共同提案に関する合意などを締結する場合には、その契約が「共同議決権行使同意」に該当しないか、事前に確認する必要があります。
事業承継・承継事業の処分|様式22の3
外国投資家が、日本国内で営まれている事業を承継した場合、または承継した事業を処分した場合には、様式22の3の実行報告書を提出します。日本銀行Q&Aでは、事業承継の取引基準日について、事業譲渡、吸収分割または合併の効力発生日と整理されています。
また、他社の事業を譲り受ける場合には、事業部門、支社、事業所、工場、支店等の譲受けが問題となり、株式取得を伴うかどうか、新たに支店等を設置するかどうか、既存の支店等に事業を追加するかどうかによって、必要な届出・報告が変わります。
実行報告の提出期限は45日以内
実行報告書は、対象となる取引または行為をしたときから45日以内に提出します。日本銀行Q&Aでは、45日以内に、直投命令に定められた様式により、日本銀行を経由して財務大臣および事業所管大臣へ報告することが必要とされています。
実務では、次のように「起算点」を管理します。
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類型 |
実行日の考え方の例 |
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株式取得 |
株式の取得日、受渡決済日、合併効力発生日など |
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議決権行使等権限の取得 |
当事者間の合意に基づき権限が移転する日 |
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株式への一任運用 |
一任運用に係る株式の受渡決済日 |
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金銭貸付 |
金銭を貸し付ける日 |
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社債取得 |
社債の取得日 |
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事業承継 |
事業譲渡、吸収分割、合併の効力発生日 |
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共同議決権行使同意取得 |
同意を取得する日 |
これらの基準日は、日本銀行Q&Aの「届出の場合の取引の基準となる日」の整理に沿って確認します。
提出先・提出方法
実行報告書は、日本銀行を経由して提出します。日本銀行は、外為法に基づく届出書・報告書のうち、宛先欄に「○○大臣殿(日本銀行経由)」と記載されているものは、日本銀行本店・支店が提出先となると説明しています。提出方法は、直投命令の届出書および報告書について、窓口提出、郵送、オンライン提出が可能です。ただし、オンライン提出には利用申請が必要であり、照会用メールアドレスへのメール送信による提出は認められていません。
日本銀行Q&Aでも、実行報告書は日本銀行国際局国際収支課外為法手続グループおよび最寄りの日本銀行支店で受け付けているものの、なるべく日本銀行本店宛てに直接郵送するよう案内されています。
事前届出後に実行しなかった場合も確認が必要
事前届出をしたものの、予定していた取引を中止した場合にも、類型によっては報告が必要です。特に支店等の設置については、「支店等の設置の中止・廃止実行報告書」という様式22が用意されています。
外為法対応では、届出書に記載した取引が、実際に「実行されたか」「一部だけ実行されたか」「条件変更されたか」「中止されたか」を、クロージング後も管理し、類型ごとに様式を変えるか、同じ様式でも備考等記載により事情を示して提出します。
期限を過ぎた場合の対応
実行報告書の提出期限を過ぎた場合でも、放置してはいけません。日本銀行Q&Aでは、対内直接投資等の報告書を所定の期日までに提出できなかった場合、直ちに提出し、報告書の「その他の事項」欄に、期限内に提出できなかった理由およびその旨を付記するよう示されています。
期限後提出となった場合は、単に報告書を作成するだけでなく、遅延理由、社内管理上の原因、再発防止策を整理しておくことが望ましいです。外為法の手続では、事後対応の丁寧さが、次回以降の届出・照会対応にも影響することがあります。
実務でよくある注意点
「事前届出」と「実行報告」を別管理にしない
事前届出を提出した部署と、クロージング・登記・資金決済を担当する部署が異なる場合、実行報告が漏れやすくなります。投資契約、株式譲渡契約、融資契約、社債引受契約、事業譲渡契約のクロージング日が確定した段階で、45日以内の報告期限を管理表に登録することが重要です。
届出内容と実行内容が変わった場合は慎重に確認する
事前届出時の取得比率、金額、対象会社、事業内容、実行日、スキームと、実際のクロージング内容が異なる場合、単純な実行報告で足りるか、変更・再届出・別様式の報告が必要かを検討します。特に二段階取得、複数投資家の共同取得、株式取得と事業譲受けが組み合わさる案件では注意が必要です。
「支店等」は登記上の支店だけではない
外為法上の支店等には、支店、工場その他の事業所が含まれます。製造拠点、研究開発拠点、営業所、サービス拠点、倉庫兼作業所なども、実質によっては事業所として検討対象になります。支店登記をしていないから外為法上の支店等に当たらない、とは限りません。
支払等報告書が別途必要となる場合がある
日本銀行Q&Aは、対内直接投資等のQ&Aで扱う報告書とは別に、外為法55条に定める「支払又は支払の受領に関する報告書」の提出が必要となる場合があると注意喚起しています。
したがって、実行報告書を提出しただけで、外為法上の全ての報告が完了するとは限りません。株式取得対価の支払、貸付金の送金、返済金の受領などがある場合には、支払等報告の要否も併せて確認します。
まとめ
外為法の対内直接投資では、事前届出の提出後、実際に取引・行為を行った場合に、45日以内の実行報告が必要となることがあります。対象となるのは、株式・議決権等の取得や処分、金銭貸付、社債取得、支店等設置の中止・廃止、共同議決権行使同意、事業承継などです。
特に、クロージング後の実行報告は、投資契約や株式譲渡契約の完了後に見落とされやすい手続です。外国投資家、日本法人、M&A関係者、金融機関、専門家は、事前届出の段階から「実行予定日」「報告期限」「提出様式」「支払等報告の要否」まで一体で管理することが重要です。
行政文書の根拠
外為法対内直接投資Q&A:https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/t_naito.htm
>Q12.事前に届け出た後の実行報告
○事前届出後の実行報告について教えてください。
- 届出を行った外国投資家が、
(1) 株式、持分、議決権もしくは議決権行使等権限の取得または処分、株式への一任
運用その処分をしたとき、
(2) 金銭の貸付を実際に行ったときやその返済金を受領したとき、
(3) 社債を実際に取得したときやその償還を受けたとき、
(4) 支店の設置を中止・廃止したとき、
(5) 共同議決権行使同意取得したときやその同意の解除をしたとき、
(6) 事業を承継したときや承継した事業を処分したとき
のうちいずれかの取引または行為をしたときは、
45 日以内に、直投命令に定められた様式により、日本銀行を経由して財務大臣およ
び事業所管大臣に報告することが必要です(法 55 条の 8、直投令 6 条の 5、直投命
令 7 条 1 項 1~5 号)。報告書は、取引または行為に応じて以下の種類があります。
(報告書の種類<かっこ内:直投命令の別紙様式番号>)
・株式、持分、議決権もしくは議決権行使等権限の取得または株式への一任運用に関する
実行報告書(19)
・金銭の貸付けまたは社債の取得等に関する実行報告書(20)
・支店等の設置の中止・廃止実行報告書(22)
・共同議決権行使同意取得等に関する実行報告書(22 の 2)
・事業の承継に関する実行報告
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この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。 ▶ 求人・パートナー募集はこちら
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行政書士会、建設やホテル人材等の企業、在留資格研究会等の団体、大手士業事務所、その他外国人の講義なら幅広く依頼を受ける。 ▶ ご依頼、セミナー、取材等のお問合せはこちら
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、米国MBA、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他




