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登録支援機関の「特異事案報告」とは?特定技能の違反や基準不適合で“知らなかった”といえない時代へ

2026年06月02日

登録支援機関コンプライアンス特定技能

登録支援機関の「特異事案報告」とは?特定技能の違反や基準不適合で“知らなかった”といえない時代へ

 

この記事でわかること

・特定技能の登録支援機関に新設された「特異事案報告」の位置付け
・法律改正ではなく、省令・運用要領・様式で具体化された届出義務であること
・特定技能所属機関の基準不適合を支援中に知った場合の対応
・登録支援機関が「違反かどうか分からない」として放置するリスク
・特定技能所属機関・登録支援機関が顧問体制を整えるべき理由

結論:登録支援機関は、支援中に把握した重大事案を“知らなかったこと”にできなくなりました

令和7年4月1日から、特定技能制度の届出ルールが大きく見直され、登録支援機関について、「1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告」が新設・明確化されました。

これは、登録支援機関が、特定技能所属機関から支援の全部委託を受けている場合に、支援計画に基づく支援の実施が困難となる事由が生じたときに報告を求めるものです。入管庁は、その対象について、「支援において特定技能所属機関の基準不適合を把握した場合を含む」と説明しています。

重要なのは、登録支援機関は、裁判所や労働基準監督署のように、違反の法的評価を最終判断する機関ではないという点です。
しかし、支援を通じて重大な異常事案を把握したにもかかわらず、記録も報告もせず、結果として所属機関の基準不適合や労働関係法令違反等が隠れる形になれば、登録支援機関自身のリスクになります。

つまり、今回の改正は、

登録支援機関は、違反の法的評価を確定する機関ではないが、支援を通じて把握した重大な異常事案を“知らなかったことにしない”ための報告義務が強化された、と表現するとわかりやすくなります。

「特異事案報告」は新設された制度なのか

厳密には、入管法本体に「特異事案報告」という独立した条文が新設されたわけではありません。法令上の構造は、次のように整理できます。

階層

内容

法律

入管法第19条の30第2項に、登録支援機関の支援業務の実施状況等に関する届出義務がある

省令

入管法施行規則により、届出・報告の具体的事項が定められる

運用要領・様式

参考様式第4-3号として「1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告書」が用意される

令和7年4月1日施行の改正で、特異事案報告は、入管法本体に新たな通報義務が独立して創設されたというより、入管法第19条の30第2項の登録支援機関の届出義務を基礎として、入管法施行規則、運用要領及び参考様式により具体化された報告制度です。

自社支援の場合の「支援実施困難届出」と何が違うのか

届出では、特定技能所属機関が自社支援をしている場合と、登録支援機関に支援の全部委託をしている場合で、提出する書類が分かれています。

入管庁は、自社支援の場合について、「1号特定技能外国人支援計画に基づく支援について実施困難となる事由が生じた場合」に届出が必要と説明しています。これは参考様式第3-7号の「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出」です。

また他の随時届出である以下になる場合等もあります。
1. 基準不適合届出
2. 支援計画変更届出

一方、登録支援機関が支援の全部委託を受けている場合は、「1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告」が用意されています。

区分

主体

書類・報告

自社支援

特定技能所属機関

支援実施困難に係る届出、又はその他

全部委託支援

登録支援機関

支援計画の実施における特異事案報告

所属機関の基準不適合

特定技能所属機関

基準不適合に係る届出

支援中に所属機関の基準不適合を把握

登録支援機関

特異事案報告の対象となり得る

つまり、登録支援機関の特異事案報告は、所属機関の基準不適合届出そのものを代替する制度ではありません。
しかし、登録支援機関が支援を通じて所属機関の基準不適合を把握した場合、登録支援機関側にも報告を求める仕組みが広く置かれた点が重要です。

特定技能所属機関の「基準不適合」とは何か

令和7年4月1日以降、特定技能所属機関の基準不適合に係る届出についても、対象が整理されています。

入管庁は、基準不適合届出の対象について、従前の「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為」があった場合から、「特定技能基準省令第2条第1項各号及び同条第2項各号に適合しない場合」に変更されると説明しています。

入管庁が示す具体例には、次のようなものがあります。

・税金や社会保険料等の滞納が発生したとき
・同種業務に従事していた労働者に関し、非自発的離職を発生させたとき
・関係法律による刑罰を受けたとき
・実習認定の取消しを受けたとき
・出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行ったとき
・外国人に対する暴行、脅迫、監禁が発生したとき
・外国人に支給する手当又は報酬の一部又は全部を支払わない行為が発生したとき
などです。

これらは、登録支援機関が日常支援・定期面談・相談対応の中で把握し得る内容です。
たとえば、給与未払い、控除の不明瞭さ、長時間労働、ハラスメント、住居支援の不備、相談妨害、面談非協力などは、登録支援機関が最初に異常を察知するケースがあります。

登録支援機関にとって危険なのは「違反か分からないので何もしない」こと

実務上、もっとも危険なのは、次のような対応です。

・本人から給与未払いの相談を受けたが、労基法違反か判断できないので記録しない
・所属機関が面談に協力しないが、関係悪化を避けるため放置する
・特定技能外国人からハラスメントの申告があったが、証拠が不十分として何もしない
・所属機関の社会保険料滞納や非自発的離職の疑いを知ったが、登録支援機関の問題ではないとして扱わない
・支援記録を残すと不利になるため、相談内容を曖昧に処理する

登録支援機関は、違反の有無を最終確定する機関ではありません。
しかし、支援中に把握した異常事案について、記録、所属機関への確認、是正要請、関係機関への相談、入管への報告要否の検討をしないまま放置すると、後日「支援機関も把握していたのではないか」と評価されるおそれがあります。

特に、令和7年4月1日からの運用要領改正では、登録支援機関に関する不正行為として、特定技能所属機関が基準不適合となった事実を隠蔽する目的で、地方出入国在留管理局に必要な報告をしない行為又は虚偽の報告を行う行為が追加されています。

この点からも、登録支援機関にとっては、単に「所属機関から委託された支援を実施するだけ」の時代ではなく、支援実施上の異常を把握した場合の報告・記録・是正フローを整備することが重要になっています。

「生活相談」すべてが特異事案報告になるわけではない

一方で、特異事案報告は、日常的な生活相談のすべてを入管に報告する制度ではありません。

たとえば、次のような通常の生活相談は、まずは相談記録・支援記録として整理することで足りる場合が多いと考えられます。

・銀行口座の利用方法が分からない
・携帯電話の契約内容を確認したい
・近隣との軽微な生活トラブルがある
・役所手続の方法を確認したい
・日本語学習や交通機関の利用について相談したい

しかし、生活上の問題であっても、次のような場合は特異事案報告を検討すべきです。

事案

対応の目安

住居を失うおそれがある

支援実施困難・特異事案報告を検討

所属機関が生活オリエンテーションや相談対応を妨げる

記録化し、特異事案報告を検討

給与未払い・不当控除の相談がある

所属機関確認、労基署相談、特異事案報告を検討

暴力・脅迫・ハラスメントの申告がある

早急な保護対応、関係機関相談、特異事案報告を検討

失踪のおそれ、連絡不能、就労継続困難がある

受入れ困難届出や特異事案報告を検討

所属機関の基準不適合を疑わせる事実がある

所属機関に是正を促し、必要に応じ報告

 

ポイントは、「生活相談かどうか」ではなく、「支援計画の実施に支障があるか」「外国人保護上の重大性があるか」「所属機関の基準不適合に関係するか」です。

ただ、届出事由があいまいなため、支援に関しない日常・社会・職業それぞれの生活上の問題を把握した場合、不明確な点もあります。その場合は行政書士法人等の専門家が必要と考えられます。

谷島行政書士法人グループでは、登録支援機関である顧問先からそのようなご相談を多く受けております。お気軽にお声がけください。

「特異事案報告」の根拠となる法令・その他関係情報

1. 入管法第19条の30第2項

2. 入管法施行規則第19条の24・第19条の24の2

3. 特定技能基準省令第2条第1項・第2項

この記事の監修者

谷島亮士
谷島亮士

谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士
外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。


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特定行政書士、宅建士、米国MBA、中国語(HSK2級)他


- 略歴等

・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。


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